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Fed、年内利上げは12月の1回だけになる?

by • March 19, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3752

Fed Could Follow The Pattern Of 2013 and 2015 Cases.

歴史は繰り返す——筆者にとって、そんな言葉が思い返されてやまない今日この頃。

何かと申しますと、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定です。量的緩和の縮小(テーパリング)の決定は、2013年5月にときの米連邦準備制度理事会(FRB)議長、バーナンキ氏が言及し3月FOMC議事録で示唆してから”テーパー・タントラム”など金融市場の乱高下などを経て、結局は同年12月に持ち越しとなりました。直近の例では、2015年2月にイエレンFRB議長が2006年以来の利上げ開始ヘ向けた地ならしを行ってから、結局は実施まで同年12月まで待たねばなりませんでした。過去を紐解くと、年内の利上げが1回のみにとどまるシナリオが浮かび上がります。

バーナンキFRB議長時代、共に緩和策を推進していたイエレン氏。
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(出所:Federalreserve/Flickr)

3月FOMCでは、声明文に「世界経済と金融市場の動向はリスクをもたらしうる」との文言を追加しましたよね。行間からは、2016年も同じ轍を歩む気配が読み取れます。

まずは、今年のFOMCスケジュールをご覧下さい。

4月26〜27日
6月14〜15日(経済・金利見通し、イエレン議長の記者会見あり)
7月26〜27日
9月20〜21日(経済・金利見通し、イエレン議長の記者会見あり)
11月1〜2日
12月13〜14日(経済・金利見通し、イエレン議長の記者会見あり)

問題は、経済・金利見通しやイエレンFRB議長の記者会見が行われる会合を中心にビッグ・イベントを控える点にあります。

1)BREXITをめぐる懸念
6月23日には、英国で欧州連合(EU)の残留を決定する国民投票が行われます。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の”世界の地政学的リスク・トップ10”でのスコアはGREXIT発のユーロ圏崩壊の危機の下で、スコットランド独立をめぐる住民投票の通り否決される可能性が残るものの、株式市場をはじめリスク資産が下振れするシナリオは否定できません。6月のFOMCがBREXITをめぐる国民投票前とあって、利上げが可能かは疑問が残ります。

2)G20杭州サミットという壁
7月開催のFOMCが意識されますが、4〜6月期の決算発表に加え夏休みを挟み流動性が低下する局面で、説明責任を果たせない会合で賭けに出るかは微妙でしょう。また、9月4〜5日には20ヵ国・地域(G20)首脳会議が開催されます。7月に利上げ示唆を与えれば、薄い流動性のなかボラティリティが高まりかねない。海外出張には離陸の3時間前から待機するというイエレンFRB議長が、わざわざリスクを招くとは考え難いというわけです。

3)米大統領選という不安定要因
7月開催のFOMCは、もうひとつの波乱要因を含みます。約1週間前に共和党大会が7月18〜21日に予定しており、仮にこの党大会で共和党分裂などといった異常事態が発生すれば金融市場に影響を与えかねません。9月FOMC、11月のFOMCであれば米大統領選をめぐる不透明性が市場を混乱させるリスクをはらみます。ちなみに1970年以降、米大統領選は11回を数えそのうちFedがFF金利誘導目標を引き上げたのは3回のみ。しかも1970年に集中し、直近では2004年と好景気を謳歌した時でした。

もちろん、米大統領選で特に波乱がなければ7月や9月に利上げすることも可能でしょう。ただ3月FOMCの声明文からは、FRB内でオフィスが近く立ち話する機会が多く、クリントン米大統領誕生の暁には財務長官として政権入りが噂されるブレイナードFRB理事の追加利上げ後ろ倒しキャンペーンが効いているように映ります。FRB議長たるもの政治と独立した政策を選択するのでしょうが、イエレンFRB議長その人の性格に加え民主党員であることは念頭に入れておきたい。彼女自身の性格に加え、セントルイス地区連銀のブラード総裁などハト派寄りの参加者が増えている状況では、追加利上げに急ぐようには見えません。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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