15930974321_e4bd327ff8_k

1月FOMC議事録、早期利上げリスクを払拭

by • February 18, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2507

January FOMC Minutes Takes An Early Hike Off The Table.

1月27−28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、FRBスタッフによる早期利上げと利上げ後ろ倒しの長所・短所をまとめた資料を元に、参加者は第1弾の利上げへ向けた協議を重ねていました。利上げ時期と利上げペースをめぐり熱く議論した今回、参加者は早期利上げは得策ではないと判断。米株・米債には、ポジティブな内容となりました。以下、FOMC議事録の要点をご覧下さい。

▽第1弾利上げをめぐる議論
・多くの参加者は時期尚早な利上げが経済、労働市場、インフレ目標値の回復を阻害すると懸念。
・時期尚早な利上げは、ゼロ金利近辺へ戻すリスクを強めると判断。
・複数の参加者は、利上げを遅らせた場合は過剰流動性を生み高インフレをもたらしかねないと懸念。
・低金利の据え置き維持、時期尚早な利上げはそろって負の効果をもたらす。
・数人の参加者は、利上げ開始を遅らせた場合に過剰な金融緩和を維持する示唆を与えかねないと指摘。

・複数の参加者は、低インフレ下での利上げを準備する上で市場との対話が困難になるリスクを指摘。
・数人の参加者は、インフレ目標値2%を掲げるFedへの信頼を損ねる懸念を表明。
・1人の参加者は、インフレ見通しに備え緩和策の検討を推奨。

・多くの参加者は、第1弾の利上げに対するリスクを踏まえ長きにわたりゼロ近辺で維持する案を支持。
・数人の参加者は、十分据え置いてきたとして近い将来での利上げを標榜。
・第1弾の利上げ前に、多くの参加者は労働市場の改善とともに利上げに伴う経済の耐久性を精査すべきと主張。

▽コミュニケーション手段をめぐる議論
・多くの参加者は、”忍耐強くなれる”の文言削除を検討。
・ただし市場が早期利上げを連想させるリスクを踏まえ、維持を決定。
・多くの参加者は、利上げ局面でフォワードガイダンスの効力は限定的と判断。
・数人の参加者は、声明文の簡素化の利点を強調すると判断。
・経済指標次第の政策を明確化へ。

▽経済全般の見方
世界的な金融緩和ラッシュが世界成長を押し上げると予想。
・原油安は米国内、海外経済にポジティブ。
ドル高で米国の輸出は抑制へ、数人の参加者は一段のドル上昇に懸念。
・中国、海外のディスインフレ圧力、中東情勢、ウクライナ、ギリシャの不透明性がリスク要因。

▽インフレの見方
・インフレは目標値を大きく下回って推移、要因は原油安ながら複数の参加者はエネルギーを除く場合でも低下基調と指摘。
・別の複数の参加者は、原油安を通じエネルギー以外へ低インフレが波及しつつあると指摘。
・数人の参加者は名目賃金の伸び鈍化がヘッドラインに反映されていると指摘した上で、FOMCが予想する以前にインフレ目標値を回復することは困難と予想。
・複数の参加者は、コアインフレの低下を懸念材料と認識。
・名目の賃金は失業率が高水準にあった当時、下方圧力が十分に加わっていなかったため逆に足元の賃上げを抑制している可能性に言及。

物価上昇に向かうメドは、なかなか立たず。
Global_disinflation
(出所:ABN Amro)

▽労働市場の見方
・労働市場は広範にわたって改善、就業者数は力強い伸びを示し失業率も低下。
・数人の参加者は失業率以外の指標をにらみ、依然として大いなる労働市場のたるみを確認。
・別の数人の参加者は労働資源の余剰がわずかしか残っていないと認識、あるいは比較的すぐに労働資源の余剰が吸収されると予想。

▽FRBスタッフの経済の見方
・2015年上半期の成長率はガソリン価格下落に伴う購買力の強まりを背景に、上方修正。
・中期的な成長見通しはドル高がガソリン価格下落を受けた消費拡大の効果を相殺するため、ほぼ変更せず。
・インフレ見通しは、原油安を背景に下方修正。
・2016−17年のインフレ見通しは2%割れで、ほぼ変更せず。

▽金融市場の見方
・一部の資産市場は割高、特に社債と商業不動産ローンで顕著に。
・債券市場や投信で、流動性ひっ迫のリスクも。
原油安とエマージング通貨安への影響は、比較的限定的。

——以上の内容を踏まえ、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed担当のジョン・ヒルゼンラス記者による「Fed内で利上げへの協議が激化(Fed’s Rate Debate Heating Up)」と題した記事を配信。年内の利上げを見据えるFedの協議は、新たな段階に入ったと報じていました。

BNPパリバは、 FOMC議事録を受け「全体的な評価をみるとハト派寄りだった」との見方を表明。その上で「第1弾の利上げを9月とする当方の見方と整合的」とまとめています。

バークレイズのマイケル・ゲイピン米エコノミストは、「インフレ下方リスクへの懸念が高まっていた」と指摘し、「2014年12月FOMCより6月利上げのハードルは高まった」と結んでいました。

マーケットの利上げ観測が9月に収束しつつあるなか、利上げシナリオのカギを握るのはイエレンFRB議長による24−25日の旧ハンフリー・ホーキンス証言。FRB議長就任1年を経て貫禄が漂い始めたイエレン議長は、どのようなスパイスを利かせるのでしょうか。

(カバー写真:FRB)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.