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米5月ISM製造業景況指数、トランプ政権発足後の上昇を打消し

by • June 6, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2153

ISM Manufacturing Sentiment Plunges The Lowest Since The Last Presidential Election.

5月のISM製造業景況指数、マークイット製造業PMI確報値、ISM非製造業景況指数、マークイット・サービス業PMI確報値をおさらいしていきます。

米5月ISM製造業景況指数はと52.1と、市場予想の53.0を下回った。前月の52.8にも届かず、2016年10月以来で最低となりトランプ政権発足後の上昇を完全に相殺。世界景気減速や米中貿易摩擦に苛烈さが加わっただけでなく、商品先物が下落するなかで、製造業のセンチメントは一段と低下し格好だ。

ISM製造業景況指数、マークイット製造業PMIと共に下振れ。

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、生産のほか在庫、受注残、入荷遅延などが前月を下回った。その半面、新規受注や新規輸出受注、雇用、仕入れ価格が改善した。詳細は、以下の通り。

・生産 51.3、2016年8月以来の低水準<前月は52.3、6ヵ月平均は54.8
・新規受注 52.7>前月は51.7、6ヵ月平均は54.5
・雇用 53.7>前月は52.4、6ヵ月平均は54.6
・在庫 50.9、7ヵ月ぶりの低水準<前月は52.9、6ヵ月平均は52.2

・新規輸出受注 51.0>前月は49.5、6ヵ月平均は51.6
・入荷遅延 52.0<前月は54.6、6ヵ月平均は55.2
・受注残 47.2、2017年10月以来の分岐点割れ<前月は53.9、6ヵ月平均は50.7
・仕入れ価格 53.2>前月は50.0と2016年2月以来の分岐点割れ接近、6ヵ月平均は51.9

ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け「企業の在庫取り崩しと積極的な受け渡しの前倒しが響いた」と振り返りつつ、「ペースがゆるんだとはいえ拡大基調にある」との見解を寄せた。また「米中の貿易摩擦の悪化を懸念しているが、センチメントは概してポジティブ」と指摘している。18業種別でビジネス拡大を報告したのは11業種だった。ただし、服飾・革製品、一次金属、石油・石炭製品、木材製品、紙製品、組立金属の6業種は縮小したという。

▽米5月ISM非製造業景況指数、米中貿易摩擦悪化でも改善

米5月ISM非製造業景況指数は56.9となり、市場予想の55.4を上回った。前月の55.5(56.9から下方修正)を超え、3ヵ月ぶりの高水準となる。追加関税措置や世界景気減速の懸念に加え、原油安など商品先物の下落も手伝い製造業景況感は約2年半ぶりの水準に低下したが、サービス業のセンチメントは金利低下や米株買い戻し局面を支えに上昇している。

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(作成:My Big Apple NY)

ISMは、結果を受け「サービス業者は全般的に楽観的」と明かしつつ、「追加関税措置や雇用不足が懸念材料」との回答が聞かれたと報告した。業種別では、18業種中16業種が拡大を報告、農業・林業・漁業のみが縮小したといい、1業種は横ばいだったとみられる。

内訳をみると、ビジネス活動のほか新規受注、雇用などが前月を上回った半面、新規輸出受注や受注残、入荷時間が前月以下となった。仕入れ価格は前月と概して変わっていない。在庫詳細は、以下の通り。

・ビジネス活動 61.2>前月は59.5、6ヵ月平均は60.6
・新規受注 58.6>前月は58.1、6ヵ月平均は60.2
・雇用 58.1>前月は53.7、6ヵ月平均は56.2
・新規輸出受注 55.5<前月は57.0、6ヵ月平均は55.0
・在庫変化 54.0>前月は51.5、6ヵ月平均は59.9
・仕入れ価格 55.4<前月は55.7、6ヵ月平均は56.9

▽米5月IHSマークイット製造業PMI・確報値、2009年9月以来の低水準

米5月IHSマークイット製造業PMI確報値は50.5と、市場予想と速報値の50.6をわずかながら下回った。2009年9月以来で最低だという。サービス業PMI・確報値は、市場予想と速報値と一致し50.9と2016年3月以来の低水準。総合PMI確報値は、速報値と同じく50.9だった。結果を受け、クリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは「米国経済に懸念すべき前兆が現われている」と指摘。米4~6月期実質GDP成長率見通しを従来の前期比年率1.9%増から1.2%増へ下方修正し、米5月雇用統計・非農業部門就労者数は前月比15.0万人増を見込む。

――ISM製造業景況指数とマークイット製造業PMI・確報値はそろって低下しました。各連銀が発表する製造業景況指数の設備投資見通しも、芳しくありません。トランプ政権が500億ドルに続き2018年9月に2,000億ドルの対中追加関税措置を発動してから、設備投資見通しは低下の一途をたどり、直近は7ヵ月ぶりの水準に落ち込みました。

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(作成:My Big Apple NY)

その裏側で、米5月消費者信頼感指数は好調そのもので6ヵ月ぶりの高水準でした。期待指数も同じく6ヵ月ぶりのレベルへ上昇し、現況指数に至っては約18年ぶりの高水準を遂げています。

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(作成:My Big Apple NY)

追加関税措置が製造業とサービス業のセンチメントを分けているのは、言うまでもありません。今後、追加関税が賦課されていない約3,000億ドルまで範囲が広がれば、携帯電話や衣類・履物などに消費者にダイレクトに影響が及ぶ品目に広がるだけに、このままデカップリングが続くかはトランプ政権次第と言えるでしょう。

(カバー写真:Finn Terman Frederiksen/Flickr)

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