Washington D.C. - Federal Reserve

10月FOMC議事録、12月利上げへ足固め

by • November 23, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off3221

Fed Steps Closer To December Lift-Off, Minutes Show.

10月27~28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、声明文の変更通り利上げへ向けた姿勢が9月分より幾分鮮明になりました。

▽利上げをめぐる協議
・数人の参加者は、利上げの時機が熟したと判断。
・多くの参加者は利上げ開始の遅れから生じる3つの問題点を指摘。
(第一に遅延の理由が理解されない場合に金融市場に不透明性を、与え利上げのタイミングをめぐり不要な注目を与える可能性がある。第二に、金融市場の不均衡を長期化させかねない。最後に、利上げ開始への自信欠如とみなされ信認を低下させる)
・参加者は「次回会合で・・」の文言は、政策に選択余地を与えると判断。

・2人の参加者のみ、利上げ開始をめぐり「次回会合で決断する」との表現が強過ぎると懸念。
・数人の参加者は、利上げの準備は整っていないと認識。
・数人の参加者は海外動向や金融市場の懸念が後退したとはいえ、見通しの下方リスクが残存すると指摘。時期尚早な利上げにより経済減速を招きかねず、正当性に欠けると説く。金融市場に引き締め効果を与えるリスクも懸念し、低金利政策維持が労働市場とインフレ改善につながると主張。

▽利上げ局面での対応
・緩やかなペースで利上げへ。
・利上げの開始時期より正常化への道筋が重要。
・早期の利上げで、引き上げ幅は比較的小幅に。
・FOMC参加者は9月時点に緩やかな成長予想を描いていたものの、利上げ動向は経済指標次第。

▽緩和策への回帰
・現在の低金利環境において、数人の参加者は経済が弱まり雇用とインフレに悪影響を及ぼす場合に備え追加緩和策の選択肢を検討すべきと認識。(ゼロ近辺金利、あるいは量的緩和の回帰を示唆?)

▽経済動向
・経済は緩やかに拡大、輸出は軟調。
・雇用の伸びは鈍化も、「労働市場の余剰不足」は年初来から減退。
・数人の参加者は、雇用の伸び鈍化が一時的ではなく労働市場の改善にブレーキが掛かる可能性を懸念。
・賃金は抑制的ながら、多くの参加者は企業関係者から人手不足の報告が上がっているため賃上げにつながると予想。
・多くの参加者は、海外動向や金融市場から派生するリスクは提言したと判断。

・インフレは原油安の影響で、目標値2%以下で推移。
・小売売上高は失望を誘ったものの、雇用の改善で拡大へ。
・原油安でエネルギー企業の設備投資が落ち込んだにも関わらず、設備投資は堅調。
・製造業は幾分鈍化、自動車市場での輸出減速のほか商品先物の下落が背景。

▽海外動向、金融市場
・主要国での追加緩和策や中国の経済指標の改善により、世界の株式指数は上昇に反転。

中国への懸念は、どこへやら。
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(出所:2 dogs/Flickr)

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番であるジョン・ヒルゼンラス記者による「10月FOMC議事録で、12月利上げへにじり寄るFedの姿勢が明らかに(Fed Tipping Toward December Rate Hike, Minutes Show)」と題した記事を配信。雇用とインフレが悪化しない限り、12月に利上げを開始するサインを点灯したと伝えている。

——10月FOMC議事録を振り返ると、利上げ賛成派と反対派の攻防継続が示唆されていました。とはいえ、9月分と比較し主に以下のポイントから12月利上げへの意思を表明したとも考えられます。

・利上げへの道筋を協議
・多くの参加者が利上げ遅延のリスクに言及。
・経済見通しへの懸念に加え、利上げ後の景気動向に配慮したのかゼロ近辺金利への回帰の必要性を指摘。
・中国への言及は1回でポジティブな記述に、9月FOMC議事録では5回にわたり懸念材料として挙げていた

利上げへのシグナルを発してから株価も上昇トレンドを鮮明にしており、Fedにしてみれば御の字といったところでしょう。パリ同時多発テロ事件が発生し緊張が走ったものの、クリスマス・ラリーに向け加速始めたようです。ブルームバーグによると、11月22日時点での2016年FF金利エコノミスト予想平均は1.25%で、約3回の利上げを織り込む程度。年内8会合中で3回であれば景気を阻害する懸念は低く、米株相場は再び強気に振れてきました。

(カバー写真:Stefan Fussan/Flickr)

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