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米4月雇用統計、NFPと平均時給は予想以下も失業率に過熱のサイン

by • May 5, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off3422

April Jobs Growth Less Than Estimated, But Unemployment Rate Suggests More Rate Hikes.

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比16.4万人増となり、市場予想の19.1万人増を下回った。ハリケーン”ハービー”の影響で大幅減速した2017年9月以来の低水準を示した前月の13.5万人増(10.3万人増から上方修正)からは、改善している。過去2ヵ月分は2月分が0.2万人の下方修正(32.6万人増→32.4万人増)だったため、合計3.0万人の上方修正となった。2~4月の3ヵ月平均は20.8万人増で、2017年の平均値16.9万人増を上回ったままだ。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比16.8万人増と、市場予想の19.0万人増を下回った。ただし、6ヵ月ぶりの水準へ鈍化した前月の13.5万人増(10.2万人増から上方修正)を超えている。民間サービス業も11.9万人増と、前月の11.5万人増(8.7万人増から上方修正)を上回った

セクター別動向では、2017年の上位御三家が並んだ。3月は専門サービスが1位、2位が教育・健康、3位に卸売が入ったが、今回は上位こそ変わなかったものの3位に娯楽・宿泊が返り咲いている。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 5.4万人増>前月は3.9万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち、派遣は1.0万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.6万人増)
・教育・健康 3.1万人増>前月は2.4万人増、6ヵ月平均は3.4万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は2.9万人増<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・娯楽・宿泊 1.8万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は1.9万人増
(そのうち食品サービスは1.5万人増>過去12ヵ月平均は1.9万人増)

・その他サービス 1.4万人増>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・情報 0.7万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.2万人減
・金融 0.2万人増<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.9万人増

・小売 0.2万人増<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・公益 0.1万人増>前月は±0万人、6ヵ月平均は±0万人
・輸送・倉庫 ±0万人<前月は1.6万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

・政府 0.4万人減<前月は±0万人、6ヵ月平均は0.2万人減
・卸売 1.0万人減<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.5万人増

財生産業は前月比4.9万人増と、前月の2.0万人増(修正値)を上回り、9ヵ月連続で増加した。北東部での悪天候を受けて3月に減少した建設が改善。製造業は9ヵ月連続で増加し、原油価格が2014年末以来の70ドル台が視野に入るなか、鉱業も6ヵ月連続で増加した。

(財生産業の内訳)

・建設 1.7万人増>前月は1.0万人減、6ヵ月平均は3.1万人増
・製造業 2.4万人増>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は2.8万人増
・鉱業・伐採 0.8万人増(石油・ガス採掘は1,200人の増加)=前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.7万人増

NFP、4月は悪天候を受け減速した3月から小幅改善。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.1%上昇の26.84ドル(約2,700円)と、市場予想の0.2%に届かなかった。前月の0.2%(0.3%から下方修正)にも及ばず。前年比では2.6%上昇し、前月(2.7%から下方修正)を含め3ヵ月連続で同水準だった。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想並びに3ヵ月連続で変わらず。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.7時間と、前月の40.5時間を超え2014年12月以来に並び少なくとも2006年7月以降で最高となる。

失業率は2017年10月~18年3月まで4.1%で推移したが、今回は3.9%と市場予想の4.0%を下回り、2000年12月以来の4%割れを示した。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しは、辛うじて上回った。労働参加率は前月の62.9%を下回り、62.8%と3ヵ月ぶりの低水準となる。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比23.9万人減少した。就労者数は0.3万人増加しており、失業者数の大幅減、就労者数の小幅ながらの増加、そして労働参加率の低下が重なり、失業率は2000年末以来の4%割れを遂げた格好だ。就業率は逆に60.3%と、2009年1月以降で2番目の高水準となる2~3月の60.4%を下回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.3%増の1億2,775万人と、前月から増加に転じた。パートタイムは1.3%減の2,751万人と、5ヵ月ぶりに減少。増減数ではフルタイムが31.9万人増と前月の減少を打ち消し、パートタイムは35.0万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数の伸びが前月を上回り、平均労働時間も維持されたため、前月比で0.1%上昇し3ヵ月連続でプラスを保った。平均時給が前月の伸びを下回ったとはいえ、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.3%上昇、3ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は7.8%と、2001年7月以来の低水準だった。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は498.5万人と、前月の501.9万人から減少している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は2017年12月~18年2月までの5.1%を経て、4.7%と金融危機前の水準を回復した。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.8週と、2008年6月以来の低水準だった前月の9.1週から延びた。平均失業期間は23.1週と3月の24.1週を下回り、2009年5月以来で最短を記録した2月の22.9週に接近。27週以上にわたる失業者の割合は20.0%と、前月の20.3%を下回り2008年8月以来の20%割れを視野に入れた。

3)賃金 採点-×
今回は前月比0.1%の上昇と前月の0.2%以下に、前年比も2.6%の3ヵ月連続で変わらず。一方で、生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の22.51ドルと全従業員の伸びを上回った。前年比は2.6%上昇し、全従業員の水準に並んだ。非管理職・生産労働者の賃金の伸びは管理職を合わせた全体を下回る水準を続けてきたが、今回から改善してくるか注目だ。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比で漸く生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体と一致。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.8%と、2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%以下が続く。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.1%減の1億6,153万人と、2ヵ月連続で減少。非労働人口は0.4%増の9,575万人と2ヵ月連続で増加した。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米国担当主席エコノミストは、結果を受けて「NFPの伸び鈍化は持続的な雇用増加ペースと想定される10万人割れへ収斂していく予兆かもしれない」とし、健全の調整の一環との見解を寄せた。平均時給の伸び悩みについては「賃金のトレンドを測る上で最良の指標とは言えず、FOMC参加者も同様の見解を共有しているだろう」と指摘。むしろ失業率が低下するなかで、リッチモンド連銀のラッカー総裁の発言に沿い、1960年代に物価抑制を果たせなかった失敗を繰り返さないよう「利上げを継続していく」と予想、6月利上げを見込む。

――米4月雇用統計は労働市場の逼迫を表すかのようにNFPが鈍化し、経済的な理由でパートタイムを余儀なくされている者など縁辺労働者を含む不完全失業率が2001年7月以来の低水準だったにも関わらず、平均時給の伸び悩みを確認しました。労働参加率も改善せず。むしろ不完全失業率の低下はパートタイム労働者がフルタイムを断念し労働市場から退出したとも考えられ、4月は実際にパートタイム労働者が35万人と大幅に減少していました。

とはいえ労働市場は、着実に逼迫しつつあることも事実です。人種別でみれば黒人の失業率は4月に6.6%と過去最低を更新。白人と黒人との失業率のスプレッドは3%ポイントと、こちらも統計開始以来で最低でした。ヒスパニック系と白人もそれぞれ4.8%、3.6%とITバブル期以来の最低を示します。

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(作成:My Big Apple NY)

雇用の牽引役が時給の低い娯楽・宿泊(特にその中に含まれる食品サービス)が雇用を牽引していれば、賃金が伸び悩むこととなるでしょう。しかし専門サービスという高賃金の分類も増加中であり、平均時給が上昇する素地があると言えます。問題は、セオリー通り賃金上昇を確認できるか否かですが・・。

(カバー写真:Levelten Interactive/Flickr)

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