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6月対米証券投資:日中が1位逆転の陰で、この国・地域が米国債買い増し

by • August 18, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2457

Japan Surpasses China As Largest Foreign Holder of U.S. Treasuries, But That Is Not Only The Issue.

6月対米証券投資は、17億ドルの買い越しだった。前月の376億ドルの買い越しを含め、小幅ながら2ヵ月連続で流入している。海外の資金動向をみると、民間が632億ドル買い越し、前月の111億ドルに続き3ヵ月連続で流入した。ただし、海外中銀を含む公的機関が5億ドル売り越し、少なくとも8ヵ月連続の流出となる。海外投資家の米国債投資は77億ドルの売り越しと、前月の328億ドルに続き2ヵ月連続で売り越しした。米国債の内訳をみると、民間が69億ドル買い越し、前月の流出から反転。一方で、海外中銀を含む公的機関が146憶ドルの売り越しと、流出トレンドを保った。なお、米国人の海外証券投資は353億ドルの買い越しとなった。

6月の金融市場は、トランプ大統領がメキシコ制裁関税発動を見送ったほか、中国に対しても米中首脳会談を行う計画が伝わり、リスク資産を中心に上昇した。5月に約2,000億ドルの中国輸入品への関税を10%から25%への引き上げを決定し、残り約3,000億ドル相当の中国輸入品にも関税を賦課する可能性が残るものの、米中首脳会談に期待を寄せたとみられる。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ期待も追い風にダウは上昇、7月に入って過去最高値を更新する過程にあった。米10年債利回りは低下をたどり、2016年11月以来の2%割れを迎えた。

国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8月~19年4月と同じ顔触れとなった。ただし、中国の米国債保有高は4ヵ月ぶりに増加したものの、日本の買い越し額がこれを大きく上回ったため、2017年5月以来初めて日本に1位の座を明け渡した

2位以下の順位は変わらず。英国が前月に続き3位、ブラジルが4位に転落したままとなる。アイルランドは税制改革法案が成立直後の2018年前半こそ3位だったが、2018年8月にはブラジルに抜かれ4位へ、19年1月には英国に抜かれ5位となった。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきたが、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ存在感が低下しつつある。

1位 日本 1兆1,125億ドル(2016年10月以来の高水準)、219億ドルの買い越し、2ヵ月連続で流入
2位 中国 1兆1,125億ドル(2017年5月以来の低水準から小幅に切り返し)、23億ドルの買い越し、4ヵ月ぶりに流入
3位 英国 3,411億ドル(2011年5月以来の高水準)、180億ドルの買い越し、2ヵ月連続で流入
4位 ブラジル 3,117億ドル(5ヵ月ぶりの低水準)、60億ドルの買い越し、3ヵ月ぶりに流入
5位 アイルランド 2,621億ドル(2016年8月以来の低水準近く)、86億ドルの売り越し、3ヵ月ぶりに流出

トップ5の米国債保有高の推移。

tics_top5
(作成:My Big Apple NY)

米国債保有高が300億ドル以上の主要国のうち、買い越しトップ5ヵ国は以下の通り。このうち、日本をはじめ英国、ベルギーが前月の売り越しトップ5に入っていた。

1位 日本 219億ドル増の1兆1,125億ドル(2016年10月以来の高水準)
2位 英国 180億ドル増の3,411億ドル(2011年5月以来の高水準)
3位 ベルギー 107億ドル増の2,036億ドル(2015年6月以来の高水準)
4位 香港 116億ドル増の2,156億ドル(過去最大)
5位 カナダ 111億ドル増の1,116億ドル(少なくとも2011年以降で最大)

上記売り越しトップ5ヵ国は、以下の通り。このうち、シンガポールは前月に買い越し額3位だった。中国は3ヵ月ぶりに同ランキング圏外となった。

1位 シンガポール 108億ドル減の1,396億ドル
2位 アイルランド 86億ドル減の2,621億ドル(2016年8月以来の低水準)
3位 韓国 21億ドル減の1,152億ドル
4位 UAE 17億ドル減の515億ドル(2014年5月以来の低水準)
5位 メキシコ 9億ドル減の490億ドル(2016年6月以来の高水準から後退)

――米中貿易摩擦が激化するなかで、中国は売り越しから4ヵ月ぶりに買い越しへ転じつつ小幅にとどまりました。その陰で日本以外に、合意なきBREXITが懸念される英国を始め、ベルギー、そしてデモに揺れる香港で大きく買い越ししていました。英国やベルギー、香港は安全資産である米国債に資金が流入させたと考えられるほか、中国の迂回米国債取得の線も捨てがたい。7月にこうした国・地域がG20での米中首脳会談を経て売り越しに転じるのか、見極めたいところです。

米財務省が公表する主要保有国リスト(米国債保有高300億ドル以上)入りした国は、3~4月の32ヵ国から5月に33ヵ国へ増加し、6月もその水準を保ちました。ポーランドが枠外に転じた後、コロンビアが入っています。問題は、足元で下落圧力が掛かる原油相場を受けて、産油国が米国債保有高を積み増せる余力があるかどうか。産油国ではイラクが341億ドルで何とかリストに名を載せていますが、原油相場次第では今後、脱落してもおかしくありません。

(カバー写真:johnsls/Flickr)

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