Fed Still Expects 3 Rate-hikes In 2018 With Growth Outlook Revised Up.
12月12日〜13日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通りFF誘導金利目標を1.00~1.25%へ引き上げた。経済・金利見通し(SEP)では税制改革の成立を見込み、2018年の成長率見通しを上方修正している。FF金利見通し・中央値は前回と変わらなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)議長として最後のFOMC後の記者会見登板となる記者会見に臨んだイエレン氏の発言を含め、今回の主な変更点とポイントは、以下の通り。
【景況判断】
前回:「労働市場は強まり、経済活動はハリケーン関連の混乱にも関わらず堅調に拡大した」
↓
今回:「労働市場は強まり続け、経済活動は堅調に拡大し続けた」
※米7~9月期実質国内総生産(GDP)成長率の改定値は、3年ぶりに2期連続の3%成長を達成。ハリケーン関連の混乱を削除。
前回:「ハリケーンの影響で9月は就労者が減少したものの、失業率は一段と低下した」
↓
今回:「ハリケーン関連の変動を平均すれば雇用は堅調で、失業率は一段と低下した」
※11月までの雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は17.4万人増、2016年平均の18.7万人増に近い水準を回復。
前回:「ハリケーンの影響でガソリン価格が上昇し前年比ベースで押し上げたが、食品とエネルギーを除くインフレは軟調なままだ」
↓
今回:「全体並びに食品とエネルギーを除くインフレは今年、そろって低下し2%を割り込んで推移した」
※米11月コアPCEデフレーターは前年比1.4%上昇、2015年11月以来の低水準に並び1.3%だった8月から改善は限定的。
【統治目標の遵守について】
前回:「ハリケーンに関連した損壊と再建は短期的に経済活動に影響を与えるだろうが、中期的には経済の軌道を変更させる可能性は低い」
↓
今回:「ハリケーン関連の損失と再建は足元、経済活動をはじめ雇用、インフレに影響を与えてきたが、米国の経済見通しを変更させるに至っていない」
※ハリケーンより、FOMC参加者の視点は税制改革の内容にシフトか。SEPでは2018年の成長率見通しを上方修正し、イエレンFRB議長は記者会見で税制改革の成立可能性などを指摘。
前回:「その結果、委員会は金融政策をゆるやかに調整し、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場は一段と強まるとの予想を維持する」
↓
今回:「その結果、委員会は金融政策をゆるやかに調整し、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場は力強さを保ち続けるとの予想を維持する」
※イエレンFRB議長は記者会見で「完全雇用に近い」ためと説明、一段と力強くなると想定しづらいことが文言変更の背景だと示唆。なお、11月FOMC議事要旨では「完全雇用あるいはそれを超える水準」と表現し、今回と異なる。
【政策金利について】
FF金利誘導目標を1.25~1.5%で引き上げるとの文言に変更→「実際値並びに見通しの労働市場とインフレの動向を受け、委員会はFF金利誘導目標を1.25~1.5%へ引き上げることを決定した」
前回:「金融政策の姿勢は緩和的であり続けるため、労働市場の動向が一段と強まり、インフレが2%へ持続的に回帰することを支援する」
↓
今回:「金融政策の姿勢は緩和的であり続けるため、力強い労働市場動向や、インフレが2%へ持続的に回帰することを支援する」
※上記、労働市場が完全雇用に近づいたとの認識を反映して「一段」の表現を削除。
【バランスシート政策】
今回:「10月に開始した保有資産正常化プログラムは、展開中である」
※保有資産の圧縮に関しては、“政策実施に関わる決定”で補足説明。12月に償還を迎えた米国債の元本で60億ドルを超えた額、並びに住宅ローン担保証券(MBS)や政府機関債の40億ドルを超えた額を再投資した。2018年1月からは、償還を迎える米国債元本で120億ドルを超える額、同じく償還を迎えたMBSと政府機関債の元本のうち80億ドルを超える額のみを再投資する。6月に公表した“政策正常化原則”に基づくプロセスを維持する方針を示した。
【票決結果】
票決は2人の反対票を確認、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁とシカゴ連銀のエバンス総裁の2名が据え置き票を投じた。2017年は1月、5月、7月、11月は全会一致だったが、年内は3月と6月に1人が据え置きを求め反対票を投じ、12月はミネアポリス連銀総裁にシカゴ連銀総裁が加わった格好である。輪番制である地区連銀総裁の投票メンバーはシカゴ連銀のエバンス総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ダラス連銀のカプラン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁となる。2018年からはサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、リッチモンド連銀に就任予定のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁。なお2016年の全会一致での決定は1月をはじめ6月、12月と8会合のうち3回目のみだった。
【経済・金利見通し】
成長見通しは税制改革の実現を見込み、2018年を中心に上方修正した。2019年、2020年、長期見通しを引き上げつつ、2018年でのピークアウトを予想している。失業率は成長加速と力強さを保つ労働市場を背景に2018年~2020年にわたって強気方向へ修正。特に2018年、2019年で4%割れを予想し、顕著となっている。インフレ見通しはPCEで2018年が小幅に上方修正された程度で、コアPCEは前回の内容で据え置かれた。
FF金利見通しのドット・チャートは、2018年の利上げ回数を3回で据え置いた。2019年と2020年も2回程度、長期見通しは前回9月の水準で維持した。
【イエレンFRB議長、記者会見】
質問:税制改革、労働市場、物価、FRB議長の交代
「税制改革が経済活動に変化を与える可能性がある」
「税制改革は、成長率を数年にわたって押し上げうる」
「個人的に、財政赤字の拡大を懸念」
「完全雇用に近づいた」
「雇用の伸びは、いずれゆるやかなペースとなる見通し」
「FF金利は中立金利水準以下で緩和的、低水準にあるが、いずれ上昇」
「円滑な議長交代を保証するよう、務める」
「インフレは一時的な要因で抑制されている」
質問:金融規制
「(パウエルFRB新議長と)大きな違いを確認していない」
「我々全員(FOMC参加者)、規制の必要条件を調整することが適切という見方で一致」
質問:株高、ビットコインの急伸、フェドコイン(Fedcoin)
「株価は大いに上昇し、ここ数ヵ月で我々は全般的に資産価格が上昇した局面にあると認識している」
「株価上昇の一部は、恐らく税制改革の反映」
「エコノミストは、バリュエーションが適切か理解することに秀でているわけではない。バリュエーションが高いからといって、過大評価を意味しない場合がある」
「低インフレ下での経済成長を謳歌し、過去と比較して世界経済のリスクは均衡だ」
「資産価値の調整があるならば、株式市場や経済にどのような影響を与えるかどうか考慮を重ねている」
「ビットコインは決済システムで小さな役割しか担っていない。安定的な価値を保有せず、法的な機関でもない。極めて投機的な資産であり、Fedは規制監督の役割を担っていない」
質問:マイナス金利とインフレ目標引き上げ
「Fedは多くの選択肢を有し、マイナス金利の導入やインフレ見通しの引き上げといった提案が直ちに必要というわけではない」
「(ただし金利が長きにわたり低水準で推移する場合)金融政策を実行する上で追加措置が有用と認められる可能性がある」
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者は、FOMC後に配信した記事で「2018年は利上げ見通しを3回で維持」と指摘した。2018年を中心に成長率見通し上方修正に税制改革での効果を挙げたものの、長期成長率見通し据え置きを挙げ「税制改革の影響で長きにわたる成長を見込んでいない」と判断。インフレ見通しがほぼ維持されたように、物価への影響も限定的との見方を寄せる。
JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受け「FOMC参加者の2018年FF金利見通し・中央値は前回通りだったものの、年4回の利上げ予想を維持する」との見解を示す。背景として、「自然失業率の水準を4.6%で据え置きながら失業率を3.9%へ引き下げた」点を挙げた。インフレは低水準を保って推移するものの、経済学者で知られるミルトン・フリードマン氏の“シャワー室の愚か者(fool in the shower)”理論を紹介。シャワーの栓を一気に捻れば熱湯に悶絶するが、ゆっくり栓を捻れば適温のお湯が出る、すなわち中央銀行の政策調整は慎重であるべき理論に沿い、Fedはゆるやかに利上げを進めてきた。しかし、フェローリ氏いわく「既にお湯は蛇口からシャワー・ヘッド辺りまで届いている」状況で、インフレ圧力が高まってきたとの考えを示す。同氏は3月利上げを予想するものの、仮に利上げを見送るならば「ゆるやかな利上げ路線の変更」を迫られ、引き上げペースを加速せざるを得なくなるという。
――2018年のFF金利見通し、中央値では前回と変わらなかったものの平均値では2.125%→2.016%へ下方修正されました。可能性として、クオールズFRB副議長の見方が10月に退任したフィッシャーFRB副議長よりハト派だったことが考えられます。16人のFOMC投票者のうち、新たに加わった参加者はクオールズ氏のみ。12月4日にリッチモンド連銀の新総裁にトーマス・バーキン氏が指名されたものの就任は2018年1月1日で、バーキン氏の見方はまだ反映されていません。CNBCが市場関係者を対象に行ったFedサーベイでは、クオールズ氏をややタカ派寄りと解釈していたものの、クオールズ氏は成長重視型で利上げに積極的でない可能性を残します。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
Comments
年末商戦2017 : 米国消費の牽引役、ミレニアル世代の人気商品は? Next Post:
米11月CPIのコアは前年比で鈍化、PPIが加速でも