Consumer Spending Moderates, Saving Rate Modestly Improves In October.
米10月個人消費支出は前月比0.3%増と、市場予想と一致した。2009年8月以来の高い伸びを示した前月の0.9%増(1.0%増から下方修正)を下回りつつ、19ヵ月連続で増加。9月はハリケーン“ハービー”や“イルマ”直撃後の買い替え需要に支えられて急増した後も、底堅さをみせる。前年比では4.2%増と、9月の4.3%増を小幅に下回った。インフレを除く実質ベースでの個人消費は0.1%増と、市場予想の0.2%増を下回った。5ヵ月ぶりの高水準だった前月の0.5%増(0.6%増から下方修正)と合わせ、2ヵ月連続でプラスとなる。実質ベースでの個人消費は、3ヵ月連続で前年比2.6%増だった。年初来平均の2.7%増を小幅に下回る水準であるものの、成長率が2.9%増だった2015年の平均値3.6%増には遠い。
個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。新車販売台数が10月に前月比で減少したため、耐久財が弱かった、ただし非耐久財やサービスも増加し、全体を支えている。
・モノは0.115%増、前月の1.830%増から転じ過去5ヵ月間で4回目の増加
>耐久財 0.880%減、前月の2.852%増から転じ過去5ヵ月間で2回目の減少
>非耐久財 0.217%増、前月の1.303%増を含め過去5ヵ月間4回目の増加
・サービス 0.321%増、前月の0.449%増を含め少なくとも13ヵ月連続で増加
米10月個人所得は前月比0.4%増と、市場予想の0.3%増を上回った。前月の0.4%増と変わらず、4ヵ月連続で増加している。前年比は3.2%増となり、前月の2.8%増を上回った。実質ベースでは1.6%増と前月の1.1%増を上回り、8ヵ月ぶりの強い伸びを達成。11ヵ月連続で増加したが、金融危機後で最高の成長率を遂げた2015年の平均値2.5%増を大きく下回る。
可処分所得は0.5%増と、前月の0.4%増を含め4ヵ月連続で増加した。前年同月比は3.2%増と、前月の2.8%増を超え2016年1月以来の高水準となる。実質ベースの可処分所得は前月比0.3%増と、前月の横ばいから増加に転じた。前年同月比は1.6%増、前月の1.1%増を上回り2016年7月以来の強い伸びとなった。10ヵ月連続で増加したものの、こちらも2015年からの平均値4.2%増を下回る水準を保つ。
貯蓄率は3.2%となり、2007年12月以来で最低だった3.1%から小幅に改善した。個人消費の伸びが所得を上回るなかで、貯蓄率は低迷したままだ。
個人消費は実質ベースで2%超の拡大ペースを維持するなか、所得は伸びが改善。
所得の内訳は、前月比で以下の通り。
・賃金/所得 0.3%増、前月の0.5%増を下回る(民間が0.3%増と前月の0.5%増から鈍化、サービス部門が0.4%増と前月と変わらず、財部門(製造業、鉱業、建設)が0.1%増と前月の0.9%増から減速)
・不動産収入 0.4%増、前月の0.6%増を下回る(農場が4.3%増と前月の横ばいから増加に反転、非農場は0.3%増と前月の0.7%増を含め3ヵ月連続で増加)
・家賃収入 1.1%増、前月を含め3ヵ月連続で増加
・資産収入 0.8%増と前月の0.4%増を含め4ヵ月連続で増加(配当が0.1%増、金利収入も1.3%増とそれぞれ4ヵ月連続で増加)
・社会補助 0.2%増、前月の0.3%増を含め増加トレンドを維持
・社会福祉 0.7%増、前月の0.3%増を含め5ヵ月連続で増加(メディケア=高所得者向け医療保険は0.3%増と増加基調を維持、メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.6%増と5ヵ月連続で増加、失業保険は2.1%減と3ヵ月連続で減少)
個人消費支出(PCE)デフレーターは原油価格が約2年半ぶりに55ドルを超える過程で、前月比0.1%上昇し市場予想と一致した。前月の0.4%を下回ったとはいえ、4ヵ月連続で上昇。前年比は市場予想の1.5%を上回る1.6%の上昇ながら、5ヵ月ぶりの高水準だった9月の1.7%(1.6%から上方修正)には届かず。2012年4月以来の2%乗せを達成した2月の2.1%以下の推移を続けている。コアPCEデフレーターは前月比0.2%上昇し市場予想並びに前月値と一致した。コアPCEデフレーターの前年比は1.4%上昇し、市場予想並びに前月値と変わらず。2015年11月以来で最低だった8月の1.3%から改善しつつ、PCEとコアは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を2012年5月以来下回り続けている。
コアPCEは足元、前年比で底打ちの兆し。
――10月の個人消費はハリケーン直撃後の買い替え需要を受け急増した9月の反動減を回避しました。もっとも実質個人消費の伸びが0.1%増とさえない上、9月分も0.6%増から0.5%増へ下方修正されました。9月分の下方修正は、米7~9月期実質国内総生産(GDP)成長率・改定値で個人消費が下方修正された動きと、整合的です。個人消費は、ハリケーン後に伸びが鈍化する可能性をちらつかせたと言えるでしょう。アトランタ地区連銀は、米10月個人消費支出や貿易収支速報値などを含めた統計を基に、米10~12月期実質GDP成長率予測値を従来の3.4%増から2.7%増へ下方修正しています。
個人消費鈍化の裏で、貯蓄率が5ヵ月ぶりに改善していました。金融危機の反省なのか、ホリデー商戦が本格化する前に裁量余地を確保したのか様々な要因が考えられるところ、少なくともホリデー商戦は好調で、後者だった可能性が高いように見えます。全米小売業協会(NRF)の調査結果では、感謝祭並びにブラック・フライデーにおける既存店あるいはオンラインでの買い物客総数は1億7,400万人と、事前予想の1億6,400万人を超えました。1人当たり平均支出額は334.47ドルで、そのうち75%の250.78ドルがギフト用だったといいます。最も支出した年齢層は、25~34歳のミレニアル層で419.52ドルでした。
アドビの調査では、ブラック・フライデーの売上高が前年比16.9%増の50.3億ドル、感謝祭は10.1%増の28.7億ドルでした。サイバー・マンデーは16.8%増の65.9億ドルと過去最高を記録したものです。11月1日から27日までのオンライン売上高は16.8%増の500億ドルで、ホリデー商戦全体で初の1,000億ドル達成が視野に入ります。モバイルでの売上高は、感謝祭からサイバー・マンデーまでで15.2%増の200億ドルに迫りました。サイバー・マンデーのモバイルの売上高も初の20億ドル乗せを遂げ、コンバージョン率(訪問者が実際に商品を購入した割合)も3.5%と前年比10.1%上昇したといます。
これだけ好調だと、11~12月にかけ再び貯蓄率が低下してもおかしくありませんね。
(カバー写真:Roman Kruglov/Flickr)
Comments
米7~9月期GDP改定値は3年ぶりの高成長、OECDの2018年予想に真実味? Next Post:
11月ベージュブック、FOMC議事要旨と異なり物価上昇を指摘