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7月は新築と中古の住宅販売件数が予想外に減少、調整を示唆か

by • August 25, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off2168

New And Existing Home Sales Plunge As Prices Surge.

米7月新築住宅販売件数、米7月中古住宅販売件数、MBA住宅ローン申請件数指数をおさらいしていきます。

米7月新築住宅販売件数は年率57.1万件と、市場予想の61.0万件を下回った。2007年10月以降で2番目の高水準を遂げた前月の63.0万件(61.0万件から上方修正)から9.4%減少。3ヵ月ぶりに60万件を割り込んだ。件数としては、年初来で最低となる。

4大地域別では、前月比にて1地域のみ増加し前月の3地域から減少した。特に北東部が大きく落ち込み23.8%減の3.2万件だったほか、西部は21.3%減の14.4万件と3ヵ月ぶりに減少に反転。住宅市場の規模が最大の南部は4.1%減の32.6万件と、2ヵ月連続で減少している。一方で、中西部のみ6.2%増の6.9万件だった。

在庫総数は前月比1.5%増の27.6万件となり、景気回復サイクルで最高を示した。販売件数が前月から減少した半面、在庫が増加したため、在庫相当は前月の5.2ヵ月から5.8ヵ月へ延びた。

中央価格は31.37万ドルと、前年比では6.3%上昇し単月で過去最高を更新した。なお、過去最高は2016年12月の33.27ドルとなる。

新築住宅販売件数、価格の高止まりが打撃に。

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(作成:My Big Apple NY)

JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受け「過去3ヵ月分が4.6万件上方修正された」と振り返る。しかし、「4~6月期平均の61.3万件を大きく下回る水準で7~9月期入りした」と指摘。今回の落ち込みを受け、住宅投資が成長を押し下げる可能性を挙げた。

――米7月住宅着工件数と照らし合わせると、販売向けの住宅在庫は64.2万件となり米7月新築住宅販売件数はこれを下回りました。在庫が増加する可能性を示します。住宅価格の高止まりが、買い控えを誘っているのでしょう。シニア融資担当者調査でも、住宅需要に陰りが見えていました。米4~6月期家計債務では住宅ローン組成額に占めるサブプライム層が上昇したように、プライム層は価格上昇に加え金利動向も意識し新築住宅の購入をためらっているようです。

▽米7月中古住宅販売件数、価格高止まりを受け2ヵ月連続で減少

全米リアルター協会(NAR)が発表した米7月中古住宅販売件数は年率544万件と、市場予想の555万件を下回った。前月の551万件(552万件から下方修正)からは、1.3%減少。2ヵ月連続での減少は2013年以来で、2016年8月以来の低水準となる。3月につけた2007年2月以来の高水準である570万件から、頭打ちの兆しをみせた。7月の販売件数は前年比では2.1%増となり、2016年8月から続く上昇基調を保つ。

内訳をみると一戸建てが484万件と、前月の488万件を0.8%下回った。複合住宅は4.8%減の60万件で、一戸建てと合わせ2ヵ月連続で減少している。

4大地域別では、2地域で増加し前月の1地域から増加した。今回はIT企業が集まる西部が前月比5.0%増の126万件と、前月から増加に反転。住宅市場の規模が最大で石油生産地で知られる南部は2.2%増の228万件で、こちらも改善した。一方で、北東部は14.5%減の65万件と2ヵ月連続で減少。中西部は5.3%減の125万件と、前月から減少に転じた。

在庫件数は前月比1.0%減の192万件と、2ヵ月連続で減少した。前年比では26ヵ月連続で減少。ただし、1999年以来での最低を更新していた2016年12月は165万件を上回る水準を維持した、販売と在庫の減少率がほぼ変わらず、在庫相当は3ヵ月連続で4.2ヵ月だった。中央価格は前年比で6.2%上昇の25.83万ドル。とはいえ、雇用統計の平均時給の伸び率を大幅に上回る水準を保つ。中央価格の前月比では1.9%下落し、6ヵ月ぶりに下落した。なお前月は26.55万ドルで過去最高だった。販売日数は30日と前月の28日から延びたが、前年同月の36日は下回った。

買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 4%>前月は3%、前年同月は4%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 1%=前月は1%、前年同月は1%
・新規購入者 33%>前月は32%、前年同月は32%
・現金購入者 19%>前月は18%と2009年6月以来で最低、前年同月は21%
・住居用ではなく投資向け 13%、年初来で最低=前月は13%、前年同期は11%

中古住宅販売件数、一戸建てと複合ともにリバウンド。

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(作成:My Big Apple NY)

発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、今回の結果を受け「需要は旺盛だが、在庫不足と値上がり圧力により買い控えを招いている」と振り返る。住宅価格の上昇率は所得の3倍近くに相当するだけに、購入しづらい環境であるのは間違いないようだ。

▽MBA住宅ローン申請件数指数、金利低水準でも新規が弱い

全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、8月18日週に前週比0.5%低下し416.8となった。前週の0.1%の上昇からマイナスに反転。過去5週間で2回目の低下を示す。新規が1.5%低下の230.4と、2週連続でマイナスとなり全体を押し下げている。借換は0.3%上昇の1459.9と3週連続で上昇した。住宅ローン申請件数指数は前年比では20.5%低下し、マイナス基調を維持している。

30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は前週の4.12%で変わらず。前年同期の3.67%を上回ったままだ。15年固定金利型(平均)は3.40%と、前週の3.41%から低下。FHAのローン金利は4.02%と、前週の4.01%をわずかに上回った。

MBA住宅ローン申請件数指数、前年比ではマイナスが続く状況。
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(作成:My Big Apple NY)

申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は48.7%と、前週の47.8%から上昇した。2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。

――7月の新築住宅販売件数や中古住宅販売件数と整合的で、MBA住宅ローン申請件数指数は新規の弱さが足を引っ張りました。金利は前年と比較し上昇していたことも、材料視されたのでしょう。

平均賃金自体が、引き続き伸び悩む点も気掛かりです。足元で雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)上位3セクターは娯楽・宿泊、教育・健康、専門サービスですが、これらの平均時給は直近で鈍化が著しい

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(作成:My Big Apple NY)

労働市場と賃金に問題を抱えれば、値上がり著しい住宅市場を購入する気になれませんよね。住宅市場は調整の兆しを見せ、高級住宅建設大手トール・ブラザーズは決算発表で、NYでの超高価格帯(数千万ドル以上)のコンドミニアム建設から、100万ドル単位へシフトする方向性を打ち出しています。アイダホ州のボイジーのような郊外型都市への参入も決定しました。ペントハウスが1億ドルというNY市内の超高級コンドミニアムで差し押さえが発生したくらいですから、破竹の勢いだった住宅市場は、着実に調整へ向かい始めているようです。

(カバー写真:ben wisely/Flickr)

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