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米10月貿易赤字は2018年5月以来で最低、対中赤字も3ヵ月連続で縮小

by • December 8, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2208

Trade Deficit Decreases To 6-Month Low, Deficit With China Also Shrinks.

米10月貿易収支は471.99億ドルの赤字となり、市場予想の485億ドルを下回った。前月の511.00億ドル(524.50億ドルから修正)から7.6%減少し、2018年5月以来の低水準。原油関連を除く貿易赤字も479.79億ドルと、前月の512.99億ドル(修正値)を下回り、2018年6月以来の水準へ縮小した。石油での貿易収支では、現行の定義となった1978年以来で2ヵ月連続の黒字を計上しただけでなく、最大の規模となった。

5月に米中通商協議が物別れに終わり、トランプ政権は約2,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%へ引き上げ、同13日には第4弾の追加関税として残り約3,000億ドル相当の中国製品に対し25%の追加関税を発動する方針を表明。さらに同20日にはファーウェイなど安全保障上の脅威となる企業に対し禁輸措置を講じた。6月末の米中首脳会談では、第4弾の追加tra関税措置の無期延期で合意するなど、雪解けの様相を呈したが、7月30日に上海で開催された米中通商協議を経て、トランプ大統領は8月1日に第4弾を9月1日に実施すると発言。8月23日には、中国が約700億ドルの米国製品に5~10%の追加関税を9月1日から発動すると表明した。同日、トランプ政権は約2,500億ドル相当(第1~3弾)の税率を25%→30%、第4弾の税率を10%→15%へ引き上げる方針を発表し、米中貿易摩擦が苛烈さを増した。10月10~11日開催の米中閣僚貿易協議で第1段階の合意に到達したが、年内に米中首脳会談を開催し署名に至るかは、微妙な情勢となっている。

内訳をみると、輸出が0.2%減の2071.2億ドルと2ヵ月連続で減少した。輸入は1.7%減の2,586.51億ドルと、過去5ヵ月間で4回目の減少となる。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は791.33億ドルと、前月の830.27億ドル(修正値)を下回り2018年3月以来の低水準だった。

輸入の減少幅が輸出を上回り、実質ベースのモノの貿易赤字は2018年3月以来の低水準。

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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比0.6%減と前月の1.4%減を合わせ2ヵ月連続で減少した。サービスを含めた6大項目別では、2項目が増加し前月と変わらず。今回は、産業財とサービスが増加に転じた。逆に、自動車と食品・飲料が2ヵ月連続で減少、資本財と消費財は減少に転じた。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・産業財 1.3%増、増加に反転>前月は0.8%減
→金額ベースで増加幅が大きかった順に原油が前月比11.2%増、一次金属が45.3%増、LNGが16.7%増となった。

・サービス 0.5%増>前月は0.1%増
→旅行が0.6%増だったほか、その他ビジネス・サービスが1.3%増、知的財産使用料が0.6%増だった。

(減少項目)
・消費財 4.3%減、減少に反転<前月は2.9%増
→金額ベースで医薬品が前月比8.0%減、ダイヤモンド宝飾品が21.9%減、携帯電話が21.9%減となった。

・食品/飲料 2.6%減、2ヵ月連続で減少>12.3%減
→9月の第4弾の対中追加関税が発動する一方で米中閣僚貿易協議にて第1段階の合意に達するなか、大豆が41.7%減と2ヵ月連続で減少した。そのほか肉類が5.3%減、その他食品が2.2%減となった。

・自動車 2.3%減、2ヵ月連続で減少>前月は7.0%減
→トラック・バスが16.2%減、その他部品が5.3%減、エンジン・エンジン部品が5.8%減となった。

・資本財 0.9%減、減少に反転<前月は1.9%増
→民間航空機向けエンジンが11.6%減、測定・試験機器が4.9%減、産業機器向けエンジンが3.3%減となった。

輸入の内訳をみると、モノは2.1%減と過去5ヵ月間で4回目の減少となった。原油価格が50ドル台を中心に推移するなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が3.4%増と3ヵ月ぶりに増加。前年比では14.4%減と、少なくとも7ヵ月連続で減少した。金額ベースでは、上昇に転じた。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で2.4%減と、過去5ヵ月間で4回目の減少となった。5大項目別では、前月に続き4項目で減少。今回、資本財が増加したのみで、消費財が2ヵ月連続で減少、自動車と産業財は3ヵ月連続で減少した。食品・飲料は減少に転じた。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・資本財 0.7%増、増加に反転>前月は1.9%減
→金額ベースでは、12月15日に第4弾の追加関税の残り555品目に対し発動を予定するなか、半導体が前月比14.2%増、コンピュータが10.3%増と、コンピュータ周辺機器が7.2%増となった。

(減少項目)
・消費財 4.4%減、2ヵ月連続で減少=前月は4.4%減
→金額ベースでは、医薬品が6.0%減、携帯電話が4.2%減となったほか、服飾・繊維も9.2%減となった。なお玩具を含むゲーム・スポーツ用品なども減少しており、医薬品を除く12月15日から第4弾の対中追加関税対象の商品が2ヵ月連続で減少した。

・自動車 5.8%減、3ヵ月連続で減少<3.4%減
→その他関連部品が8.4%減、乗用車が3.5%減、トラック・バスが12.1%減だった。

・産業材 1.3%減、3ヵ月連続で減少>前月は1.5%減
→原油が8.3%減、その他貴金属が14.1%減、産業機器が3.3%減となった。

・食品/飲料 2.9%減、前月から減少に反転<前月は1.3%増
→果物・冷凍ジュースが9.1%減、その他食品が8.4%減、未焙煎珈琲が11.8%減となった。

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比1.2%減の312.59億ドルと3ヵ月連続で減少し、4ヵ月ぶりの低水準となった。日本への赤字は0.5%増の50.74億ドルと、日米貿易交渉が8月末のG7首脳会談で合意に結び付くなかで拡大。欧州全体への赤字額は、WTOがエアバスの補助金に対する報復関税を承認しながら、19.1%増の209.86億ドルとなった。ジョンソン英首相就任で関係強化が目される英国への貿易黒字は63.7%減の3.00億ドルの黒字となり、黒字は3ヵ月連続となる。

主な産油国への貿易収支は、対カナダで赤字を拡大させつつ対メキシコとでは縮小した。石油輸出国機構(OPEC)に対しては、石油の貿易収支で2ヵ月連続で黒字を計上するなか、3ヵ月連続で黒字となる。カナダは前月比29.9%増の33.61億ドルと2ヵ月連続で拡大した。メキシコに対する赤字額は1.4%減の87.60億ドルだった。一方で、OPECへの貿易収支は57.9%増の17.34億ドルの黒字と、3ヵ月ぶりの黒字を計上しただけでなく、2001年以降で最大の規模となった。なお、原油輸入量はカナダが前月比9.6%増、メキシコは4.8%増、OPECは19.7%減だった。金額ベースではカナダが8.7%上昇、メキシコが1.0%上昇、OPECが20.8%下落した。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国、2位はメキシコで変わらず、3位は5ヵ月連続で日本となる。2018年9月~19年1月まで3位だったドイツは、4位を維持した。貿易額でトップは少なくとも7ヵ月連続でメキシコとなり、2018年の中国から首位を奪った状況が続く。また、米商務省が7月2日に韓国、台湾の鋼材品をベトナムで最終加工する迂回輸出を抑制する狙いで最大456%の追加関税措置を発動するなか、対ベトナムの輸入額は引き続き2桁増となる。各国ごとの年初来の貿易収支動向は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――米中閣僚貿易協議で第1段階の合意に至ったものの、トランプ大統領が12月3日に2020年の米大統領選以降の妥結も辞さない構えをみせ、米中首脳による署名が可能かは、未だ不透明です。その間に、ブラジルとアルゼンチンに鉄鋼・アルミ関税の復活を12月2日に宣言、欧州へのエアバス報復措置に加え、同日にはデジタル課税への報復措置の検討にも入りました。対仏への報復措置は対仏輸入の5%にとどまるなか、鉄鋼・アルミ関税は経済停滞に喘ぐ両国にとっては、泣きっ面に蜂。特に、米国は10月に対ブラジルで14.3億ドルと過去最大の黒字を達成、中南米・南米諸国への黒字額も、同様に過去最大レベルです。トランプ政権の強硬的な通商政策が選挙を前に、一連の措置が米経済に悪影響として跳ね返ってこなければよいのですが。

(カバー写真:The White House Flickr)

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