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米3月雇用統計・NFPは悪天候が響き大幅減速も、賃金は堅調

by • April 7, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2637

Jobs Growth Slowed In March, Most Likely Due To Bad Weather.

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比10.3万人増となり、市場予想の18.5万人増を大きく下回った。2015年10月以来の水準へ大幅に増加した前月の32.6万人増(31.3万人増から上方修正)に遠く及ばず。ハリケーン”ハービー”の影響で大幅減速した2017年9月以来の低水準を示す。3月は北東部の積雪など悪天候が影響した公算が大きい。過去2ヵ月分は1月分が6.3万人の下方修正(23.9万人増→17.6万人増)されたため、合計5.0万人の下方修正となった。2017年12月~2018年2月の平均は20.2万人増で、2017年の平均値16.9万人増より格段に力強い伸びを示す。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比10.2万人増と、市場予想の19.0万人増を下回った。前月の32.0万人増(28.7万人増から下方修正)から下振れし、6ヵ月ぶりの水準へ鈍化民間サービス業も8.7万人増と、前月の21.4万人増(18.7万人増から上方修正)にかすりもせず、6ヵ月ぶりに10万人を割り込んだ。

セクター別動向では、前月のトップ3から変化が生じた。前月は1位が小売、2位が専門サービス、3位が金融だったものの、今回は専門サービスが1位、トップ3に教育・健康が返り咲き、新たに卸売が入っている。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 3.4万人増<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は3.2万人増
(そのうち、派遣は0.1万人減<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は0.7万人増)
・教育・健康 2.5万人増<前月は2.8万人増、6ヵ月平均は3.1万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.4万人増<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・卸売 1.1万人増>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

・輸送・倉庫 1.1万人増>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・娯楽・宿泊 1.0万人増<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
(そのうち食品サービスは±0万人>過去12ヵ月平均は1.9万人増)
・公益 0.4万人増>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.1万人増

・情報 0.2万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.4万人減
・金融 0.2万人増<前月は3.0万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・政府 0.1万人増<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.3万人減

・その他サービス 0.1万人減<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・小売 0.4万人減<前月は4.7万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

財生産業は前月比1.5万人増と、1984年6月以来の力強さを示した前月の10.6万人増を下回った。ただ8ヵ月連続で増加している。北東部を中心とした悪天候が災いし、建設が8ヵ月ぶりに減少、財生産業を押し下げた。製造業は8ヵ月連続で増加。原油価格が約3年ぶりに60ドル台の大台に乗せるなか、鉱業も5ヵ月連続で増加した。

(財生産業の内訳)

・製造業 2.2万人増<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は2.8万人増
・鉱業・伐採 0.8万人増(石油・ガス採掘は2,000人の増加)<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・建設 1.5万人減<前月は6.5万人増、6ヵ月平均は3.0万人増

NFP、3月は大幅鈍化も悪天候が影響した可能性大。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の26.82ドル(約2,860円)と、市場予想と一致した。前月の0.1%を超えている。前年比では2.7%上昇、2月の2.6%を上回った。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想並びに前月と変わらず。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.5時間と、2015年12月以来の高水準だった前月の40.6時間から短縮した。

失業率は4.1%と市場予想の4.0%を上回りつつ、2017年10月~18年2月に続き金融危機後以来で最低だっただけでなく、2000年12月以来の4%割れを視野に入れている。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しも、上回った。労働参加率は、前月の63.0%から62.9%へ低下した。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比12.1万人減少した。就労者数も3.7万人減と、5ヵ月ぶりに減少している。失業者数の減少が就労者数を上回ったほか、労働参加率も低下したため、失業率は2017年10月以来の4.1%を維持した格好だ。就業率は2017年11月~2018年1月の60.1%を経て、2月と同じく60.4%と2009年1月以降で2番目の高水準となる。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.2%減の1億2,743万人と、3ヵ月ぶりに減少した。パートタイムは1.1%増の2,856万人と、4ヵ月連続で増加。増減数では前月に続きフルタイムが31.1万人減、パートタイムは31.0万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数の伸びが鈍化したものの、平均労働時間が維持されたため、前月比で0.1%上昇し2ヵ月連続でプラスを保った。平均時給が前月の伸びを上回った結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、2ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は2ヵ月連続で8.2%を経て、8.0%と2007年3月以来の低水準へ戻した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は501.9万人と、前月の516.0万人から減少している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は2017年12月~18年2月までの5.1%を経て、4.9%と2008年7~9月期以来の低水準を示した。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.1週と、前月の9.3週から短縮し2008年6月以来の低水準へ戻した。平均失業期間は24.1週と、2009年5月以来で最短を記録した前月の22.9週から延びた。27週以上にわたる失業者の割合は20.3%と、前月の20.7%を下回り2008年8月以来の20%割れを視野に入れた。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.3%の上昇と前月の0.1%から改善、前年比も2.7%の上昇と2月の2.6%を超えた。一方で、生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の22.42ドルと全従業員の伸びを下回った。前年比も2.4%の上昇にとどまり、全従業員の2.6%に届かず。非管理職・生産労働者の賃金の伸びは、管理職を合わせた全体に届かないトレンドが続く。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.9%と、2014年3月以降で2番目の高水準だった前月の63.0%から低下した。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.1%減の1億6,176万人と、4ヵ月ぶりに減少。非労働人口は0.3%増の9,5036万人と前月から増加に転じた。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米国担当主席エコノミストは、結果を受けて「建設が減少に転じたほか、小売も小幅減に転じたように悪天候が影響したと考えられる一方で、週当たり平均労働時間は34.5時間と前月と変わらなかった」と振り返る。就労者数は下押しがみられたものの、「1~3月期のNFPは力強さを示した」と指摘。平均賃金の伸びも着実に上向き、労働時間も堅調で「労働所得は前期比年率5.1%増となり、個人消費が1~3月期の鈍化から回復する見通し」だ。以上の観点から、米1~3月期実質GDP成長率は前期比年率2.0%増を維持し、FOMCも6月に追加利上げを行うと予想する。

――米3月雇用統計では悪天候でNFPが鈍化し、高賃金の建設が減少した割に平均時給がしっかりで、引き続き米国の経済ファンダメンタルズは良好と言えそうです。その半面、パートタイムの増加が気掛かりで、4ヵ月連続で増加していました。一因として、本業と副業ともにパートタイムの就労者が増加したことが挙げられます。

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(作成:My Big Apple NY)

人材派遣大手で人員削減予定数を発表しているチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのチャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、足元で企業が派遣労働者に頼りつつある可能性を指摘していました。人材不足のなかで、コストを踏まえフルタイムではなく、週当たり平均労働時間が35時間以下のパートタイムで試すシナリオも考えられる。そうなれば、賃金の伸びを抑えかねません。

(カバー写真:Metropolitan Transportation Authority of the State of New York/Flickr)

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