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米10月ADP全国雇用者数は予想超え、サービスがけん引

by • November 1, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1552

Private Sector Employment Rebounds Thanks To Service Industry.

10月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定をおさらいしていきます。

米10月ADP全国雇用者数は前月比12.5万人増となり、市場予想の11万人増を上回った。前月の9.3万人増(13.5万人増から下方修正)も超えている。サービス部門が牽引した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、今回はサービスが支え改善。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が13.8万人増と前月の9.8万人増(修正値)を上回った。内訳をみると、年末商戦で臨時雇用が加わった貿易・輸送(前月1.5万人増→3.2万人増)や娯楽・宿泊(同1.3万人増→1.9万人増)と前月を上回った。そのほか教育・健康(前月3.6万人増→4.1万人増)をはじめ、専門サービス(同1.8万人増→1.7万人増)、金融(同1.7万人増→0.9万人増)が支えた。一方で、情報(同0.7万人増→0.3万人増)は前月以下にとどまった。

財部門(製造業、建設、鉱業)は1.3万人減と前月の0.5万人減(修正値)を下回り、2ヵ月連続で減少した。内訳をみると、原油先物が50ドル台で推移するなか、鉱業(前月は0.4万人減→0.4万人減)が9ヵ月連続で減少したほか、製造業(同0.3万人減→0.4万人減)と2ヵ月連続で減少。建設(同0.2万人増→0.4万人減)も、3ヵ月ぶりに減少した。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「企業は雇用に一段と慎重になっており、中小企業が特に躊躇する状況」と振り返った。その上で、前月に続き失業率の上昇に懸念を寄せた。

――財部門の雇用が軒並み減少した点は気掛かりながら、サービス部門は引き続き堅調ぶりを示しました。ADP全国雇用者数と米雇用統計・民間就労者の誤差は、2016年以降で平均2.0万人でADPが上振れる傾向にあります。足元で米10月雇用統計・非農業部門就労者数は8.5万人増ですが、ADPの予想が正しければ政府部門の雇用増が予想されるため、コンセンサスを上回る可能性を残します。

▽米10月チャレンジャー人員削減数は増加、年初来の採用予定数は過去最高

米10月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比24.8%減の50,275人と2ヵ月連続で減少した。前月比では21.0%増と増加に反転。年初来の人員削減予定数は前年比16.6%増の515,144人と、2015年以来の高水準となる。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、結果を受け「全体を通して、人員削減予定数は10~12月期入りに安定的だった」と振り返る。人員削減を確認した業種も「新たなテクノロジーの台頭や規制変更、さらに貿易問題などの影響がみられた分野に限られる」と指摘。景気減速が背景にあるわけではないとの考えを示唆した。ただ、通商政策の影響として「関税や需要鈍化、市場動向の影響を背景に、鉄鋼セクターでの人員削減がみられた」という。その上で「財部門の人員削減数2,562人のうち、1,188人が鉄鋼関連で、355人が鉄鋼・アルミ関税が影響した」と説明する。関税が原因での人員削減数は「3,826人で、そのうち1,571人が鉄鋼・アルミ関税が影響した」ようだ。人員削減数では、米中貿易摩擦より鉄鋼・アルミ関税の影響が色濃く現れたことになる。

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(作成:My Big Apple NY)

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。前月は1位が小売、2位が資本財、3位が自動車、4位がサービス、5位がエネルギーだった。今回、テクノロジーが多かった背景として、ヒューレット・パッカードが2022年までに9,000人の雇用削減計画を発表していた。その他、スーパーマーケットのクローガ-、農機メーカーのディーアなどが人員削減を発表した。

1位 テクノロジー 15,898人(全体の31.6%)
2位 小売 6,127人(全体の12.2%)
3位 ヘルスケア 5,400人(全体の10.7%)
4位 資本財 2,567人(全体の5.1%)
5位 製薬 2,243人(全体の4.5%)

州別動向は、年初来で以下の通り。前月と順位はイリノイ州以外変わらず。イリノイ州は3ヵ月ぶりに上位5位に戻った。なお、9月15日から開始したGMのストライキを受け、ミシガン州が2ヵ月連続で5位に入っていた。

1位 カリフォルニア州 92,028人(全体の17.9%)
2位 ニューヨーク州 55,575人(全体の10.8%)
3位 マサチューセッツ州 35,843人(全体の7.0%)
4位 テキサス州 30,392人(全体の5.9%)
5位 イリノイ州 28,488人(全体の5.5%)

リストラ実施の理由、年初来のランキングは以下の通りで、1位に「閉鎖」が入りこれまでの「再編」が2位に転落した。前月の1位は閉鎖、2位は再編、3位は理由なし、4位は破産、5位は契約更新できずだった。なお「貿易上の問題」は今回ゼロで、前月の19人を下回りつつ年初来では10位を維持「関税」は1,368人増加したため、年初来では前月の17位から14位へ上昇した。

1位 再編 101,147人(全体の23.5%)
2位 閉鎖 101,138人(全体の21.5%)
3位 理由なし 62,287人(全体の12.1%)
4位 破産 54,366人(全体の10.6%)
5位 コスト削減 43,337人(全体の8.4%)

採用予定数は、前年同月比22.9%減の190,835人だった。9月に年末商戦の臨時雇用が急増したため、前月比では58.5%減となる。年初来では前年同期比2.5倍増の116万2,375人と、過去最高を更新している。単月のセクター別では、以下の通り。前月は1位が小売、2位が建設、3位がサービス、4位が娯楽、5位がヘルスケアだった。

1位 小売 171,300人(全体の89.8%)
2位 政府 5,000人(全体の2.6%)
3位 テクノロジー 4,124人(全体の2.2%)
4位 航空 1,250人(全体の0.7%)
5位 保険 500人(全体の0.3%)

年末商戦の臨時雇用、小売業別では以下の通り。オンライン小売のシェアが高まるなか、フェデックスは前年と並び過去8年間で最大の規模を維持したが、UPSは前年以下となった。その他、中低所得者層向け百貨店ターゲットは、前年を上回り2012年で最多を記録した。逆にギャップは10分の1以下に削減した。

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(作成:My Big Apple NY)

――年初来の人員削減予定数が2015年以来で最悪でしたが、やはり貿易摩擦の影響が一因だったと考えられます。関税での年初来の人員削減予定数は3,826人で人員削減の理由別ランキングでは14位でしたが、貿易上の問題は10位で1万507人ですから、全体の約1割を占めました。その一方で、採用予定数は過去最高を更新。労働市場は引き続きひっ迫しているとみられ、米10月雇用統計・非農業部門就労者数が市場予想を上回る期待が高まります。

(カバー写真:Dylan H./Flickr)

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