Blame It On The Bad Weather, Job Growth Slumps To 10-Month Low.
米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比9.8万人増と、市場予想の18万人増を大幅に下回った。2ヵ月連続で20万の大台に乗せた前月の21.9万人増(23.5万人増から下方修正)と正反対の結果を示し、2016年5月以来の水準へ落ち込んでいる。米3月ADP全国雇用者数や人材派遣会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が発表した3月の採用予定数で明らかになった動きとは正反対となり、予想外に弱含んだ。過去2ヵ月分は、3.8万人の下方修正(1月分が23.8万人増→21.6万人増)となる。1〜3月期平均は17.8万人増で、2016年の平均18.7万人増を下回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比8.9万人増と、市場予想の17.0万人増を下回った。2016年6月以来の高い伸びだった前月分の22.1万人増(22.7万人増から下方修正)に程遠い。民間サービス業が6.1万人増と、前月の12.5万人増(13.2万人増から下方修正)より格段に弱まった。セクター別動向では、前月まで2ヵ月連続で2位だった専門サービスが1位に返り咲いた。前月に1位だった教育/健康は、2位に転落。3位は金融が入り、娯楽がトップ3圏外に押し出された。米大統領令で国防を除く政府職員の採用を凍結するものの、政府は増加に反転。一方で店舗閉鎖が相次いで発表されるなか、小売も雇用の重石となっている。詳細は以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・専門サービス 5.6万人増>前月は3.6万人増、6ヵ月平均は4.8万人増
(そのうち、派遣は1.1万人増>前月0.9万人増、6ヵ月平均は0.9万人増)
・教育/健康 1.6万人増<前月は6.6万人増、6ヵ月平均は3.8万人増
(そのうち、ヘルスケア/社会福祉は1.7万人増<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は3.1万人増)
・金融 0.9万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・娯楽/宿泊 0.9万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は1.9万人増
(そのうち食品サービスは2.2万人増、2016年平均に近い)
・政府 0.9万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は±0人
・輸送/倉庫 0.4万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・その他サービス 0.1万人増<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・卸売 ±0人<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・公益 0.1万人減=前月は0.1万人減、6ヵ月平均は±0人
・情報 0.3万人減>前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.7万人減
・小売 3.0万人減>前月は3.1万人減、6ヵ月平均は0.5万人減
財生産業は前月比2.8万人増と、少なくとも2000年以来の高水準だった2月の9.6万人増(修正値)から鈍化。ただし、7ヵ月連続で増加した。北東部を中心とした積雪が災いし、建設は7ヵ月連続で増加したなかで最小の伸びにとどまる。製造業は4ヵ月連続で増加しつつ、こちらも伸びは鈍化。鉱業のみ原油価格が2015年半ば以来の水準で安定推移するなかで、前月と変わらない伸びを示し5ヵ月連続でプラスだった。
(財生産業の内訳)
・建設 0.6万人増<前月は5.9万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
・製造業 1.1万人増<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・鉱業/伐採 1.1人増(石油・ガス採掘は0.2万人の増加)=前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
NFP、まさかの1桁台に。
平均時給は前月比0.2%上昇の26.14ドル(約2,880円)と、市場予想並びに前月(0.2%から上方修正)に及ばなかった。前年比では2.7%上昇し、2月の2.8%並びに2009年4月以来の力強さを遂げた2016年12月の2.9%を下回った。
週当たりの平均労働時間は34.3時間と下方修正された前月と一致し、市場予想の34.4時間に届かなかった。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.1時間と前月の40.3時間を上回りつつ、約7年ぶりの高水準を遂げた2014年11月の41.1時間が遠い。
失業率は4.5%と、市場予想並びに前月の4.7%を下回った。景気後退以前の2007年5月以来の水準まで改善が進み、3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2017〜19年見通しに並んだ。マーケットが注目する労働参加率は63.0%と、前月にならい原油安が開始する前の2014年3月以来の大台を維持。労働参加率が前月と横ばいだったものの失業率は低下し、労働市場に復帰した人々が就職に成功した様子が伺える。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月で62.4%と、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比32.6万人減と2ヵ月連続で減少し、失業率の低下を促した。雇用者数は47.2万人増と前月に続く2桁増を記録している。おかげで 就業率は60.1%と、前月の60.0%を超え2009年2月以来の高水準を果たした。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億2,551万人と5ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.2%増の2,760万人と、2ヵ月連続で増加している。増減数ではフルタイムが47.6万人増、パートタイムは4.9万人増となる。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が鈍化したものの、前月比で若干ながら7ヵ月連続で伸びた。平均賃金の伸びは変わらず、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.3%上昇し、前月の0.4%以下ながら底堅さをみせた。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全失業率は8.9%と、前月の9.2%を下回り2016年12月に続き金融危機前にあたる2007年12月以来の最低を更新した。不完全失業者は340.2万人と、前月に続き減少。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は5.4%と、前月の5.7から改善が一段と進んだ。
2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は10.3週と前月の10.0週からわずかに延び、2008年11月以来の10週割れに至らなかった。平均失業期間は前月まで2009年7月以来の低水準となる2ヵ月連続で25.1週だったが、3月は25.3週に。27週以上にわたる失業者の割合は23.3%と、前月の23.8%を下回り2009年1月以来の水準まで改善が進んだ。
3)賃金 採点-×
今回は前月比0.2%上昇、前年比は2.7%上昇し、前月の2.8%並びに2009年4月以来の高水準だった前月の2.9%を下回った。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の21.90ドルとヘッドラインに並んだが、前年比は2.3%の上昇と2月の2.5%だけでなく、管管理職を含めた全体の伸びにも届いていない。非管理職・生産労働者の賃金は、2016年10月からの流れを引き継ぎ管理職を合わせた全体を下回ったままだ。
平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。
4)労働参加率 採点-△
労働参加率は63.0%と前月に続き原油安が開始する前の2014年3月以来の大台に乗せたが、金融危機以前の水準である66%台は遠い。 軍人を除く労働人口は0.3%増の1億5,300万人と、5ヵ月連続で増加した。労働参加率が改善した通り、非労働人口は微増の9,421万人と3ヵ月ぶりに増加した。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、結果を受けて「まちまちな雇用統計で、就労者の増加ペース鈍化(Pace of Hiring Slows in Mixed Jobs Report)」と題した記事を配信。ただ失業率の低下を背景に、6月利上げの可能性が高まったとするエコノミストのコメントで結んだ。
バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは、就業者数を振り返り「3月FOMC議事録後に年内2回(6月、9月)の利上げ、並びに年末の再投資終了の発表を予想したが、FOMCメンバーがハト派に触れてもおかしくない」と予想した。
——エコノミスト勢は、米3月雇用統計・NFPの減速をめぐり小売と建設の弱さを挙げ「3月半ばに北東部を直撃した積雪の影響」を敗因に挙げています。ただし、悪天候のため就業できなかった人々は今回16.4万人と、前年同月の18.7万人以下でした。必ずしも悪天候ばかりが要因と考えづらく、また米3月ISM非製造業景況指数などサービス関連センチメントの下振れもあり、1〜2月の大幅増トレンドへ回帰するかは微妙な情勢となってきました。
(カバー写真:Chris & Karen Highland/Flickr)
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