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米2月雇用統計・NFPは、季節外れの打ち上げ花火のように

by • March 9, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2510

You Thought Days of Blockbuster Jobs Numbers Were Over.. And  That Was Wrong.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比31.3万人増と、市場予想の20万人増を上回った。税制改革が実現するなか、平年を上回る気温も好材料となったようで、前月の23.9万人増(20.0万人増から上方修正)も超え、2015年10月以来の水準へ大幅に増加している。過去2ヵ月分は2017年12月分が1.5万人の上方修正(16.0万人増→17.5万人増)されたため、合計5.4万人の上方修正となった。2017年12月~2018年2月の平均は24.2万人増で、2017年の平均値16.9万人増より格段に力強い伸びを示す。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比28.7万人増と、市場予想の19.5万人増を上回った。前月の23.8万人増(19.6万人増から上方修正)を超え、2016年6月以来の高水準を遂げている。民間サービス業も18.7万人増と、前月の16.6万人増(13.9万人増から上方修正)を上回り、4ヵ月ぶりの高水準だった。

セクター別動向では、上位常連がトップ3に異変が生じ、小売が首位に立った。同じく首位は前月に3位だった専門サービスが入ったものの、3位には金融が躍り出て、これまでトップ3を維持していた教育・健康と娯楽・宿泊が圏外に滑り落ちた。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・小売 5.0万人増>前月は1.5万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・専門サービス 5.0万人増>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち、派遣は2.7万人増>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.9万人増)
・金融 2.8万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

・政府 2.6万人増>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人増
・教育・健康 2.3万人増<前月は6.3万人増、6ヵ月平均は3.2万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は2.9万人増<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は3.5万人増)
・娯楽・宿泊 1.6万人増<前月は3.9万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
(そのうち食品サービスは1.2万人増>過去12ヵ月平均は2.1万人増)

・輸送・倉庫 1.5万人増>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・その他サービス 1.0万人増>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・卸売 0.6万人増<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

・公益 0.1万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は±0人
・情報 1.2万人減>前月は1.6万人減、6ヵ月平均は0.7万人減

財生産業は前月比10.0万人増と、前月の7.2万人増(修正値)を上回った。7ヵ月連続で増加しただけでなく、1984年6月以来の力強さを示した。建設、製造業がそれぞれ7ヵ月連続で増加。原油価格が約3年ぶりに60ドル台の大台に乗せるなか、鉱業も4ヵ月連続で増加した。

(財生産業の内訳)

・建設 6.1万人増>前月は4.0万人増、6ヵ月平均は3.6万人増
・製造業 3.1万人増>前月は2.5万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
・鉱業・伐採 0.8万人増(石油・ガス採掘は8,600人の増加)>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

NFP、2018年はまさかのブロックバスター!

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.1%上昇の26.75ドル(約2,840円)と、市場予想の0.2%に届かず。前月の0.3%も下回った。前年比でも2.6%の上昇にとどまり、4ヵ月ぶりの高い伸びだった1月の2.8%の上昇(2.9%から下方修正)は、悪天候による特殊要因だったとみられる。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想並びに前月の34.4時間(34.3時間から上方修正)を超えた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.6時間と、前月の40.3時間から延び2015年12月以来の高水準となる。

失業率は4.1%と市場予想と一致し、2017年10月~18年1月に続き金融危機後以来で最低だっただけでなく、2000年12月以来の4%割れを視野に入れている。2017年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しは、上回ったままだ。マーケットが注目する労働参加率は2017年10月~18年1月の62.7%から63.0%へ上昇、4ヵ月ぶりの高水準となる。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比2.2万人増加した。就労者数は78.5万人増と、4ヵ月連続で増加している。就業者数の伸びが失業者を大きく上回った結果、就業率は2017年11~12月、2018年1月の60.1%から60.3%へ上昇、2009年1月以降で2番目の高水準となる。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.6%増の1億2,775万人と、2ヵ月連続で増加した。パートタイムは1.0%増の2,75万人と、3ヵ月連続で増加。増減数では前月に続きフルタイムが72.9万人増、パートタイムは27.7万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加を続けただけでなく、平均労働時間も延びたため、前月比で0.5%上昇しプラス圏を回復した。平均時給が前月の伸びを小幅に下回った程度だった結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.7%上昇、5ヵ月ぶりにマイナスへ落ち込んだ前月から改善した。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は前月に続き8.2%だった。2017年10~12月につけた2007年3月以来の低水準となる8.0%を上回ったままだ。不完全失業者は516.0万人と、前月の498.9万人から増加している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は2017年12月~18年1月に続き5.1%と、年初来で最低だった2017年10~11月の5.0%を上回った。

2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は9.3週と前月の9.4週以下だったが、2008年6月以来の低水準となった2017年12月の9.1週には届かなかった。平均失業期間は22.9週と、前月の24.1週から大幅に短縮し2009年5月以来で最短を記録。27週以上にわたる失業者の割合は20.7%と、前月の21.5%を下回り2008年8月以来の低水準を示した。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.1%の上昇と前月の0.3%から鈍化し、前年比も2.6%の上昇と1月の2.8%以下に。一方で、生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の22.40ドルと全従業員の伸びを上回った。ただし前年比は2.5%の上昇にとどまり、全従業員の2.6%に届かず。非管理職・生産労働者の賃金の伸びは、管理職を合わせた全体を下回ったままだ。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は63.0%と、2017年10~12月、2018年1月までの62.7%から上昇し2014年3月以降で2番目の高水準だった。しかし、金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.5%増の1億6,192万人と、3ヵ月連続で増加。非労働人口は0.7%減の9,501万人と5ヵ月ぶりに減少した。

BNPパリバは、結果を受け「素晴らしい内容だった」と評価し、「ゴルディロックス経済が続くとの観測を裏付けた」と分析する。労働参加率は62.7%→63.0%へ改善したが、「0.3%ポイント上昇していなければ、失業率はNFPの力強い伸びを受けて3.7%へ低下していた」といい、経済の良好ぶりを確認したと言えよう。同社は、2017年末までに「失業率は年末に3.6%へ低下し、労働市場の逼迫を背景に平均時給は前年比で3.1%上昇する」と見込む。

バークレイズは結果を受けて、「失業率は今後、Fedの見通しを下回って来る」と予想。FOMCの利上げ見通しを年4回で据え置いた

――平均時給は予想以下だったものの、週当たり労働時間は1月分が上方修正され、2月は345時間と改善していました。労働者の賃金は、数字以上に好調で消費支出を押し上げる期待が高まります。シカゴ・マーカンタイル取引所が算出する2018年末の利上げ織り込み度は、年3回が39.5%とトップを維持し、次いで年4回が27.3%、年2回が21.4%となります。1ヵ月前に年2回が最高で34.8%、年3回は30.6%、年4回などわずか12.4%だったとは、とても考えられませんね。税制改革法案の成立で本当にアニマル・スピリットが目覚めたような雇用統計が平均時給の加速をもたらせば、年4回が視野に入ります。

(カバー写真:Javier Rapoport/Flickr)

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