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米9月小売売上高、ガソリンと自動車が牽引し約2年ぶりの高水準

by • October 16, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1403

Retail Sales Rebound Much Stronger Than Expected After The Hurricanes.

米9月小売売上高、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値をおさらいしていきます。

米9月小売売上高は前月比1.6%増と、市場予想の1.7%増を下回った。前月の0.1%減(0.2%減から上方修正)から増加に反転。ハリケーン“ハービー”の反動で大幅増となった米9月新車販売台数が牽引し、自動車の伸びが顕著となった。自動車を除いた場合も1.0%増と3ヵ月連続で増加し、市場予想の0.9%増も上回る好調ぶり。前月の0.5%増(0.2%増から上方修正)を超え、2015年3月以来の高水準となる。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は前月比0.4%増となり、前月の横ばいから増加に転じた。

小売売上高、前年比では小売売上高のコントロールはレンジ内。

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、主要13カテゴリー中で8項目がプラスとなり前月の7項目から増えた。今今回はハリケーンの影響で跳ね上がったガソリン価格の影響で、ガソリン・スタンドが2013年2月以来の水準へ急増している。米9月新車販売台数が加速したため、自動車も大幅増加し2011年9月以来の伸びを遂げた。建築/園芸も、ハリケーン需要が支え7ヵ月ぶりの強い伸びを示した。一方でiPhone 8の発売こそ9月22日だったが、iPhoneXの発売が11月に遅れる事情もあって電化製品、そのほか雑貨、家具、健康などが減少した。項目別の詳細は、以下の通り。

(プラス項目)
・ガソリン・スタンド→5.8%増>前月は4.1%減、6ヵ月平均は0.7%増
・自動車/部品→3.6%増>前月2.1%減、6ヵ月平均は0.6%増
・建築材/園芸→2.1%増>前月は0.6%増、6ヵ月平均は0.8%増

・食品/飲料→0.8%増>前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.2%増
・外食→0.8%増>前月は0.2%増、6ヵ月平均は0.2%増
・非店舗(オンライン含む)→0.5%増>前月は0.4%減、6ヵ月平均は0.6%増

・服飾→0.4%増>前月は0.6%減、6ヵ月平均は0.2%増
・一般小売→0.3%増<前月は0.4%増、6ヵ月平均は0.4%増
(*百貨店は0.4%減<前月は0.2%減、6ヵ月平均は±0%)

(マイナス項目)
・スポーツ用品/書籍/趣味→0.2%>前月は1.1%減、6ヵ月平均は0.7%減
・家具→0.4%増>前月は0.3%増、6ヵ月平均は0.1%増
・ヘルスケア→0.4%減<前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.2%増

・雑貨→0.6%減<前月は0.5%減、6ヵ月平均は0.2%減
・電気製品→1.1%減>前月は1.5%減、6ヵ月平均は0.9%減

小売売上高、主な項目別では以下の通り。

項目別では、引き続き非店舗(オンライン)が目覚ましい。自動車・部品の回復も一目瞭然。。

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(作成:My Big Apple NY)

――ハリケーンの影響でガソリン・スタンドや自動車が上振れしたほか、建築/園芸が全体を押し上げました。その他では新学期入り直前の需要に加えテキサス州の水没の影響で服飾も、需要が拡大した可能性があります。食品/飲料や非店舗も、ハリケーン効果が買いだめで現れたとしても不思議ではありません。問題は、10月も好調を持続できるのか。住宅市場の減速を背景に家具が伸び悩むほか、雑貨やスポーツ衣料品では裁量消費の鈍化の兆しが見て取れます。10月もボラタイルな数字とならないとも限りません。

▽米10月ミシガン大信頼感・速報値、ホリデー商戦前に約13年ぶり高水準

米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は101.1と、市場予想の95を上回った。前月の95.1を超え、2004年1月以来の高水準を遂げている。ハリケーン“ハービー”や“イルマ”が上陸した後の復興需要が意識された可能性があるほか、税制改革へ期待感が反映されたようだ。ホリデー商戦前に、景気の良いニュースが伝わったかたちだ。内訳をみると、現況指数が116.4と市場予想の111.6を超え、2000年11月以来の水準へ上振れした。見通し指数も91.3と市場予想の85.3並びに前月の84.4を上回り、2004年1月以来のレベルへ上昇した

原油先物が50ドル乗せを回復したものの、1年先インフレ見通しは前月の2.7%から2.3%へ大幅鈍化し、2010年10月以来の低水準に並んだ。5~10年先インフレ見通しも前月の2.5%を下回り2.4%となり、5ヵ月ぶりの低い伸びと一致した。

ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は、今回の結果を受け「2018年半ばまで力強く個人消費が拡大する見通しを示唆し、好況は1850年代以降で2番目の長さとなりうる」との見方を示した。経済の見通しが楽観的に傾いた一方で、「家計所得と経済への見通しはともにゆるやかとなり、経済拡大期の後期にみられる兆候」と指摘。足元の経済成長はこれ以上ない状況としながら、「経済減速局面がまもなくやって来るとの見方も広がっている」とのコメントを寄せた。今回、個人消費の見通しを明らかにしていない。なお9月確報値では「2.4%増」から「2.6%増」へ上方修正し、1月時点の2.7%増を視野に入れた。

ミシガン大学消費者信頼感、今回は見通し指数が小幅に上方修正。

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(作成:My Big Apple NY)

――米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は予想外に上振れしました。それだけではありません。購入見通し指数も上振れしています。家庭用耐久財に対し「購入に好機」と回答した割合は83%と少なくとも10年ぶりの高水準を遂げ、自動車に対しては75%とヘッドラインと同じく約13年ぶりのレベルへ急伸しました。住宅に対しても74%が「購入に好機」と回答し、6ヵ月ぶりの強い伸びを遂げています。ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値での回答で個人消費見通しに明るさが増したといって過言ではありません。

一連の結果を受け、JPモルガンは7~9月期GDP予測値を従来の2.5%増から3.0%増へ上方修正しました。バークレイズも従来の2.0%増から2.2%増へ引き上げています。アトランタ地区連銀も従来の2.5%増から2.7%増へ、NY地区連銀も従来の1.5%増から1.7%増へ上方修正しました。米経済はミシガン大学のカーティン教授が振り返るようにこれ以上ないくらい好調に見えますが、ミシガン大学消費者信頼感指数では所得見通しが伸び悩んでいる点は留意しておくべきでしょう。

実質ベースの個人消費が所得を上回り、貯蓄率も低下。
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(作成:My Big Apple NY)

足元、貯蓄率は金融危機以前の水準まで低下しています。米9月雇用統計では平均時給が前年比2.9%増と2009年4月に並ぶ力強さを示したとはいえ、低賃金職の雇用の伸び鈍化が一因とも考えられるほか、生産労働者・非管理職の場合の伸びは前年比2.5%増と足元のレンジにとどまり管理職を含めた全従業員の水準には届いていません。賃上げが加速しつつあると判断するのは、時期尚早と言えるのではないでしょうか。

(カバー写真:Hamza Butt/Flickr)

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