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米4月のコアCPI、旅行需要を反映し高止まり続く

by • May 11, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2146

Core CPI Accelerates As Airline Fares Continued Their Climb With More People Take To The Skies.

米4月消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、市場予想の0.2%を上回った。2006年2月以来の伸びとなった前月の1.2%から4分の1の伸びにとどまった。とはいえ、2020年6月以降、23ヵ月連続で上昇した。原油価格が130ドル台から100ドル割れまで下落したため、エネルギーが下落に反転。しかし、ロシアとウクライナの輸出比率が高い小麦など供給制約の深刻化を受け、食品は高止まりを続けた。そのほか、燃料高や需要拡大を追い風に航空運賃のほか宿泊、半導体不足を受けた新車、家賃なども物価を押し上げた

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が2.7%下落し、2009年6月以来の高い伸びに至った前月の11.0%を下回った。ガソリンも同6.1%下落と、2005年9月以来のレベルだった前月の18.3%の上昇から大きく反転した。なお、全米自動車協会(AAA)によると、米国のガソリン小売価格は3月に2008年7月の水準を超え1ガロン=4.331ドルと過去最高値を更新した。しかし、その後は一段の上昇を回避している。その他のエネルギーでは、電力など公益が2.3%上昇し、前月の1.8%を上回った電力が0.7%と前月の2.2%から鈍化したが、ガスが3.1%と0.6%を超え2018年12月以来の伸びを記録していた。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が前月比0.9%上昇、20年4月以来の伸びとなった2~3月の1.0%に近い水準を保つ。詳細をみると、食費が同1.0%上昇し、20年4月以来の加速を示した前月の1.5%を下回ったとはいえ、高止まりしていた。肉類・卵・魚が1.4%と6ヵ月ぶりの高い伸びだった。なお、肉類の高騰を背景にバイデン政権は1月3日、寡占状態の食肉加工業者の間で競争を推進すべく、独立業者を支援するため10億ドル投じると発表した。そのほか、ウクライナ情勢緊迫化が続くなかシリアル・パンは同1.1%上昇、前月の1.5%を下回った。逆に、外食は同0.3%と約1年ぶりの低い伸びにとどまった。

CPIコアは前月比0.6%上昇し、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.4%を超えつつ、前月比では1982年6月以来の伸びへ加速した21年6月の0.9%に近づいた。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比はガソリンなどエネルギーが押し下げたものの食品とその他が上昇に寄与

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、燃料価格の上昇に加え航空会社大手が2022年の黒字化を予想したように需要拡大も重なり、航空運賃は前月比で過去最高の伸びを記録した。宿泊も、コロナ感染者の減少を追い風に2ヵ月連続で上昇しただけでなく、8ヵ月ぶりの加速となった。一方で、自動車保険や服飾、家賃、娯楽、新車は前月以下の伸びにとどまった。中古車は2ヵ月連続で下落し、1968年以来の落ち込みとなった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・航空運賃 18.6%の上昇、6ヵ月連続でプラスとなり統計開始以来で最高>前月は10.7%の上昇
・宿泊 1.7%上昇、3ヵ月連続でプラス>前月は3.3%の上昇し8ヵ月ぶりの高い伸び
・新車 1.1%の上昇、3ヵ月連続でプラス>前月は0.2%の上昇
・自動車保険 0.8%の上昇、4ヵ月連続でプラス>前月は0.7%の上昇
・帰属家賃 0.6%の上昇、上昇トレンドを維持し1987年12月以来の高い伸びに並ぶ>前月は0.4%の上昇
・住宅 0.5%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.5%の上昇
・医療サービス 0.5%の上昇、10ヵ月連続でプラス<前月は0.6%と2019年10月以来の高い伸び
・家賃 0.5%の上昇、プラスのトレンドを維持>前月は0.4%上昇
・娯楽 0.4%の上昇、4ヵ月連続で上昇>前月は0.2%
・教育 0.2%の上昇>前月は0.1%の下落と4ヵ月ぶりにマイナス<前月は0.1%の上昇

(横ばい、下落項目)

・中古車 0.4%の下落、3ヵ月連続でマイナス>前月は3.8%下落と1968年12月以来の下落率
・服飾 0.8%の下落<前月は0.6%の上昇、6ヵ月連続でプラス

CPIは前年比で8.3%上昇し、市場予想の8.1%を上回った。1981年12月以来の上昇率となった前月の8.5%から鈍化したとはいえ、高止まりの状況が続く。CPIコアは同6.2%上昇し、市場予想の6.0%を上回った。ヘッドラインと同じく、1982年8月以来の高い伸びを記録した前月の6.5%に近い水準を保った。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など

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(作成:My Big Apple NY)

――米4月CPIはガソリンなどエネルギーに加え、こちらでお伝えしたように米国人の旅行にめぐるペントアップ需要が押し上げ引き続き航空運賃と宿泊の他、新車や帰属家賃も全体を押し上げました。

さて、経済活動の再開を受け物価の伸びが顕著な費目をみてみましょう。中古車は前月比で3ヵ月連続で下落したものの20年2月比で未だ47.9%上昇。その他、肉類・魚・卵(同21.8%)を始め食費(同15.4%)、外食(同11.7%)など食品関連の伸びが引き続き前月を上回りました。需要拡大に支えられ、宿泊(同12.5%)と、コロナ禍で初の2桁上昇を記録しています。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、20年2月からみた上昇率は航空費が急伸しプラスに転じたほか、食品、宿泊の上昇トレンドが顕著に

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの14.9%を占める食費は、前述の通り外食から肉・魚・卵などロシアのウクライナ侵攻もあって幅広く高止まりを続けます。20年2月比で右肩が上がりを続けるだけでなく、食品は前年同月比で9.4%上昇し1981年4月以来の伸びでした。費目別の前年同月比の上昇率は、外食が同6.9%と1981年2月以来肉類・魚・卵は同14.4%と1979年5月以来シリアル・パン類は同10.3%と2009年1月以来の2桁上昇食費は同10.8%上昇と1980年11月以来と、それぞれ引き続き著しい。足元、過去最高値をつけた小麦先物など一部の食品で一服感がありますが、戦況次第で配送問題もあって、高止まりするリスクをはらみます。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーは、前年同月比でガソリン(前月:48.0%→今回:43.6%)で伸びが鈍化した程度で、ガス(前月:13.4%→今回13.7%)を始め、食費(前月:10.0%→今回:10.8%)や家賃(前月:4.4%→今回:4.8%)などが前月を上回る伸びとなっています。

チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫へ

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(作成:My Big Apple NY)

物価の高止まりは、実質賃金を押し下げ続けています。4月の実質平均時給は3月に続き前年同月比2.6%下落し、13ヵ月連続でマイナスでした。

チャート:実質賃金の下落に加え、エネルギーや食品、家賃など生活必需品の値上げが消費の重石に

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(作成:My Big Apple NY)

――デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は、決算発表後に「現在の需要環境は過去最高水準にある」とし、「直近5週間の予約はデルタ航空史上、最も堅調な期間だった」と述べたように、米国人の旺盛な旅行需要を確認しています。しかもQ2は、燃料費の高騰を旺盛な旅行需要が相殺するとして、黒字化を見込む勢い。ユナイテッド航空なども好調そのもので、S&P500の年初来リターンが5月11日時点のNY時間午後12時40分時点で16.0%安のところ、ユナイテッド航空は0.8%高、デルタ航空は1.0%安程度と健闘しています。

アメリカ屋外広告協会が3月10日にリリースした世論調査でも、米国人の85%がバケーションを計画していると回答していました。しかも、48%は2週間以上の長期休暇を取得する予定だといいます。米3月小売売上高の20年2月比が多くの費目で2桁増を示すように、モノ需要はインフレ高進のあおりを受けるリスクが高いほか2022年初めまでに一巡の感があるなか、マスク着用義務解除もあってコト消費拡大への期待が膨らみます。

その半面、せっかく中古車の物価上昇押し上げ効果がベース効果もあって剥落しつつあっても、航空運賃や宿泊がコアCPIの上昇を演出してしまいました。帰属家賃の上昇や家賃も重なり、インフレは高止まりが続く状況。Fedは6月、7月も50bp利上げを決断しそうです。

(カバー写真:Port Authority of New York and New Jersey/Flickr)

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