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12月FOMCで25bpの利上げは確実、イエレン発言と経済・金利見通しに注目

by • December 12, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2153

Fed Is Ready For December Rate-Hike But Not For Revising Outlooks.

今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)が13~14日に迫ります。筆者が3月から指摘させて頂いたように、やはり利上げは年末の1回のみとなる公算。利上げが確実視されるんか、焦点は米経済・金利見通し(SEP)とイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見で間違いありません。トランプ新政権が政府支出拡大、減税、規制緩和を打ち出す見通しですが、エコノミストは12月FOMCをめぐりどのような予想を展開しているのでしょうか。

▽JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト

FOMCは25bpの利上げに踏み切ると予想すると共に、2017年のFF金利見通しに注目している。経済見通しでは、ドル高を考慮し2017年予想を0.1%引き下げ1.9%としてもおかしくない。2017年のコアPCEは1.8%で維持し、失業率は2017年につき4.6~4.7%とする見通しだ。

FF金利見通しは、2017年に2回で変更なしと見込む。2017年の利上げ見通しが3回の利上げへ増やすには、少なくとも7人の2回利上げ派が3人タカ派へ転じる必要があり、そのハードルは高い。足元で長期金利見通しを積極的に引き下げようとしている事情から、2018~2019年も大幅に修正してこないだろう。

声明文では、失業率の低下やインフレの改善を背景に声明文の文言を調整してくるだろう。経済見通しのリスクに対し「概して均衡(roughly balanced)」の文言を維持すると考えられるが、利上げに合わせ「概して」という文言を外す場合もあり得る。その他、大きな変更を加える可能性は低く、「ごく、ゆるやかな利上げ(only gradual increases)を保証する」との文言を維持する見通しだ。反対票を投じる参加者は、ゼロとなる。

イエレンFRB議長は記者会見で見通し変更には時期尚早との考えを表明する公算。FOMC参加者も米大統領選後に財政政策その他の政策変化に言及を避けており、将来への予見性が高まるまで見通しの変更を避けるのではないか。米大統領や米議会がFedに改革の大ナタを振るうタイミングでようやく、イエレンFRB議長は過去2回と同じく声高に反対を表明してくるだろう。

9月のFOMC、経済・金利見通し。

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(作成:My Big Apple NY)

BNPパリバのポール・モーティマー=リー北米担当主席エコノミスト

FOMCは13~14日の会合にて全会一致で利上げに踏み切るだろうが、財政政策の見通しや経済への影響には不透明性が高く言及しない見通しだ。FOMC声明文では“modest(控えめ)”という表現削られ、“moderate(ゆるやか)”に差し替えるだろう。米11月雇用統計で示されたように失業率が劇的に変化したため、労働市場への認識も上方修正される公算。インフレに関わる文言も、「しかし低水準にとどまる(but remain low)」が削除されるだろう。資産価格が高騰し米10年債利回りは9月FOMCから60bpも急伸するなか、全体的に表現が上向きとなる見通しだ。

BREXITやイタリア国民投票、石油輸出国機構(OPEC)の会合などを終え短期的なリスクイベントを予定せず、経済見通しリスクをめぐっては「概して均衡」から「概して」を外すとみられる。経済見通しは小幅な調整にとどまり、FF金利予想は2016年につき0.625%、2017年につき1.125%、2018年につき1.875%、2019年につき2.625%、長期見通しも2.875%で据え置く見通しだ。仮にインフレ見通しを目標値の2%からオーバーシュートさせるなど大幅に上方修正すれば、金利引き上げが加速すると判断されリスク要因となりうる。

イエレンFRB議長がトランプ次期大統領の就任を控え、経済・金利見通しに変更を加えるとは考えづらい。あくまで、経済に与える影響を予測するのは時期尚早とのメッセージを送るにとどめるだろう。

――2人のエコノミストと見解を踏まえれば、以下のシナリオが想定されます。

1)25bpの利上げ
2)声明文の景況判断、インフレなど上方修正
3)経済見通しリスクから概して均衡の“概して”を削除
4)SEP見通しは微調整
5)FF金利見通しは、ほぼ変更なし
6)イエレンFRB議長はトランプ新政権下での財政政策が与える影響についての言及を回避

いくら米上下院を共和党が制したとはいえ、トランプ氏が選挙中に公約した5年間に5,500億ドルもの規模でインフラ投資を実施できるかは不透明。ドッド・フランク法の撤廃など規制緩和を目指す見通しながら、米上院は60人以上の安定多数ではなくフィリバスターなど民主党から妨害が入ること必至。そもそもインフラ投資や減税を含め、実際値が不透明ですから勇み足で予想を変更することはないでしょう。

(カバー写真:squirrel83/Flickr)

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