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米Q1家計債務は拡大継続、高齢者の延滞率は上昇

by • May 20, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off3772

Q1 Household Debt Hits Another Record, Delinquency Rate Among Seniors Edges Up.

ニューヨーク地区連銀が発表した調査によると、1~3月期の全米家計債務残高は13兆6,680億ドルだった。今回は前期比1,240億ドル増加(0.9%増)し、9期連続で2008年7~9月期の12兆6,800億ドルを超え過去最高を更新。活発なデレバレッジ(=借入の返済)が収束した2013年4~6月期の11兆1,500億ドルからは、22.5%上回る。

家計債務は、住宅ローンが前期から改善したほか、学生ローンが過去最高を更新トレンドを継続。

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(作成:My Big Apple NY)

住宅部門と非住宅部門の内訳は、以下の通り。

・住宅ローン→9兆2,240億ドル(前期比1,200億ドル増、2016年1~3月期以来の減少した前期から増加に反転、前年比3,050億ドル増)
・ホームエクイティ→4,060億ドル(前期比60億ドル減と9期連続で減少、前年比300億ドル減)
・非住宅関連債務→4兆200億ドル(前期比100億ドル増、前年比1,180億ドル増)

住宅ローン債務残高は、9兆2,440億ドルと2008年10~12月期以来の高水準ヘ戻した。ただし借換を含む新規住宅ローン組成額は3,440億ドルと、2014年7~9月期以来の低水準となった。金利低下や米株底打ちを確認したものの、税還付額が期待外れに終わったと考えられるほか、悪天候が響いたとみられ全ての信用層で新規組成額は前期比を下回った。なお、2回目の利上げ前に駆け込み需要に支えられた2016年末は6,170億ドル増加し、2007年7~9月期以来で最大を記録。一方で、テーパリング終了を意識した2014年4~6月期は2,860億ドルと、2000年以来で最低を記録していた。

住宅ローンの新規組成額のうち、74.1%が優良プライム層である720点以上となり、2015年10~12月期以来の低水準だった前期の73.3%を上回った。信用スコア620点以下のディープ・サブプライム層は4.2%と、2017年10〜12月以来の4%台を回復。需要が伸び悩んだ1〜3月期に、不動産業者がサブプライム層の信用を緩和した可能性がある。とはいえ、住宅ローンの信用スコア中央値は759点と、前期の758点とほぼ変わらず。なお2003年以降で優良プライム層である720点以上の最高は2012年4~6月期の82.5%、最低は2007年1~3月期の51.8%となる。

住宅ローン組成額の信用スコア別シェアでは、720点以上と620点以下がそろって上昇。

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(作成:My Big Apple NY)

90日以上の延滞率は住宅ローンで1.0%と、2006年4〜6月期以来の1%割れに迫った。ホームエクイティは1.3%と、前期の3期ぶりの水準へ上昇した。

なお住宅ローン組成額が持ち直すなか、大手銀の住宅ローン組成額は前期比で減少した。住宅ローン融資最大手の米銀ウェルズ・ファーゴは前期比で13%減の330億ドルと3期連続で減少しただけでなく、前年同期比でも23%減と3期連続で減少した。JPモルガン・チェースは前年同期比18%減の150億ドルと9期連続で前年比マイナスとなったほか、前期比でも13%減と2期連続で2桁減だった。

非住宅関連債務、主な内訳は以下の通り。

・自動車ローン→1兆2,800億ドル(前期比60億ドル増、前年比510億ドル増)
ローン残高は32期連続で増加した結果、過去最高を塗り替えた。自動車ローン組成額は1,390億ドルと、年末商戦の反動もあって1年ぶりの低水準だった。

新規の自動車ローン組成のうち、信用スコア620点(低信用で返済能力が乏しいサブプライム層)以下の割合は20.1%と、2010年10~12月期以降で2番目の低さだった前期の19.3%を上回った。信用スコア中央値は708点と、2010年10~12月期以来の高いレベルに達した前期の710点を下回った。参考として、2004年以降でサブプライム層のシェア最高は2006年4~6月期につけた31.8%、最低は2010年7~9月期の17.1%となる。今回、90日以上の延滞率は4.7%と2011年10〜12月期以来の高水準だった。

なお自動車ローン貸出残高で米銀1位のJPモルガンの自動車ローン組成額は前年同期比8%減の79億ドルと3期連続で減少したが、前期比では13%増と3期ぶりに増加した。反対に2位のウェルズ・ファーゴは前年同期比24%増の54億ドルと、3期連続で増加した。前期比では、16%増と増加に転じた。

自動車ローン組成額のシェア、全体的にまちまち。

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(作成:My Big Apple NY)

自動車以外の主なローン動向は、以下の通り。

・クレジットカード→8,500億ドル(前期比200億ドル減と1年ぶりに減少、前年比350億ドル増)
ローン残高は、年末商戦を受け2008年10〜12月期以来の高水準だった前期から減少90日以上の延滞率は8.3%と前期の7.8%を超え2015年4〜6月期以来の水準へ上昇した。なお、過去最低は2016年7〜9月期の7.08%である。

・学生ローン→1兆4,860億ドル(前期比290億ドル増、前年比790億ドル増)
ローン残高は、前期に続き過去最高を更新した。90日以上の延滞率は10.9%と、1年ぶりの低水準だった。

家計債務全体での90日以上の支払い延滞率は前期と変わらず3.10%と、2007年4~6月期の低水準を遂げた2018年4~6月期の3.04%を上回ったままだ。もっとも、残高全体に占める90日その他を含めた延滞そのものの割合は全体で4.6%となり、2006年7~9月期以来の低水準だった2018年4~6月期の4.5%に接近した。

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(作成:My Big Apple NY)

家計債務残高を年齢別比率でみると、70歳以上が8.2%と2003年以降で最大を更新したほか、60〜69歳も15.9%と1年ぶりの水準へ上昇した。高齢層で上昇した一方、18〜29歳(前期:7.5%→6.4%)、30〜39歳(前期:20.9%→20.1%)などは低下した。

年齢別の債務シェアは、以下の通り。40歳以上は引き続き住宅ローンが約7割を占め、高齢者ほど完済が近い事情からホームエクイティ・ローン比率が高い傾向に変わりはない。一方で、若い世代は自動車ローンのシェアが前期比上昇した半面、住宅ローンは低下。

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(作成:My Big Apple NY)

年齢別の延滞率は、70歳以上と50〜59歳以上は約3年半ぶりの水準へ上昇、30〜39歳は1年ぶりの高水準に。

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(作成:My Big Apple NY)

――家計債務は、9期連続で金融危機のさなかに記録した過去最高を更新しました。ただし、2018年末の金融市場の波乱が尾を引き、家計純資産は可処分所得比で前期の693%から659.8%と、2016年4~6月期以来の水準へ低下しました。結果、貯蓄率は前期の6.4%から7.7%へ上昇。逆資産効果により、個人消費が鈍化し貯蓄にまわしたことが確認できます。

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(作成:My Big Apple NY)

家計資産の内訳をみても、金融資産が70.6%と過去最大に迫った前期の71.9%から低下。

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(作成:My Big Apple NY)

とはいえ、可処分所得比での家計資産は金融危機直前の水準を維持しており、バランスシートが傷んだようには見えません。延滞率もクレジットカードや自動車ローンで上昇した程度で、全体的には低下していました。金融市場が安定していれば個人消費の回復しそうですが、米中貿易摩擦が激化するなかでは消費者が支出に慎重になってもおかしくありません。特に、金融資産への依存度が高いほか、今回延滞率の上昇がみられた高齢層は、財布の紐を締めざるを得なくなるのではないでしょうか。

(カバー写真:timon.hast/Flickr)

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