3147798484_acc2dd6656_z

米7月貿易収支:対中赤字が過去最大、中国による報復関税発動後

by • September 10, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2009

U.S. Trade Deficit To 5-Month High As Chinese Tariffs Take Toll.

米7月貿易収支は500.28億ドルの赤字となり、市場予想の502億ドルを下回った。前月の457.39億ドル(463.38億ドルから修正)から9.5%増加。2ヵ月連続で増加し、増加率は2015年3月以来で最大となる。赤字水準自体は、鉄鋼・アルミ追加関税措置を発動する前となる2月以来の高水準を示した。原油関連を除く貿易赤字は455.37億ドルと、前月の415.10億ドル(修正値)を超え、ヘッドラインと同じく5ヵ月ぶりの高水準となる。1月に太陽光パネル・洗濯機、3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動し、6月には鉄鋼・アルミへの追加関税措置がEU、カナダ、メキシコへ波及、7月6日には通商法301条を根拠とした対中追加関税措置、500億ドルのうち340億ドルが発動するなか、輸入の増加が輸出を上回った。

内訳をみると、輸出が1.0%減の2,110.77億ドルと2ヵ月連続で減少した。輸入は0.9%増の2,611.59億ドルと3ヵ月連続で増加した結果、過去最高を塗り替えている。

輸出減少・輸入増加のミックスで、貿易赤字は2ヵ月連続で増加。

ts(作成:My Big Apple NY)

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、824.58億ドルだった。前月の793.48億ドル(修正値)を上回り、6ヵ月ぶりの水準へ増加した。

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比1.6%減と2ヵ月連続で減少した。項目別ではこれまで増加が著しかった食品・飲料が2ヵ月連続で減少、過去2ヵ月間で2桁増を示した大豆が今回は16.2%減と減少に転じたほか、コーンも10.7%減と2ヵ月連続で減少鶏肉も10.3%減と前月に続き減少し、それぞれ2桁減となる。そのほか前月に続き民間航空機が31.2%減と落ち込み、資本財が減少。消費財も2ヵ月連続で減少した。モノで増加したのは産業財、自動車、サービスとなる。

(増加項目)
・食品・飲料 6.3%減、2ヵ月連続で減少<前月は0.4%減
・消費財 2.4%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は8.1%減
・資本財 2.0%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は1.8%減

(減少項目)
・産業財 0.5%増、過去5ヵ月間で4回目の増加<前月は4.4%増
・自動車 1.7%増、5ヵ月ぶりに減少<前月は5.2%減
・サービス 0.3%増、12ヵ月連続で増加<前月は0.5%増

輸入の内訳をみると、モノは0.9%増と3ヵ月連続で増加した。原油価格が2014年11月以来の高値をつけるなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が4.4%増と増加に転じた。前年比でも4.5%増と、3ヵ月ぶりに増加している。金額ベースでは5ヵ月連続で上昇した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は0.6%増と、3ヵ月連続で増加。項目別では食品・飲料、産業財、資本財、自動車が増加した。詳細は、以下の通り。

(増加項目)
・自動車 1.7%増、2ヵ月連続で増加=前月は1.7%増
・資本財 1.2%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は2.5%減
・産業財 1.1%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は1.9%増
・食品・飲料 2.2%増、過去5ヵ月間で2回目の増加<前月は1.7%減

(減少項目)
・消費財 3.8%増、4ヵ月ぶりに増加>前月は0.9%減

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比10.0%増の368.34億ドルと、過去最大を更新した。大豆など食品関連の輸出減少などが響いたと考えられよう。日本への赤字は、2.9%増の54.60億ドルと3ヵ月ぶりに増加。欧州全体への赤字額も39.8%増の210.35億ドルと、3ヵ月ぶりに増加した結果、過去最高を更新した。対英貿易黒字は6,200万ドルと、2017年8月以来で黒字を計上したなかで2場目に小さな黒字にとどまった。

主な産油国への貿易収支は、対カナダとOPECで赤字が増加した。カナダへの貿易収支は前月比57.6%増の31.49億ドルの赤字、3ヵ月連続で拡大するなかで赤字額は7ヵ月ぶりの高水準となった。石油輸出国機構(OPEC)への貿易赤字は89.0%増の34.64億ドルと、2014年1月以来で最大を記録。一方で、メキシコに対する赤字額は25.3%減の55.41億ドルとなり、赤字は3ヵ月ぶりに縮小した。原油輸入はOPECのみ前月比10.7%増と増加し、カナダとメキシコは2.4%減、7.4%減とそれぞれ減少したが、金額ベースでカナダが3.0%増となり、原油輸入が貿易赤字拡大につながったとみられる。なお、カナダの7月貿易収支では、エネルギーと自動車、アルミの輸出が寄与し対米黒字が53億加ドルと2008年10月以来で最大を記録した。

鉄・鉄鋼の輸入は前月比10.0%増となった。6月に続き、増加している。米国の鉄鋼輸入国シェアでトップはカナダ(20%)、2位はブラジル(13%)、3位と4位に韓国とメキシコ(11%)が入る。このうち7月から追加関税対象となったカナダでは、カナダ側の統計からみて鉄鋼の対米輸出は16.4%増と、前月の36.3%減から改善。2~5月に続き、増加を示した。逆にアルミの対米輸出は、6月に続き前月比5.2%減少し、2~5月の26.8%増と比較すれば小幅にとどまる。

国別動向の年初来・貿易赤字は、3~6月に続きカナダがトップ10圏外に陥落、今回は11位で、前月の14位から浮上した。各国ごとの単月の貿易収支動向は、以下の通り。

ts_ranking
(作成:My Big Apple NY)

――7月に米国の輸出が大きく落ち込んだ背景に、中国による報復関税が挙げられます。米国の対中追加関税に合わせ、7月6日から545品目、340億ドル相当に25%の関税賦課を決定しました。対象品目に大豆や鶏肉、ポテト、乗用車などが含まれ、輸出の減少を招いたかたちです。残り114品目、160億ドル相当も既に8月23日から発動されたため、原油や天然ガス、石炭、医療器具などの対中輸出も減少する見通し。米4~6月期実質GDP成長率では純輸出の寄与度が大きかったものの、やはり7~9月期以降に輸出は成長押し下げ要因となり得ます。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.