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イエレン議長、議会証言でハト派色を強めず

by • February 11, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2020

Yellen Cites Risks To Economy, But Stays On Course.

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は10日、世界の金融市場がボラティリティの波に溺れるなか、米下院金融委員会にて半年に1回の議会証言(旧ハンフリー・ホーキンス証言)を行った。イエレンFRB議長の発言は、市場が期待したほどハト派寄りに傾かず。確かに「米国の金融環境は足元、成長を支援するようなものではなくなった」と発言した。もっとも「労働市場は改善に向け良好であり続けている点を忘れないように」と言及。景気後退に対しても「いつでもリスクは存在する」と述べつつ、「世界の金融動向によって経済が鈍化しうると認識しているが、米経済に差し迫る何かについて尚早に結論づけないよう注意深くありたいと思う」とも付け加えた。インフレをめぐっては「抑制する多くの要因は一時的であると認識を維持している」と明言している。

一連のコメントで3月利上げの可能性を後退させたものの、次の一手は利上げであり続けるとの考えを示すものだ。ダウは99.64ドル安(0.62%安)の15914.74ドル、S&P500は0.35p安(0.02%安)の1851.86で引け。弱気相場入りが迫るナスダックのみ14.83p高(0.35%高)の4283.59と上昇した程度で、米10年債利回りはほぼ変わらずの1.706%で取引を終えるなど、市場は歓迎した様子をみせていない。

遂に1月安値をブレークするのか。
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(出所:Stockcharts)

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番であるジョン・ヒルゼンラス記者による署名記事にて「イエレンFRB議長、金利に警戒シグナル発する(Janet Yellen Signals Caution on Rates)」と報道。イエレンFRB議長は株安や中国その他の海外の動向が経済成長を鈍化させる懸念を表明しており、利上げペースの後ろ倒しを明言しなかったものの一連のリスクがFedの方向性を決める可能性があると伝えた。同じ日の早い時間には「Fed、米経済への高まるリスクを認識(Hilsenrath: Fed Sees Risks to U.S. Economy Rising)」にて、経済見通しのリスクをにらみ3月利上げの可能性は低下したと報じている。

ブルームバーグはもっとあからさまに「イエレン、Fedの利上げ先送りを示唆も放棄せず(Yellen Suggests Fed May Delay Rate Rises, Not Abandon Them)」と題した記事を配信した。

イエレンFRB議長が利上げの方向性を維持した背景としては、労働市場が大きいだろう。米1月雇用統計で賃金上昇の傾向が読みとれ、米12月雇用動態調査に勢いが現れた点が思い出される。また、米12月個人消費支出(PCE)デフレーターのコアが上向きつつあるように、ベース効果によりインフレは数字上では改善し始めた。これこそ「経済指標次第」の政策の落とし穴であり、市場が恐れる「2011年の欧州中央銀行(ECB)による過ち」だろう。当時、ギリシャ危機に揺れるなかで原油高による二次的効果を懸念し4月と7月の2回にわたって利上げに踏み切っていた。

モルガン・スタンレーのマシュー・ホーンバック世界金利戦略担当責任者は、議会証言後に「到底ハト派的ではない(Not Nearly Dovish Enough)」と題したレポートで「『ゆるやかな利上げ』が年3〜4回ではなく年1回ないし2回程度であると明確に伝えるか、利上げへの文言を変更しなければ、リスク市場はポジティブ材料不足を受け下落に喘ぐだろう」と指摘していた。市場の失望感を如実に表している。

これまで、連日の議会証言で大きく表現を変えたケースは殆どない。米上院銀行委員会での議会証言で、イエレンFRB議長はハト派トーンを強めてくるかは、微妙な情勢だ。欧州の銀行でキャッシュ・クランチ不安が火を噴いているが、米国に飛び火しないとの認識なのだろうか。

(カバー写真:FRB/Flickr)

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