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11月の中古住宅販売は増加も在庫が減少、住宅着工件数は一戸建てが軟調

by • December 21, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2212

Existing Home Sales Bounces Back, Housing Starts Improves On Multiples.

11月の中古住宅販売件数と住宅着工件数をおさらいしていきます。

全米リアルター協会(NAR)が発表した米11月中古住宅販売件数は年率532万件と、市場予想の520万件を上回った。前月の522万件から1.9%増加。2ヵ月連続で増加している。ただし、金利上昇や価格の高止まりを背景に前年比では7.0%減と9ヵ月連続でマイナスだっただけでなく、約7年間で最大の下げを示した。

内訳をみると、一戸建てが471万件と前月の462万件を1.9%上回った。2015年11月以来の低水準をつけた9月から、2ヵ月連続で改善している。複合住宅は1.9%増の61.0万件となり、こちらも2ヵ月連続で2015年1月以来の低水準から切り返した

4大地域別では、3地域で増加し前月の2地域を上回った。今回はIT企業が集まる西部が6.3%減(過去4ヵ月間で3回目の減少)の104万件となった程度で、他は全て増加している。北東部は7.2%増(2ヵ月連続で増加)の74万件と、最も力強い伸びを果たした。そのほか、中西部は5.5%増(3ヵ月ぶりに増加)の134万件、住宅市場の規模が最大の南部は2.3%増(2ヵ月連続で増加)の220万件となった。

在庫件数は前月比5.9%減の176万件と5ヵ月連続で減少した結果、8ヵ月ぶりの低水準だった。それでも、前年比で4.2%増と4ヵ月連続でプラスとなる。なお、在庫件数は2016年12月に165万件と1999年以来での最低を更新していた。販売が増加した一方で在庫が減少したため、在庫相当は2016年9月以来の水準に延びた前月の4.3ヵ月から3.9ヵ月と、8ヵ月ぶりの水準へ短縮した。

中央価格は前月比1.0%上昇25.78万ドルと、5ヵ月ぶりにプラスに転じた。前年比では4.2%上昇、上昇率は11月の平均時給の上昇率を引き続き上回った。販売日数は42日と、前月の33日から延び、前年同月の40日も上回った。NARは、販売件数の43%が1ヵ月以内に買い手がついたと説明、前月の46%、8月の55%から低下を続けた。

買い手の内訳は、以下の通り。

・差し押さえ物件2%、統計を開始した2008年10月以来で最低=前月は2%、前年同月は3%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅)0%<前月は1%、前年同月は1%
・新規購入者33%>前月は31%、前年同月は29%
・現金購入者21%<前月は23%、前年同月は22%
・住居用ではなく投資向け13%<前月は15%、前年同期は14%

中古住宅販売件数、複合が増加を牽引。

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(作成:My Big Apple NY)

発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、2ヵ月連続での増加した今回の結果を受け「過去数ヵ月と比べ住宅販売件数が安定してきた兆しが伺える」と安堵した。また「在庫の増加は、住宅価格の上昇を抑えるだろう」と予想した。

――米11月中古住宅販売件数は一戸建てと複合ともに増加したものの、これまで成長を牽引してきた西部で減少傾向を確認しました。背景として、NARは価格上昇以外に在庫逼迫を挙げています。しかし、西部の住宅市場では異変が生じつつあります。

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(作成:My Big Apple NY)

ご覧の通り、カリフォルニア州サンノゼに始まりコロラド州ボルダーまで、売り出し件数が増加する一方で、売り出し価格が下落した都市圏が増えている状況が見て取れます。価格高止まりや景気減速懸念から西部を中心に住宅市場の調整が本格化すれば、建築材や電化製品など高額商品の消費が減速するリスクもあり、一時的な動きにとどまるのか注意が必要です。

▽米11月住宅着工件数、前月に続き複合が支えるも前年比はマイナス

米11月住宅着工件数は年率125.6万件と、市場予想を上回った。前月の121.7万件(122.8万件から下方修正)を3.2%上回り、3ヵ月ぶりに増加。ただし、景気後退入り前の水準となる2007年7月以来の高水準を遂げた1月の133.4万件以下が続く。

内訳をみると、一戸建てが前月比4.6%減の82.4万件と3ヵ月連続で減少した。変動の大きい複合住宅は22.4%増の43.2万件と3ヵ月ぶりに増加した。

前年比では、住宅着工件数が3.6%減と2ヵ月連続で減少した。一戸建てが13.1%減と、2ヵ月連続で減少。逆に複合住宅は21.7%増と、前月から増加に転じた。

4大地域別では、3ヵ月連続にて2地域で増加した。今回は北東部が37.8%増(前月分の減少を相殺)の10.0万件だったほか、南部は15.1%増(2ヵ月連続で増加)の51.4万件となる。一方で、中西部は19.2%減(前月の増加分を相殺)の12.7万件、西部は14.2%減(2ヵ月連続で減少)の21.8万件だった。

建設許可件数は132.8万件となり、市場予想の126万件を大幅に上回った。前月の126.5万件(126.3万件から上方修正)を5.0%上回る。内訳をみると、一戸建てが0.1%増の84.8万件と前月から小幅ながら増加に転じたほか、複合住宅も14.8%増の48.0万件と、2ヵ月連続で増加した。

住宅着工と建設許可件数、共に複合住宅が主導し一戸建ては軟調。

housingstarts
(作成:My Big Apple NY)

建設中件数は前月比0.7%増の114.8万件となり、2007年7月以来の高水準だった。一戸建てが0.2%増の53.1万件と3ヵ月連続で増加した半面、複合住宅も0.2%増の61.7万件と3ヵ月連続で増加した。

――住宅着工件数によれば、一戸建ての着工件数の75%が販売用と推計されるため、61.8万件が市場に流入する見通しです。米10月新築住宅販売件数の54.4万件を踏まえれば、在庫が増加する可能性を示唆します。

しかし、住宅在庫に視点を移すと新築は増加し2009年1月以来の水準である一方、住宅販売件数の9割近くを占める中古住宅で在庫逼迫の状況に変わりありません

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(作成:My Big Apple NY)

今年の米国は平年を下回る気温に見舞われており、冬季の需要が一段と冷え込むこと必至。住宅市場は書き入れ時の春頃まで、成長に寄与する可能性は低いと考えられます。

(カバー写真:Sarah Miller/Flickr)

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