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米10月雇用統計、トランプ政権と市場にグッドニュースをもたらす

by • November 1, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2874

Jobs Report Brings “Good October Surprise” To Trump Administration And U.S. Stock Markets.

米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比12.8万人増となり、市場予想の8.5万人増を上回った。前月の18.0万人増(13.6万人増から上方修正)には届かなかったが、労働市場がひっ迫するなか堅調な水準を保つ。8月分の5.1万人の上方修正(16.8万人増→21.9万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で9.5万人の上方修正となった。8~10月の3ヵ月平均は17.6万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比13.1万人増と、市場予想の8.0万人増を上回った。前月の16.7万人増(11.4万人増から上方修正)以下となる。民間サービス業は15.7万人増と、労働市場のひっ迫を受け前月の16.0万人増(10.9万人増から上方修正)を下回ったままだ。

NFP、伸びは鈍化したものの堅調なペースを維持。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は年末商戦を前に娯楽・宿泊が入った。2位は前月1位だった教育・健康に、前月2位だった専門・サービスは3位にそれぞれワンランクダウンした。減少したセクターは4業種で、前月から2つ増えた。公益が4ヵ月連続で落ち込んだ。その他サービスも2ヵ月連続で減少。そのほか、国勢調査目的の臨時雇用が落ち着いたのか政府が5ヵ月ぶりに減少した。情報と派遣もそれぞれ減少に転じた。専門サービスに含まれる派遣も、3ヵ月ぶりに減少した。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・娯楽・宿泊 1.6万人増<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
(そのうち食品サービスは4.8万人増>前月は2.5万人増)
・教育・健康 3.9万人増<前月は4.9万人増、6ヵ月平均は5.2万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.4万人増<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は4.1万人増)
・専門サービス 2.2万人増<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は3.3万人増
(そのうち、派遣は0.8万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は2.0万人増、6ヵ月平均は0.1万人増)

・金融 1.6万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・卸売 1.1万人増>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・輸送・倉庫 1.0万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・小売 0.6万人増<前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.2万人減

・公益 0.1万人減=前月は0.1万人減、6ヵ月平均は横ばい
・その他サービス 0.3万人減<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・政府 0.3万人減<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
・情報 0.4万人減<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.3万人増

財生産業は前月比2.6万人減と、前月の0.7万人増(修正値)を下回った。GMのストライキが影響した製造業が押し下げ、2ヵ月連続で減少している。一方で、鉱業は横ばい。建設は3ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 1.0万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 横ばい<前月は0.1万人増(石油・ガス採掘は300人増)、6ヵ月平均は0.2万人減
・製造業 3.6万人減、2ヵ月連続で減少<前月は0.5万人減、6ヵ月平均は0.4万人減

平均時給は前月比0.2%上昇の28.18ドル(約3,040円)と、市場予想の0.3%を下回った。前月の横ばいから上昇基調を取り戻している。前年比は3.0%上昇、市場予想と上方修正された前月と一致した。これで、15ヵ月連続で3%台の伸びとなる。ただ、2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)に及んでいない。

週当たりの平均労働時間は34.4時間と市場予想と8~9月と一致し、7月の34.3時間を上回った。なお7月は、ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準へ短期化していた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はGMストライキの影響を一因に40.2時間と、前月の40.5時間を下回った。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。全体の約7割を占める民間サービスは、6〜9月に続き33.2時間だった。

失業率は3.6%と市場予想と一致し、1969年12月以来の最低を更新した前月の3.5%を上回った。9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しより、力強い労働市場を示した。労働参加率は63.3%と、市場予想並びに8~9月の62.3%を超え、2013年8月以来の高水準に。就業者が24.1万人増と2桁増を続けた一方で、失業者は8.6万人増にとどまったため、労働参加率の改善を受けながら失業率の上昇は小幅だった。就業率は前月に続き61.0%と、2008年12月の水準を維持した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.3%増の1億3,155万人と、5ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.2%減の2,709万人と、3ヵ月ぶりに減少した。増減数ではフルタイムが45.1万人増、パートタイムは7.4万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から鈍化し、平均労働時間が横ばいだったため前月比で0.1%の小幅な上昇にとどまった。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.6%上昇、21ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.0%と、2000年12月以来の7%割れを果たした前月の6.9%を上回った。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は444万人と、2ヵ月連続で増加した。2006年4月以来の低水準だった7月の398.4万人を上回った水準を保つ。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.3週と、2017年12月以来の低水準だった1月並びに7~8月の8.9週から延びたままだ。平均失業期間は21.8週と、前月の22.0週を下回りつつ2008年7月以来で最短を記録した前月の19.6週超えを維持。27週以上にわたる失業者の割合は21.5%と、前月の22.7%を下回ったが、2008年8月以来の低水準だった7月の19.2%を上回った水準を保つ。

3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.2%上昇、前年比は3.0%と共に堅調だった。前年比は15ヵ月連続で3%の伸びを達成。ただし、2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%を下回った水準を保つ。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の23.70ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持。前年比では9月に続き3.5%上昇し、2009年2月以来の高い伸びだった前月(3.6%)に次ぐ水準となる。生産労働者・非管理職も15ヵ月連続で3%台の伸びを遂げた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、生産労働者・非管理職を軸に好調を維持。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は前月と同じく63.3%と、2013年8月以来の高水準を達成。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.2%増の1億6,436万人となり、6ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.1%減の9,548万人と小幅ながら減少に転じた。

――10月の雇用統計は、GMのストライキを一因に製造業などが弱かったとはいえ、サービス業が支えました。さらに、①過去2ヵ月分のNFPが大幅に上方修正、②平均時給の過去分が上方修正され、15ヵ月連続で前年比3%台の伸びを達成、③労働参加率が改善、④④労働参加率の改善の割に失業率は1969年以来の低水準近くを維持、⑤就業率は2008年12月以来の高水準を堅持――など、明るい材料が引き続き光ります。

労働参加率が2013年8月以来の水準を回復するなか、働き盛り世代の男性では若い世代で改善がみられました。(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 89.1%、6ヵ月ぶりの高水準を維持=前月は89.1%、6ヵ月平均は88.9%
・25~54歳(白人) 90.2%<前月は90.4%と6ヵ月ぶりの高水準、6ヵ月平均は90.2%
・25~34歳 89.4%、7ヵ月ぶりの高水準>前月は88.9%、6ヵ月平均は88.8%
・25~34歳(白人) 90.7%、7ヵ月ぶりの高水準>前月は90.4%、6ヵ月平均は90.3%

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(作成:My Big Apple NY)

男女合わせた労働参加率でも、25~54歳では82.8%と2009年8月以来の高水準に対し、25~34歳は2008年9月以来の高水準となり、直近での改善が著しい状況です。

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(作成:My Big Apple NY)

労働市場と言えば、家計の生命線ですよね。トランプ政権は、米10月雇用統計後に「黒人の失業率が過去最低を更新」と題した声明をリリースしました。タイトル通り、黒人の失業率は10月に5.4%と、トランプ政権発足から2.6%も改善しただけでなく、統計開始以来の記録を塗り替えたと成果をアピールしています。ヒスパニック系も過去最のですが、2020年の米大統領選を意識し黒人を取り上げたのでしょう。

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(作成:My Big Apple NY)

また、全米50州のうち、24州で失業率が過去最低に並ぶあるいは更新したと強調。トランプ政権の経済政策の賜物と強調していました。

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(出所:The White House

今回、懸念材料の製造業の雇用が下押ししたとはいえ、GMのストライキの影響が大きい。さらに、トランプ政権の通商政策、即ち鉄鋼・アルミ追加関税措置や対中追加関税措置の影響で製造業を中心に逆風にさらされていることは、人員削減予定数でも明白です。同政権は、中国と第1段階の合意へ向けた意欲をみせていますが、果たして実現できるのか。2020年の米大統領選を控え、何とか労働市場の勢いを保ちたいトランプ政権として、失敗は許されません。

(カバー写真:The White House/Flickr)

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