Movie Reel

キマシアさんが語る、映画界の厳しい資金調達事情

by • November 19, 2012 • Latest NewsComments (0)1841

The Long And Winding Road For Movie Production.

以前に、キマシア・ホア・ブリストルさんのお話をお届けしました。短編映画の監督作品で頭角を現した、インディペンデント映画界の傍らに咲く一輪の花のような彼女。自身が渾身の力で書き下ろした「The Good Citizen(s)」の映画化に尽力中で、資金調達のため北米大陸を西へ東へ駆け回っています。

そんな彼女が、NYへ姿を現しました。せっかくの機会なので、我が家のディナーにご招待したんです。

 

キマシアさんの「The Good Citizen(s)」、どんなあらすじか、振り返って見ますと。

「アメリカ人のマローンは、東京を人生の目的もなくさ迷う物事の良し悪しの判断も曖昧な風来坊。街をぶらつくマローンはある日、ひょんなことから温厚な日本人会計士のヨージに出会う。ヨージは人柄こそ善良なものの、東日本大震災で集まった巨額の募金を誤って送金してしまい、ヤクザ関係者の雇い主に追われて逃走中。そんないわくつきのヨージと妙な縁でつながってしまったが運のツキ、マローンはヨージと逃避行を始める羽目になってしまった・・。」

以前にも書きましたが、「ロスト・イン・トランスレーション」と「ミッドナイト・ラン」を足して2で割った新感覚なバディ・ムービーになる見通し。「ロスト・イン・トランスレーション」の流れを受け継ぎ、海外旅行者が日本へ目を向ける、新たなトリガーなりそうな予感がします。

ロスト・イン・トランスレーション、制作費400万ドルで北米興行成績は4457万ドルでした。

とはいえ、キマシアさんがメジャー・デビューを飾っていないだけに・・・やはり生で聞く資金調達はイバラの道。私の知り合いの映画ファンド関係者から「うーん、今考えられるだけじゃ親戚、友人を頼るしかないんだろうなぁ」と現実的なコメントが返ってきたのも、むべなるかな。動画サイトがある一方で、ソーシャルネットワーク嫌いな彼女自身のオフィシャルサイトがないことも、現時点では敗因でしょう。

キマシアさん自身、お金持ちとの縁は浅くはないんですよ。富裕者層はすでにビジネスで成功しただけに、後は別のかたちで自身の名を残したいようで、映画界との関係を築いておこうと考える方も少なくないらしいんですね。大手ヘッジファンドであるチューダーの本拠地として知られ、モロッコの王位継承権2位であるラシード王子の邸宅があるコネティカット州グリニッジに住む富裕層もご存知なんです。そのなかには大口の出資を検討してくださる方もいらっしゃったようですが、問題はやはり作品自体との関係。お金とともに口を出す傾向が高いことは否めず・・・。最大の障害は、投資家と映画制作との間の壁となって立ちはだかっております。

お金持ち過ぎても、交渉は難しいんです。ロシア系富裕層という知り合いの糸をたどっていくと、ブルックリン・ネッツのオーナーである富豪ミハイル・プロホロフ氏の関係者にぶつかったそうですが、あえなく惨敗。何でも「ビリオネアは数ミリオン程度の投資話には鼻にもかけない」とのことで、肩をすくめておりました。

ミハイル・プロホロフ氏、恋人のナオミ・キャンベルからのバースデー・イベントは50万ドル(4050万円)也。

逆に言うと、海千山千な成り上がり者に引きずられるリスクも横たわります。スピリチュアルなキマシアさんに吸い寄せられた大金持ちの女性は、とんだ曲者でした。誰もが知る歴史ある宗教の信仰者である一面をもちながら、彼女は財界のCEOを手玉に取る詐欺師だったんです。どのような手口かというと、いわゆる宗教を利用した寄付だけでなくCEOが相手なだけに「どこそこの企業があなたのような経験豊かな後任者を探しいるのだけれど、どこどこの部門に出資が必要で」などと甘く囁くんだとか。CEOという、被害届を出すには自身の面子が気になる相手を選ぶなんて、この女性詐欺師の目の付け所が違います。

経営者を手玉に取って次々をお金を巻き上げた女性詐欺師、最後の最後に頼った人がキマシアさんでした。彼女は、逮捕直前にキマシアさんに電話を掛け、今まで通りヨガ・インストラクターとして、そして話し相手として自分を支えて欲しいと訴えたといいます。彼女が詐欺師と知らずに付き合い続けたキマシアさん、逮捕のニュースを聞いてはらわたが煮えくり返ったことでしょう。当時を思い返しながら「あの人は犯罪に手を染めて懲役刑に処されても、2000万ドルと蓄えたままなのよ」とつぶやいた姿をみて、何だか私もやるせない気持ちになってしまいました。

キマシアさんは私たちと夕食を共にした翌日、オフ・ブロードウェイ・ショーを手掛けるプロデューサーと投資家との会合をもつために西海岸へ舞い戻っていきました。彼女の資金調達の旅は、まだまだ続きます。

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