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米4月貿易赤字は縮小、輸出入ともに資本財や自動車が弱い

by • June 9, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1950

U.S. Trade Deficit Narrows While Both Import And Export Decrease.

米4月貿易収支は507.91億ドルの赤字となり、市場予想の507億ドルとほぼ変わらずだった。とはいえ、前月の519.06億ドル(500億ドル)から2.1%減少。過去4ヵ月間で3回目の減少を迎えた結果、対中追加関税措置500億ドルの第一弾を開始する直前、2018年6月以降で2番目に低い水準となる。原油関連を除く貿易赤字も486.78億ドルと、前月の497.55億ドルを下回り2018年7月以来の低水準だった。

なおトランプ政権による追加課税措置については、2018年1月に太陽光パネル・洗濯機、同3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動。同年6月には、鉄鋼・アルミへの追加関税措置がEU、カナダ、メキシコへ波及した。鉄鋼・アルミ追加関税は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)締結後から約5ヵ月後の2019年5月に対メキシコとカナダで撤廃。もっとも、メキシコには不法移民対策強化が不十分として、6月10日から制裁関税を発動する意思を表明済みである。対中追加関税は2018年7月6日には通商法301条を根拠とした500億ドルのうち340億ドル、同年8月23日には残りの140億ドルが発動し、そして同年9月24日からは2,000億ドル相当へ拡大。同年12月1日の米中首脳会談で2019年1月から2,000億ドル相当への関税を10%から25%へ引き上げる措置を同年3月1日へ延長することで合意したが、6月1日からは25%へ引き上げた。残り約3,000億ドルの中国製品についても、追加関税を課す構えである。日米通商交渉は4月15~16日にワシントンで初会合を開催、1)農産品の関税引き下げはTPPの水準が限度、2)自動車は数量制限要求せず、交渉中は追加関税措置を講じず、3)為替は財務相間で協議、4)物品を優先、5)デジタル分野も対象――などで合意。欧州に対しては、トランプ政権はエアバス補助金をめぐる対抗措置に言及、欧州側も報復措置を講じる構えを表明しており、米欧間で通商上の緊張が高まるリスクを残す。

内訳をみると、輸出が2.2%増の2,068.5億ドルと3ヵ月ぶりに減少した。輸入は2.2%減の2,576.4億ドルと過去4ヵ月間で3回目の減少となる。品目別でみると、輸出入ともに資本財や自動車が弱く、世界景気の減速や米中貿易戦争の影響が企業のセンチメントに打撃を与えた可能性を示す。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は、819.12億ドルと、前月の829.94億ドル(修正値)を下回った。

輸出だけでなく輸入も減少し、実質ベースのモノの貿易赤字は改善傾向をキープ。

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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比3.1%減と4ヵ月ぶりに減少した。項目別では、食品・飲料以外全て減少しており、資本財が5.7%減と2ヵ月連続で減少した上に最も弱い。資本財のうち、民間航空機が46.9%減と弱かったほか、産業エンジン、電気装置、試験装置などが大幅減となった。自動車も5.4%減と5%台の減少に。消費財は3.1%減で、医療用品が8.3%減と押し下げた、ダイヤモンドやコインのほか、家電も落ち込んだ。産業財は0.1%減と小幅にとどまり、石油製品、貴金属、化学品などが押し下げた。

一方で、輸出のうち食品・飲料は1.0%増と、2ヵ月連続で増加した。特に小麦が35.0%増と大きく増加したほか、コーンも18.4%増、動物飼料も20.5%増、米も9.0%増と支えた。2018年9月以降、中国による報復関税措置を受け減少していた大豆は、0.3%減と小幅ながら減少した。なお中国は2018年9月6日に追加で600億ドル相当の報復関税を発動、対象は大豆、小麦、ワイン、航空機、自動車、液化天然ガス(LNG)など約3,500の製品とした。ただその後、米中通商協議を経て購入枠を拡大した物品もある。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)

・食品/飲料 1.0%増<前月は4.4%増

(減少項目)

・資本財 5.7%減、2ヵ月連続で減少<前月は1.9%減
・自動車 5.4%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は0.3%増
・サービス 0.3%減、直近で久々の減少<前月は0.5%増
・消費財 3.1%減、直近で久々の減少<前月は0.9%減
・産業材 0.1%減<前月は3.6%増

輸入の内訳をみると、モノは2.5%減と前月の1.6%増から減少に転じた。原油価格が60ドル台を維持するなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が7.1%増と2ヵ月連続で増加した。前年比では9.4%減となる。金額ベースでは、2ヵ月連続で上昇した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は3.1%減と、過去4ヵ月間で3回目の減少となった。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)

なし

(減少項目)

・自動車 3.1%減、過去5ヵ月間で4回目の増加<前月は0.7%増
・資本財 3.0%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は0.5%増
・消費財 2.0%減、2ヵ月連続で減少<前月は1.3%減
・産業財 1.4%減、過去3ヵ月間で2回目の減少<前月は5.8%増
・食品/飲料 1.1%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は8.9%増

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比6.2%増の269.03億ドルとなった。日本への赤字は、9.6%増の72.42億ドルと、日米貿易交渉が注目されるなかで赤字が拡大。欧州全体への赤字額に至っては31.0%増の222.07億ドルと、過去最高を更新した。英国に対する貿易収支は4.88億ドルと、2018年10月以来の赤字となった。

主な産油国への貿易収支は、対カナダと石油輸出国機構(OPEC)で赤字が拡大し、メキシコのみ赤字が改善した。対カナダが前月比26.1%増の15.50億ドルと、4ヵ月ぶりに増加している。OPECへの貿易収支は1.43億ドルの赤字となり、前月の1.08億ドルの黒字から赤字に反転した。逆にメキシコに対する赤字額は14.1%減の81.67億ドルで、減少に転じた。なお、原油輸入量はカナダが前月比2.4%増、OPECは2.8%増、メキシコは4.6%増だった。

なお、米国とメキシコはNAFTA再交渉で2018年8月27日に合意に到達。対してカナダは同年7月から米国による鉄鋼・アルミ関税への報復措置を7月1日から開始し、鉄鋼やアルミ、食品など166億加ドル相当の製品を対象とした。ただし、同年9月30日にカナダが米国・メキシコと歩調を合わせ、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に合意、NAFTAの枠組み維持で妥結。批准段階になって、米国はカナダとメキシコへの鉄鋼・アルミ関税の除外を決定した。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国、2位はメキシコで変わらず、3位は2ヵ月連続で日本となる。2018年9月~19年1月まで3位だったドイツは、4位を維持した。貿易額でトップは少なくとも2ヵ月連続でメキシコとなり、2018年の中国から首位を奪った状況が続く。各国ごとの単月の貿易収支動向は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――今回、資本財や自動車の輸出入の落ち込みが目立ったのは、ISM製造業景況指数など製造業PMIの下振れと整合的です。

米国以外の製造業PMIは、グローバル含めそろって分岐点割れ。

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(作成:My Big Apple NY)

米中通商交渉が暗礁に乗り上げる状況下、トランプ大統領はムニューシン財務長官やライトハイザーUSTR代表などの反対を押し切ってメキシコ制裁関税発動を表明しましたよね。この環境でなぜメキシコに鉄拳を振るったのか、その話はまた今度させて頂きます。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

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