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五月晴れの雇用統計で、年4回の利上げ観測再燃

by • June 2, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2449

May Flowers Jobs Report Means Fed To Raise Rate 3 Times More This Year.

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.3万人増となり、市場予想の19.0万人増を上回った。前月の15.9万人増(16.4万人増から下方修正)も超え、3ヵ月ぶりに20万人台に乗せている。過去2ヵ月分は3月分が2.0万人の下方修正(13.5万人増→15.5万人増)だったため、合計1.5万人の上方修正となった。3~5月の3ヵ月平均は17.9万人増で、2017年の平均値16.9万人増を上回ったままだ。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比21.8万人増と、市場予想の19.0万人増を上回りこちらも3ヵ月ぶりの高水準。前月は16.2万人増(16.8万人増から下方修正)だった。民間サービス業も17.1万人増と、前月10.9の万人増(11.9万人増から下方修正)を上回った。

サービス部門のセクター別動向では、1位が教育・健康で前月の2位から浮上、2位は小売で前月の7位から改善したほか、前月1位だった専門サービスが入った。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 3.9万人増>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は3.6万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.2万人増>前月は2.9万人増、6ヵ月平均は3.3万人増)
・小売 3.1万人増>前月は0.9万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・専門サービス 3.1万人増<前月は4.3万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち、派遣は0.8万人減<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.3万人増)

・娯楽・宿泊 2.1万人増>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
(そのうち食品サービスは1.8万人増=過去12ヵ月平均は1.8万人増)
・輸送・倉庫 1.9万人>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・その他サービス 1.3万人増<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

・金融 0.8万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・情報 0.6万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.1万人減
・政府 0.5万人増>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.1万人減

・卸売 0.4万人増>前月は1.1万人減、6ヵ月平均は0.4万人増
・公益 0.8万人減>前月は0.9万人増、6ヵ月平均は±0万人

財生産業は前月比4.7万人増と、前月の5.3万人増(4.9万人増から上方修正)を下回ったとはいえ、10ヵ月連続で増加した。建設が2ヵ月連続で増加したほか、製造業は10ヵ月連続で増加し、原油価格が2014年末以来の70ドル台乗せを遂げるなかか、鉱業も7ヵ月連続で増加した。

(財生産業の内訳)

・建設 2.5万人増>前月は2.1万人減、6ヵ月平均は3.0万人増
・製造業 1.8万人増<前月は2.5万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
・鉱業・伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は800人の増加)=前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

NFP、5月は3ヵ月ぶりの20万人乗せ。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の26.92ドル(約2,900円)と、市場予想の0.2%を上回った。前月の0.1%から改善し、年初来で最も強い伸びとなる。前年比では2.7%上昇し、3ヵ月続いた2.6%を上回った

週当たりの平均労働時間は34.5時間と市場予想並び、4ヵ月連続で変わらず。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.6時間と、2006年7月以降で最高となる前月の40.7時間を下回った。

失業率は3.8%と、市場予想と前月の3.9%から低下し、2000年4月以来の水準となった。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しに並んだ。労働参加率は前月の62.8%を下回り、62.7%と4ヵ月ぶりの低水準となる。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比28.1万人減少した。就労者数は29.3万人増加しており、失業者数の大幅減、就労者数の増加、そして労働参加率の低下が重なり、失業率は2000年4月以来の低水準を遂げた格好だ。就業率は60.4%と、2~3月に続き2009年1月以降で2番目の高水準を示した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.7%増の1億2,866万人と、2ヵ月連続で増加した。パートタイムは2.3%減の2,683万人と、2ヵ月連続で減少。増減数ではフルタイムが90.4万人増と前月の減少を打ち消し、パートタイムは62.5万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数の伸びが前月を上回り、平均労働時間も維持されたため、前月比で0.2%上昇し4ヵ月連続でプラスを保った。平均時給が前月の伸びを上回るなか、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.5%上昇、4ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は7.6%と、2001年5月以来の低水準だった。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は494.8万人と、前月の498.5万人から減少している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は4.6%と金融危機前の水準をたどる。

2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は9.2週と、2008年6月以来の低水準だった3月の9.1週に近づいた。平均失業期間は21.3週と、2009年3月以来で最短を記録。27週以上にわたる失業者の割合は19.45と、2008年8月以来の20%割れを遂げた。

3)賃金 採点-○
今回は前月比0.3%の上昇と年初来で最も強い伸びとなり、前年比も2.7%の4ヵ月ぶりの高水準。生産労働者・非管理職の平均時給も前月比0.3%上昇の22.59ドルと全従業員の伸びに並んだ。前年比は2.8%上昇し、全従業員の水準を超えている。非管理職・生産労働者の賃金の伸びは管理職を合わせた全体を下回る水準を続けてきたが、2ヵ月連続で強含みをみせた。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比で漸く生産・非管理職の労働者が2009年7月以来の高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.7%と、4ヵ月ぶりの低水準。2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%以下が続く。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は微増の1億6,154万人と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。非労働人口は0.2%増の9,592万人と3ヵ月連続で増加した。

――米5月雇用統計は、まさにMay Flowersの展開となり5月ベージュブックが示したような労働市場の逼迫を表しました。特に平均時給は約8割を占める生産労働者・非管理職の前年比で2009年7月以来の快挙を達成!個人消費の加速に期待がかかります。

失業率が2000年4月以来の低水準を遂げるなか、人種別では黒人の失業率が5.9%と、前月に続き過去最低を更新しました。黒人の労働参加率も人種別で0.2%ポイント改善、文句なしの好結果だったものです。逆に言えば、全体の労働参加率が4ヵ月ぶりの低水準だったように、黒人以外は前月以下に終わりました。

人種別の労働参加率。

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(作成:My Big Apple NY)

とはいえ、今回の雇用統計は五月晴れそのものといった内容で、Fedが6月12~13日開催のFOMCで利上げに踏み切ることは確実です。問題は、年4回の利上げのサインを点灯させるか否か。5月FOMC議事要旨や欧州の政局混乱を経て、FF先物市場の年4回利上げ確率は一時12.9%(CMEグループ発表ベース)まで低下しましたが、米5月雇用統計の結果を受け31.8%へ上昇しました。6月FOMC声明文で「金融政策スタンスは緩和的」の文言削除によって市場が近い内の利上げ終了を連想しないよう、年4回利上げ余地を残すのか。答えは、6月13日に明らかになります。

(カバー写真:The Open University/Flickr)

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