Black Lives Matter, BLEXIT, And Black Voters During The Pandemic. Part 2
こちらの続きです。
現代に時計の針を戻して、BLEXIT創立者であるキャンデイス・オーウェンズ氏の過去を振り返ると、1992年の米大統領選以降ずっと民主党候補を選出してきたコネチカット州出身であるように、同党支持者でした。2015年に弱冠26歳で最高経営責任者(CEO)を務めたマーケティング会社では、共和党保守派を攻撃していたほどです。
しかし、2016年にネットでの誹謗中傷者を世間に公表するサイトSocialAutopsy.comを立ち上げた後、数々の政治団体の情報操作を目にしたせいか彼女の政治姿勢は一変。トランプ政権発足後の2017年以降はYoutubeを軸に保守派の政治活動を展開し、同年には功績が認められトランプ大統領支持団体の“ターニング・ポイントUSA“の広報責任者に抜擢されました。
同じくトランプ支持者で、ポップ・アイコンとして黒人の若者から絶大な人気を誇るカニエ・ウエスト氏もオーウェンズ氏を支援し、BLEXITのグッズ関連のデザインを提供したほどです。オーウェンズ氏の著書を称賛するツイートも、確認できます。そのウエスト氏と言えば、7月に大統領選に出馬表明して一時話題になりましたが、一部では黒人の若者票を民主党から奪うためではなかったかとの見方もあります。なお、ウエスト氏の人気は同氏ブランドとの提携を発表したアパレル大手ギャップの株価が当日に前日比で一時40%超となったことで理解できるでしょう。
画像:オーウェンズ氏の著書を称賛するウエスト氏のツイート
(出所:Kanye West/Flickr)
BLEXIT運動は、トランプ大統領は新型コロナウイルス感染後に初めてホワイトハウスの2階から行った時に存在感を示しました。水色のTシャツを着て集まった群衆の多くが、BLEXIT賛同者だったためです(後に参加者の一部はお金で雇われたとの報道も)。
一部の黒人の間でトランプ支持者が増えた理由は、コロナ禍以前のトランプ氏の功績が一因と考えられます。コロナ禍で郊外へ脱出する米国人が増加し住宅保有率が改善するなか、黒人の住宅保有率は47.0%と2008年7~9月期以来の高水準を記録していました。
チャート:全米の住宅保有率も67.9%と08年Q3以来の高水準
住宅保有率が著しい改善を遂げる前の2019年8月には、黒人の失業率が5.4%と過去最低を更新していました。さらに、白人との失業率格差は2ポイントまで縮小したものです。生活感に改善がみられたならば、黒人の一部で税制改正法を成立させたトランプ氏への評価が高まったとしても、おかしくありません。
しかし、コロナ禍で生活がひっ迫している黒人が少なくないことも事実です。黒人の失業率は経済活動の停止を受けた急伸後の改善が他人種より鈍く、8月には白人と黒人の失業率格差は5.7ポイントと2014年末以来の水準まで拡大しました。
チャート:8月は黒人と白人の失業率格差が2014年末以来の水準に拡大。
コロナ禍が黒人の失業率を上昇させ、さらに黒人差別撲滅運動である“ブラック・ライブズ・マター”が一部暴徒化するなか、黒人の間での保守化に歯止めが掛かるのか、あるいは全米を混乱に巻き込んだとして逆に黒人間でさらなる亀裂を生み一部の保守化を加速させるのか。米大統領選挙結果が、その答えのヒントを与えてくれるに違いありません。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
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