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米10~12月期シニア融資担当者調査、税制改革が視野も企業の融資需要伸びず

by • March 6, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1365

Corporate Borrowing Demand Sluggish Though Tax Reform Eyed.

米連邦準備制度理事会(FRB)が2月6日、2017年10~12月期のシニア融資担当者調査を発表した。今回の対象は米国の国内銀行71行と、外銀の23行(前回は72行、23行)。調査期間中に米連邦公開市場委員会(FOMC)が2015年12月、2016年12月、2017年3月、同年6月、同年12月と5回目の利上げを行うなか、融資基準は商工ローン、商業不動産で前回の2017年7~9月期に比べ、やや引締めの方向を示した。住宅ローンは、ほぼ変わらず。消費者向けはまちまちで、クレジットカードは「幾分引き締め」、自動車ローンは「幾分緩和」が優勢だった。

借入需要は、商工ローンや商業不動産などで前回より幾分強まりを示した。消費者向けでは金利上昇が一因となったためか、クレジットカードと自動車ローンなどで需要が小幅に低下した。以下は、カテゴリー別の詳細。回答した銀行数によって、項目ごとで回答総数 は変化する。以下は、分野別の動向を表す。

商工ローン向け融資基準は、前回と比較し「幾分緩和」が増加した。需要は、大企業で「幾分力強い」、中小企業で「非常に力強い」との回答が増加した。以下は、全て米国内の大手銀向けの調査結果となる。

【商工ローン、融資基準】

1)大企業向け商業・産業向け融資基準(年間売上5,000万ドル以上)
・大幅に引き締め 1行 1.4%>前回は0行 0%
・幾分引き締め 3行 4.3%>前回は0行 0%
・概して変わらず 55行 78.6%<前回は65行 91.5%
・幾分緩和 11行 15.7%>前回は6行 8.5%
・大幅に緩和  0行 0%=前回は0行 0%

2)中小企業向け商業・産業向け融資基準(年間売上5,000万ドル以下)
・大幅に引き締め 1行 1.5%>前回は0行 0%
・幾分引き締め 2行 3.0%>前回は0行 0%
・概して変わらず 51行 91.0%<前回は 62行 91.2%
・幾分緩和 3行 4.5%<前回は6行 8.8%
・大幅に緩和  0行 0%=前回は0行 0%

【商工ローン、借入需要】

1)商業・産業向け借入需要(年間売上5,000万ドル以上)
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 13行 18.6%>前回は10行 14.1%
・概して変わらず 46行 65.7%>前回は43行 60.6%
・幾分弱い 11行 15.7%<前回は18行 25.4%
・非常に弱い 0行 0%<前回は1行 1.3%

2)商業・産業向け借入需要(年間売上5,000万ドル以下)
・非常に力強い 0行 0%<前回は1行 1.5%
・幾分力強い 12行 17.9%>前回は9行 13.2%
・概して変わらず 47行 70.1%>前回は46行 67.6%
・幾分弱い 11行 15.7%<15行 12行 17.6%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

商業・産業部門への融資動向、融資基準は緩和寄りへシフトしたが需要は低迷継続。

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(作成:My Big Apple NY)

商業不動産の融資基準は、建設・土地開発と非住宅は、「幾分引き締め」の回答が増え「幾分緩和」が減少した。非住宅では、概して変わらず。複合住宅では、逆に「幾分緩和」が増えた需要動向は建設・開発で後退したが、非住宅と複合住宅でやや「幾分強い」が増えた

【商業不動産、融資基準】

1)商業不動産の融資基準(建設、土地開発用)
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分引き締め 10行 14.7%>前回は 5行 7.1%
・概して変わらず 56行 82.4%<前回は62行 88.6%
・幾分緩和 2行 2.9%<前回は3行 4.3%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

2)商業不動産の融資基準(非住宅)
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分引き締め 4行 5.7%=前回は4行 5.6%
・概して変わらず 63行 90.0%>前回は66行 93.0%
・幾分緩和 3行 4.3%=前回は3行 4.3%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

3)商業不動産の融資基準(複合住宅)
・大幅に引き締め 0行 0%<前回は1行 1.4%
・幾分引き締め 4行 5.7%<前回は16行 22.2%
・概して変わらず 63行 90.0%>前回は54行 75.0%
・幾分緩和 3行 4.3%>前回は1行 1.4%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

商業不動産の融資基準も、緩和寄りへシフト。

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(作成:My Big Apple NY)

【商業不動産、借入需要】

1)商業不動産の借入需要(建設、土地開発用)
・非常に力強い 0行 0%=0行 0%
・幾分力強い 7行 10.3%<前回は10行 14.3%
・概して変わらず 48行 70.6%>前回は43行 61.4%
・幾分弱い 13行 19.1%<前回は17行 24.3%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

2)商業不動産の借入需要(非住宅)
・非常に力強い 1行 1.4%>前回は0行 0%
・幾分力強い 9行 12.9%>前回7行 9.9%
・概して変わらず 52行 74.3%<前回は53行 74.6%
・幾分弱い 8行 11.4%<前回は11行 15.5%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

3)商業不動産の借入需要(複合住宅)
・非常に力強い 0行 0%<前回は0行 0%
・幾分力強い 10行 14.5%>前回は5行 6.9%
・概して変わらず 45行 65.2%>前回は49行 68.1%
・幾分弱い 14行 20.3%>前回は18行 25.0%%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

家計部門での融資基準は、住宅ローンでは全体的に前回調査時点と比較して「幾分引き締め」の回答がやや目立った。住宅ローンの需要は、全般的にまちまち。高額ローンをめぐり、税制改革で州・地方政府の固定資産など連邦税で控除できる枠組みが外される懸念が生じためか、需要がやや後退した。NY地区連銀が発表する家計債務動向、並びに大手銀の住宅ローン新規組成額の伸び悩みと幾分整合的である。

商業不動産は基準緩和でも、需要は低下。

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(作成:My Big Apple NY)

【住宅ローン、融資基準】

1)政府支援機関(ファニーメイ、フレディマックなど)の条件を満たす住宅ローンへの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分引き締め 1行 1.7%>前回は0行 0%
・概して変わらず 53行 88.3%<前回は56行 88.9%
・幾分緩和 6行 10%=前回は6行 9.5%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

2)政府、連邦住宅局(FHA)、退役軍人省の政府機関によって保証される住宅ローンへの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回0行 0%
・幾分引き締め 0行 0%<前回は0行 0%%
・概して変わらず 58行 96.7%>前回は55行 93.2%
・幾分緩和 2行 3.3%<前回は3行 5.1%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

3)消費者金融保護局(CFPB)の適格住宅ローンであるQM、非ジャンボ・ローン(41万7000ドル以上の高額ローンで、GSEの買い取り上限外)、GSE非適格住宅ローンへの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分引き締め 2行 3.4%>前回は0行 0%
・概して変わらず 54行 93.1%<前回58行 95.1%
・幾分緩和 2行 3.4%<前回は3行 4.9%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

4)QMで、ジャンボ・ローンの住宅ローンへの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分引き締め 2行 3.3%>前回は1行 1.5%
・概して変わらず 59行 90.8%<前回は59行 90.8%
・幾分緩和 3行 4.9%>前回は5行 7.7%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

5)非QMでジャンボ・ローンに対する住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%
・幾分力強い 3行 6.2%
・概して変わらず 41行 85.4%
・幾分弱い 4行 8.3%
・非常に弱い 0行 0%

6)非QMで非ジャンボ・ローンに対する住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%
・幾分力強い 0行 0%
・概して変わらず 47行 97.9%
・幾分弱い 1行 2.1%
・非常に弱い 0行 0%

【住宅ローン、借入需要】

1)政府支援機関(ファニーメイ、フレディマックなど、GSE)の条件を満たす住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 1行 1.7%>前回は0行 0%
・幾分力強い 3行 5.2%<前回は7行 11.1%
・概して変わらず 41行 70.7%>前回は40行 63.5%
・幾分弱い 12行 20.7%<前回は15行 23.8%
・非常に弱い 1行 1.7%=前回は1行 1.6%

2)政府、連邦住宅局(FHA)、退役軍人省の政府機関によって保証される住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 1行 1.7%<前回は4行 6.7%
・概して変わらず 47行 78.3%>45行 75.0%
・幾分弱い 12行 20%>前回は10行 16.7%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

3)QMで非ジャンボ・ローン(41万7000ドル以上の高額ローンで、GSEの買い取り上限外)、GSE非適格住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 3行 5.2%>前回は2行 3.3%
・概して変わらず 42行 72.4%<前回は47行 77.0%
・幾分弱い 13行 22.4%>12行 19.7%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

4)QMでジャンボ・ローンの住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 6行 9.8%<前回は5行 7.8%
・概して変わらず 42行 68.9%=前回は45行 70.3%
・幾分弱い 12行 19.7%>前回は13行 20.3%
・非常に弱い 1行 1.6%>前回は0行 0%

5)非QMでジャンボ・ローンに対する住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 2行 4.1%<前回は3行 5.4%
・概して変わらず 38行 77.6%<前回は42行 75.0%
・幾分弱い 1行 2.0%<前回は11行 19.6%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

6)非QMで非ジャンボ・ローンに対する住宅ローンへの借入需要
・非常に力強い 1行 2.1%>前回は0行 0%
・幾分力強い 1行 2.1%<前回は3行 5.4%
・概して変わらず 38行 79.2%<前回は44行 78.6%
・幾分弱い 8行 16.7%<前回は9行 16.1%
・非常に弱い 0行 0%<前回は0行 0%

7)サブプライム向け住宅ローンへの借入需要→今回は3行しか報告せず、今回分を明記せず。
・非常に力強い 前回は0行 0%
・幾分力強い 前回は1行 25%
・概して変わらず 前回は3行 75.0%
・幾分弱い 前回は0行 0%
・非常に弱い 前回は0行 0%

個人向けの融資基準は、個人全体やや「幾分緩和した」が優勢となった。ただし、クレジットカードは、やや「幾分引き締め」傾いている。自動車ローンは「幾分緩和した」方向へシフトした。融資の需要は前回から改善、クレジットカードや自動車ローンなどで小幅ながら弱まりを示した。利上げに伴うクレジットカードや自動車ローン金利の上昇が一因である可能性がある。

【個人向け、融資基準】

1)クレジットカードの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%<前回1行 1.8%
・幾分引き締め 4行 7.7%>前回は8行 14.5%
・概して変わらず 45行 86.5%>前回は42行 76.4%
・幾分緩和 3行 5.8%<前回は4行 7.3%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

2)自動車ローンの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は 0行 0%
・幾分引き締め 5行 8.2%<前回は6行 9.8%
・概して変わらず 54行 88.5%<前回は55行 90.2%
・幾分緩和 2行 3.3%>前回は0行 0%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

3)個人向けの融資基準
・大幅に引き締め 0行 0%=前回は 0行 0%
・幾分引き締め 2行 3.2%<前回は10行 15.6%
・概して変わらず 58行 93.5%>前回は53行 82.8%
・幾分緩和 2行 3.2%>前回は1行 1.6%
・大幅に緩和 0行 0%=前回は0行 0%

個人向け融資基準は、引き締め寄りへ傾く

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(作成:My Big Apple NY)

【個人向け、借入需要】

1)クレジットカードの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 5行 10.4%=前回は5行 9.3%
・概して変わらず 38行 79.2%<前回は44行 81.5%
・幾分弱い 5行 10.4%>前回4行 7.4%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

2)自動車ローンの借入需要
・非常に力強い 0行 0%=前回は0行 0%
・幾分力強い 3行 5.1%<前回は9行 15.0%
・概して変わらず 45行 75.0%>前回は45行 75.0%
・幾分弱い 8行 13.6%>前回は6行 10%
・非常に弱い 0行 0%=前回は0行 0%

3)個人向けの借入需要(クレジットカード、自動車ローン除く)
・非常に力強い 0行 0%<前回は2行 2.9%
・幾分力強い 3行 4.9%<前回は4行 6.3%
・概して変わらず 55行 90.2%=前回は55行 87.3%
・幾分弱い 1行 1.6%<前回は4行 6.3%
・非常に弱い 0行 0%=前回は 0行 0%

クレジットカード、自動車ともに税制改革法案成立を前に需要は回復せず。

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(作成:My Big Apple NY)

――米10~12月期GDP改定値で無形資産を除く企業の設備投資が堅調だったように、融資基準は緩和寄りが優勢でした。とはいえ、商業・産業向け需要は税制改革が取り沙汰されているにもかかわらず、需要にそれほどの力強さはみられません。GDPでも構築物投資が芳しくなく、ハリケーン後の修復など機器投資以外で投資が拡大するか注目です。

個人の借入需要は改善しており、安定的な雇用を支えに引き続き自動車ローンやクレジットカードを通じた支出が拡大する公算。銀行の融資姿勢は消費者以外で緩和寄りだったため、2004年以来となる3期連続での3%成長へ期待が高まります。

(カバー写真:Richard BURGER/Flickr)

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