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建設業センチメントは改善も、在庫不足や高速鉄道問題など課題山積み

by • February 20, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off3251

Shortage Of Houses For Sale Could Drag Builder Sentiment Again.

米2月NAHB住宅市場指数は62となり、市場予想の59と前月の58を上回った。追加関税措置の影響に加え、米株安や世界景気の減速懸念が痛手となり、2018年12月こそ2015年5月以来の低水準となったが、金利低下と米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利据え置き示唆を手掛かりに改善をたどる。内訳をみると、一戸建て現況指数は67と、2015年5月以来の水準へ落ち込んだ2018年12月の61を超え、3ヵ月ぶりの水準を回復した。一戸建て見通し指数も68と、4ヵ月ぶりの水準へ切り返した。客足の動向を表す見込み客指数は48とこちらも4ヵ月ぶりの水準へ改善、2016年3月以来の弱さとなった前年末で底打ちするか注目される。

NAHB住宅市場指数、小幅改善も他項目と合わせトランプ大統領就任後の上昇打ち消しは変わらず。

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(作成:My Big Apple NYが作成)

地域別では、1月に続き2地域で上昇した。特に上振れしたのは中西部で前月から6ポイント上昇、4ヵ月ぶりの水準をへ戻した。住宅市場の規模が最大の南部も5ポイント上昇し66、こちらも4ヵ月ぶりのレベルを回復。一方で、IT企業が集まる西部は67と、3ヵ月ぶりに70台を回復した前月から低下。北東部は45と、唯一3ヵ月連続で50を割り込んでいる。

発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)のロバート・ディエス首席エコノミストは、結果を受け「住宅ローン金利の低下に加え、米雇用統計の力強さが建築業者のセンチメントの上昇を促した」と説明した。外部環境の変化を受け、建築業者は「書き入れ時へ向け期待感が高まっている」という。

――2018年10~12月期のNAHB値ごろ感指標(住宅販売件数に対し、30年物固定住宅金利で、月々の負担が家計中央値の28%で支払いが可能な住宅の割合)は56.6%でした。金融危機後以来で最低だった前期と、さほど変わりません。引き続き、値ごろ感のある物件が限られる実態が浮かび上がります。

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(作成:My Big Apple NY)

その背景の一つに、高齢化が挙げられます。連邦住宅金融抵当金庫のフレディマックによれば、齢者が中古住宅を過去と比べ165万件多く抑えており、もともと住んでいた住宅から離れようとしないのだと。背景としては①高齢者向け住宅(老人ホームや介護施設など)へ移る経済的余裕がない、②高齢者向け住宅などは、都心部から比較的遠い、③都市圏で生活を好む子供に合わせ、郊外への引っ越しを望まない――などが挙げられます。年齢別の内訳は、以下の通り。

・1931~41年生まれ 110万件
・1942~47年生まれ 30万件
・1948~58年 25万件

こうした環境を受け、レディマックは、今そこにある住宅需要を満たすために、250万件の住宅が必要と試算します。つまり、結婚や出産といった新たなライフステージへ向かうミレニアル世代など潜在的住宅購入者にとって、340万件の住宅が不足しているも同然なのです。

住宅保有率が高齢者ほど高い(2018年Q3:65歳以上=78.6%、35~44歳=59.5%、1994年Q3:65歳以上=77.2%、35~44歳=64.3%)のは単に所得事情だけでなく、販売用住宅件数という供給側による問題も。

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(作成:My Big Apple NY)

交通網が発展すれば、都市部への集中を多少なりとも回避できるような気がするのは、日本で生まれ育ち、比較的電車通勤に恵まれたニューヨークに住んでいた筆者の戯言でしょうか?

ここで思い出されるのが、カリフォルニア州で遅延と資金不足が相次ぐ高速鉄道の建設です。カリフォルニア州のニューサム知事は施政演説で、当初450億ドルとされた高速鉄道建設予算が770億ドルを超えて膨れ上がったていると指摘。その上で、サンフランシスコ=ロサンゼルス(約620㎞、高速鉄道で約2時間40分)など主要都市を結ぶ区間を断念し、距離275㎞(171マイル)程度のマーサード=ベーカーフィールド区間の運行開始に注力すると語りました。

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(出所:CHSRA

カリフォルニア州の高速鉄道と言えば、北はからサクラメント、南はサンディエゴまで全長約810㎞(505マイル)をつなぐ夢の路線と位置づけられていました。高速鉄道の建設は、値ごろ感のある住宅不足が深刻化するカリフォルニア州の解決策として期待されていましたが、このままでは一部の都市への集中が続きかねません。

そのニューサム知事と言えば、トランプ大統領の非常事態宣言を違憲とし、他15州を束ね集団提訴に踏み切りました。トランプ大統領は素早く対応、運輸省はオバマ前政権が承認したカリフォルニア州高速鉄道への補助金9億2,900万ドルの取り消しを決定。挙句の果てには、過去に支払った補助金25億ドルの返済を求め「法的選択肢を積極的に模索している」といいます。トランプ大統領に喧嘩を売るということは、米中通商協議を見ても明らかですが、いやはやさすがですね。

販売用住宅が低水準であるもう一つの大きな理由は、ベージュブックで何度も指摘されたように建設労働者と、建設資材の不足が挙げられます。追加関税措置の影響で値上がりしてきた価格も、建設業者の利益圧迫につながってきました。ただ、足元で建設資材コストは落ち着きつつあります。

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(作成:My Big Apple NY)

建設資材コストの頭打ちは、数少ない住宅市場のグッドニュースと言えそうです。

(カバー写真:Steve Rhodes/Flickr)

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