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11月のADP民間就労者数は鈍化、追加関税措置が波及?

by • December 7, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1523

Private Sector Job Growth Slows, Tariffs Might Start To Bite The labor Market.

米11月ADP全国雇用者数、米11月チャレンジャー人員削減予定数、米7~9月期労働生産性をおさらいしていきます。

米11月ADP全国雇用者数は前月比17.9万人増となり、市場予想の19.5万人増を下回った。前月の22.5万人増(22.7万人増から下方修正)にも届かず、3ヵ月ぶりに20万人を割り込んだ。財部門とサービス部門ともに伸びが鈍化したが、特に財部門で目立っており、追加関税措置が波及した可能性を示唆する。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、8ヵ月ぶりの高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が16.3万人増と前月の18.1万人増(修正値)を下回った。内訳をみると、年末商戦の臨時雇用が落ち着いたためか、貿易・輸送(1.8万人増、前月は5.0万人増)と娯楽・宿泊(2.6万人増、前月は3.7万人増)が前月の力強い伸びから鈍化した。7ヵ月連続での減少にブレーキを掛けた情報も、今回は0.1万人減と減少トレンドに戻している。その他は、前月を上回る伸びに。専門サービス(5.9万人増、前月は3.7万人増)のほか、教育(4.9万人増、前月は3.7万人増)や金融(0.8万人増、前月は0.4万人増)と雇用増を支えた。

財部門(製造業、建設、鉱業)は1.6万人増と、少なくとも過去6ヵ月間で最小の伸びにとどまった。内訳をみると、原油先物が10月入りの75ドルから50ドル付近まで急落するなか、鉱業(0.2万人増、前月は0.4万人増)と前月以下に。そのほか、製造業が0.4万人増と、直近で最低の伸びを示す程度となった。建設も1.0万人増と、3ヵ月連続で増加した中で最も小幅だった。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「雇用の伸びは力強いが、ピークアウトしたようにみえる」と全面的に楽観的な見解を後退させた。今回の数字は「天候要因に左右されていない」ためで、雇用の鈍化を示すと指摘。とはいえ、引き続き労働市場は逼迫しており、企業にとって人手不足の状況は続くと見込む。

――1~10月までのADP全国雇用者数は修正分で平均で20.1万人増に対し、雇用統計・民間就労者数は20.6万人増と、それほど変わりません。そうなると、雇用統計は20万人割れの公算が大きい。特に追加関税措置の影響で耐久財受注などが頭打ちを示し、原油先物が75ドルから30%以上も急落するなかで、製造業と鉱業の雇用鈍化に注意。製造業はADPでも雇用鈍化が顕著となっているだけに、弱含む可能性を残します。

▽米11月チャレンジャー人員削減予定数は増加継続、採用予定数は鈍化

米11月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比51.5%増の53,073人と3ヵ月連続で増加した。ただ、2015年7月以来で最大となった10月からは29.8%減と、4ヵ月ぶりに減少した。

年初来では、前年比28%増の494,775人だった。月間平均では45,000人となり、2017年の35,000人を上回る。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのヴァイス・プレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は、結果を受け「自動車メーカーのGMが従業員の15%、最大14,000人の人員削減を発表したほか、電化製品メーカーの東芝も7,000人化学大手モンサントと買収した製薬大手バイエルも12,000人の削減計画を明らかにした」と説明する。特に、GMの人員削減は2001年以降、自動車メーカーにとって7番目に大きな規模だという。GMの人員削減計画は「消費者行動の変化によるもの」で、通信大手ベライゾンや米銀大手ウェルズ・ファーゴ、玩具メーカーのトイザらスの削減計画と同様の動きと分析し、今後も続く公算が大きい。

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(作成:My Big Apple NY)

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。チャレンジャー・グレイ・クリスマスの指摘通り、通信が全体を押し上げた。前月は1位が通信、2位が小売、3位がメディア、4位が製薬、5位がヘルスケアだった。

1位 自動車 14,040人(全体の26.5%)
2位 ヘルスケア 4,300人(全体の8.1%)
3位 小売 3,769人(全体の7.1%)
4位 サービス 3,716人(全体の7.0%)
5位 コンピューター 3,588人(全体の6.8%)

州別動向は、年初来で以下の通り。前月も変わらず1位がカリフォルニア州、2位がニューヨーク州、3位がニュージャージー州、4位がテキサス州、5位がオハイオ州だった。

1位 カリフォルニア州 91,622人(全体の18.5%)
2位 ニューヨーク州 74,512人(全体の15.1%)
3位 ニュージャージー州 42,138人(全体の8.5%)
4位 テキサス州 26,278人(全体の5.3%)
5位 オハイオ州 24,556人(全体の5.0%)

リストラ実施の理由、年初来のランキングは以下の通り。前月は1位がリストラ、2位は閉鎖、3位は自主退職、4位は破産、5位はコスト削減だった。

1位 リストラ 177,441人(全体の35.9%)
2位 閉鎖 136,605人(全体の27.6%)
3位 自主退職 46,100人(全体の10.4%)
4位 コスト削減 44,042人(全体の8.9%)
5位 破産 35,456人(全体の7.2%)

採用予定数は、前年同月比74.8%減の15,422人だった。前年比ベースで、4ヵ月ぶりに減少している。ホリデー商戦に合わせ各小売業や輸送などが臨時雇用を発表した10月からは、88.2%減となる。

セクター別では、以下の通り。前月は1位が小売、2位が輸送、3位が製薬、4位が消費財、5位がサービスだった。

1位 小売 6,300人
2位 コンピューター 2,095人
3位 ヘルスケア 1,600人
4位 輸送 1,350人
5位 娯楽 1,200人

――採用予定数は臨時雇用の分が剥落し、大幅に鈍化しました。米11月ADP全国雇用者数では財部門での伸び縮小を確認しましたが、サービス部門でも勢いがゆるむ見通しです。

なお、各社の臨時雇用の発表内容は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

今年のホリデー商戦の臨時雇用は前年比16.2%増の71.4万人となったため、通期の個人消費も好調を維持する公算。2018年の成長率は、景気回復サイクルで最高を果たした2015年の2.9%増を上回る期待が高まります。ただし、2018年でピークアウトするシナリオは否定できませんが・・。

(カバー写真:Washington State Dept of Transportation/Flickr)

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