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米6月ADP全国雇用者数、採用予定者数まで幅広く好調な雇用統計を示唆

by • July 1, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2010

ADP National Employment Report, Hiring Plans And Initial Claims All Suggest Better Job Growth In June.

6月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。

米6月ADP全国雇用者数は前月比69.2万人増となり、市場予想の60万人増を上回った。前月の88.6万人増(97.8万人増から下方修正)に届かず。1回以上のワクチン接種率が6月30日時点で全米人口の54.4%に相当し、共和党知事の少なくとも25州で失業保険給付の上乗せ前倒し終了を発表し労働市場に人材が戻ってきつつあると想定されるなか、堅調な数字となった。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

チャート:ADP全国雇用者数、5ヵ月連続で増加

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が62.4万人増と前月の78.3万人増(修正値)を下回ったが、6ヵ月連続で増加した。内訳は以下の通り。

・娯楽/宿泊→33.2万人増、6ヵ月連続で増加<前月は41.4万人増
・教育/健康→12.3万人増、14ヵ月連続で増加<前月は13.0万人増
・貿易/輸送→6.2万人増、6ヵ月連続で増加<前月は10.5万人増
・専門サービス→5.3万人増、14ヵ月連続で増加<前月は5.7万人増
・その他→4.8万人増、6ヵ月連続で増加<前月は5.8万人増
・金融→0.9万人増、11ヵ月連続で増加<前月は1.6万人増
・情報→4.4万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は0.2万人増

財部門(製造業、建設、鉱業)は6.8万人増と前月の10.3万人増を下回った。ただし、4ヵ月連続で増加している。内訳は以下の通り。

・建設→4.7万人増、4ヵ月連続で増加<前月は5.0万人増
・鉱業→0.2万人増、5ヵ月連続で増加<前月0.9万人増
・製造業→1.9万人増、4ヵ月連続で増加<前月は4.4万人増

ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「労働市場は引き続き勢いよく増加し、4~6月期を力強く締めくくった」と振り返った。依然として「就業者はコロナ以前の水準を約700万人下回るが、2021年の始めから就労者数の増加は300万人を超えている」と指摘。特にパンデミックで大打撃を受けた「サービス業で回復が際立ち、なかでも娯楽・宿泊は経済正常化に合わせ、全米でフル稼働中だ」と付け加えた。

▽米6月人員削減予定数、年初来では1997年以来の低水準

米6月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で88.0%減の2万476人と5ヵ月連続で前年比で減少した。前月比でも16.7%減少。新規感染者数の減少やワクチン普及の加速に加え、経済も全面再開するなかで、需要拡大をにらみ企業は削減予定を手控えつつある。

年初来では、前年同期比86.6%減の21万2,661人と1995年以来の低水準を記録した。4~6月期では前年同期比94.5%減の6万7,975人、前期比では53%減となり四半期ベースではITバブルへ向かっていた1997年Q2以来の低水準だった。

チャート:人員削減予定数、年初来と四半期ベースでそろって90年代後半以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「ゴムのような反発力をみせている」と振り返った。その上で「企業は求人数が過去最多で雇用確保への信頼感が非常に高い状況で様子見姿勢を保っている」と指摘。人員削減数は、「ITバブル期以来の低水準」まで落ち着いたとの見方を寄せた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。4月は1位がサービス、2位がヘルスケア、3位が食品、4位が政府、5位が娯楽・宿泊だった。

1位 ヘルスケア 2,775人
2位 教育 2,617人
3位 輸送 2,185人
4位 製薬 2,134人
5位 自動車 2,109人

年初来では、以下の通り。4月時点までの年初来では1位が航空・防衛、2位が通信、3位がサービス、4位が小売、5位は娯楽・宿泊だったが、今回は小売が5位に転落、エネルギーが4位に浮上した代わりに、娯楽・宿泊が圏外となった。

1位 航空・防衛 3万2,930人(前年同月は5万3,284人)
2位 通信 2万4,824人(同2万9,100人)
3位 サービス 1万6,608人(同11万4,442人)
4位 小売 1万6,291人(同2万4,852人)
5位 小売 1万4,049人(同15万6,595人)

州別動向は、年初来で以下の通り。航空・防衛が最多だったことから、ボーイングが本社を置くワシントン州が1~5月に続き前年の圏外から1位のままだ。2位以下は4~5月と変わっていない。

1位 ワシントン州 3万8,164人(前年の年初来は6万9,245人)
2位 テキサス州 3万6,243人(同11万6,578人)
3位 カリフォルニア州 2万7,734人(同30万1,813人)
4位 ミズーリ州 1万1,373人(同3万64人)
5位 イリノイ州 1万886人(同3万5,819人)

リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通りで前月と変わらず。一方で、新型コロナウイルスは3~4月に6位だったが、今回は5月に続き7位だった。

1位 市場動向 4万8,047人
2位 需要低下 3万9,444人
3位 閉鎖 3万4,278人
4位 再編 3万8,151人
5位 M&A 9,425人

採用予定数は、前年同月比で45.9%増の11万93人だった。前月比では124.1%増となり年初来で2月以来の高水準となっただけでなく、単月では少なくとも2014年以降で最多を記録した。年初来では、前年同期比58.7%減の55万1,789人だが、これは経済活動停止の解除の反動で急増した前年の反動によるものである。

チャート:採用予定数、年初来ではコロナ前の2019年の46万4,598人超え

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、単月で以下の通り。前月は1位が小売、2位が消費財、3位が航空・防衛、4位がテクノロジー、5位が自動車だった。

1位 サービス 10万人
2位 輸送 3,164人
3位 娯楽・宿泊 2,200人
4位 金融 1,250人
5位 通信 929人

年初来では、以下の通り。前月までは1位が小売、2位は政府、3位が娯楽・宿泊、4位がヘルスケアだった。5位のみ、公益の代わりにテクノロジーが入っていた。しかし、今回は2位にサービスが浮上したため、それぞれランクを一つずつ落とし、テクノロジーは圏外となった。

1位 小売 11万8,665人
2位 サービス 11万4,140人
3位 政府 6万6,230人
4位 娯楽・宿泊 5万6,962人
5位 ヘルスケア 3万594人

チャート:人員削減予定数と採用予定数をみると、採用が人員削減を上回る推移が続く。

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(作成:My Big Apple NY)

▽米新規失業保険申請件数、コロナ禍での最低を更新

6月26日週までの米新規失業保険申請件数は36.4万件と、市場予想の38.8万件を下回った。前週の41.5万件(修正値)を下回り、2020年3月14日以来の低水準。少なくとも共和党知事を抱える25州で、バイデン政権下で成立した失業保険支給上乗せなど特例措置を当初予定の9月6日から前倒しで廃止されることとなった影響が現れつつあるようだ

6月19日週までの継続受給者数は346.9万人と、前週の341.3万人を上回った。米5月雇用統計で長期失業者の割合が高止まりするように、継続受給者数の減少ペースは緩慢なままだ。関連指標の果は、以下の通り。

・新規失業保険申請件数(6/26週)→5.1万人減の36.4万件、2週連続で減少
・継続受給者数(6/19週)→前週比5.6万人増の346.9万人、過去8週間で4回目の増加
・失業者に占める被保険者の割合(同)→2.5%、4週連続で20年3月21週以来の低水準
・PAU(同) 11万5,267人、前週の11万1,778人から3,489人増加

チャート:米新規失業保険申請件数は、20年3月14日週以来で低水準

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(作成:My Big Apple NY)

――米6月ADP全国雇用者数に始まり、米6月チャレンジャー人員削減予定数と米新規失業保険申請件数を見ると、再び雇用が急増しそうな気配です。その上、今月はこちらでご紹介したように、教育が季節調整の影響で押し上げられそうなムード。そもそも、託児所不足やオフィス復帰に慎重な米国人などの影響で人手不足が深刻化するなか、自発的離職者数が過去最多であるため、採用予定数も6月に急増しています。採用予定数が強い数字の場合、雇用統計・NFPも連動する傾向があり(3月の採用予定者数:9.8万人→3月のNFP:78.5万人増)、否が応でも好結果を期待してしまいます。何より、共和党知事25州での失業保険給付上乗せなど特例措置の前倒し撤廃しましたから、労働参加率が61.8%の壁を越えてくるかも、注目。20年12月にFRB理事に就任したばかりのウォラー氏は6月29日、2022年の利上げを支持する発言し市場関係者を驚かせましたが、彼の強気な読みが正しければ、米6月雇用統計は足元落ち着いていた米長期金利を押し上げそうな雲行きです。

(カバー写真:Rawpixel Ltd/Flickr)

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