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米12月雇用統計はNFPや平均時給が期待外れも、女性は躍進

by • January 10, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2258

U.S. Job Growth Slows, But Female Are More Employed In December.

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
ご挨拶が遅れてしまいましたが三が日明けからインフルエンザに罹り、珍しく暫く寝込んでおりました。皆様もどうぞご自愛下さいませ。

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比14.5万人増となり、市場予想の16.4万人増を下回った。2019年で2番目の力強い伸びを遂げた前月の25.6万人増(26.6万人増から上方修正)に届かず。7ヵ月ぶりの低水準にとどまった。12月は米中貿易協議・第1段階の合意が実質成立した一方で製造業が弱かったほか、専門サービスや教育・健康などこれまで雇用を牽引してきたセクターで鈍化していた。2019年10月分の0.4万人の下方修正(15.6万人増→15.2万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.4万人の下方修正となった。10~12月の3ヵ月平均は18.4万人増と、2019年平均では17.6万人増と2018年平均の22.3万人増を下回った

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比13.9万人増と、市場予想の15.2万人増を下回った。前月の24.3万人増(25.4万人増から下方修正)に及ばず。民間サービス業は14.0万人増となり、前月の19.1万人増(20.6万人増から下方修正)を下回った。それぞれ、ヘッドラインと同じく、1月以来の高水準となった前月から鈍化した。

NFPは7ヵ月ぶりの低い伸び、失業率は1969年以降で最低を維持。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は小売(前月は3位以下)、2位は娯楽・宿泊(前月も2位)、3位は教育・健康(前月は1位)が入った。小売は今年、感謝祭が例年より6日遅れた事情から臨時雇用が12月に集中したとみられる。減少したセクターは輸送・倉庫の1業種のみで、11月の2業種(小売、卸売)以下にとどまった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・小売 4.1万人増>前月は1.4万人減、6ヵ月平均は1.1万人増
・娯楽・宿泊 4.5万人増<前月は7.0万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち食品サービスは1.6万人増<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は2.6万人増)
・教育・健康 3.6万人増<前月は7.2万人増、6ヵ月平均は5.6万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.4万人増<前月は6.4万人増、6ヵ月平均は4.8万人増)

・専門サービス 1.0万人増<前月は5.3万人増、6ヵ月平均は3.3万人増
(そのうち、派遣は0.6万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.2万人増)
・卸売 0.8万人増>前月は0.3万人減、5ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は0.5万人増
・金融 0.6万人増<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は1.3万人増

・政府 0.5万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
・その他サービス 0.5万人増<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・情報 0.3万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.2万人増
・公益 0.1万人増=前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

・輸送/倉庫 1.0万人減<前月は1.2万人増、6ヵ月平均は横ばい

財生産業は前月比0.1万人減と、前月の5.2万人増(4.8万人増から上方修正)を下回った。GMのストライキで10月は減少、11月はストライキ収束を受け反動増となったが、再び減少した格好だ。製造業が減少に転じ、耐久財(前月は4.8万人増→0.7万人減)が弱く、そのうち自動車(前月は3.9万人増→800人減)も振るわず、非耐久財(前月は1.0万人増→0.5万人減)も減少に転じた。鉱業は、銀行がシェール関連企業に対し貸し渋り傾向にあると報道されるなかで2ヵ月連続で減少。一方で、建設は前月の伸びを上回り5ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 2.0万人増、5ヵ月連続で増加>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 0.9万人減(石油・ガス採掘は2,500人増)、2ヵ月連続で減少<前月は0.8万人減、6ヵ月平均は0.4万人減
・製造業 1.2万人減<前月は5.8万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

平均時給は前月比0.1%上昇の28.32ドル(約3,060円)と、市場予想と0.2%から上方修正された前月の0.3%を下回った。前年比も2.9%の上昇にとどまり、市場予想と前月の3.1%に届かず。3%超えは、16ヵ月連続で一旦収束したかたちだ。もちろん、2019年2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)に及んでいない。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給のセクター別では、小売や娯楽・宿泊、鉱業、情報など常連組に加え専門サービスが生産労働者・非管理職の平均時給の伸びである3.0%を上回った。

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.3時間と、34.4時間から下方修正された前月と一致した。市場予想の34.4時間を下回り、ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準に並んだ。34.3時間というのはハリケーン・ハービー以来の低水準であるだけでなく、2011年1月以降で最低である。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はGMストライキが収束したものの3ヵ月連続で40.1時間となり、2011年11月以来の40時間割れを視野に入れたままだ。全体の約7割を占める民間サービスは、2019年6〜11月に続き33.2時間だった。

失業率は3.5%と市場予想と前月と並び、1969年12月以来の最低となった。2019年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2020年見通しとも、一致した。労働参加率は63.2%と、市場予想並びに前月通りで、2013年8月以来の高水準近くを保つ。就業者が26.7万人増と2桁増だった一方で、失業者は5.8万人減となったため、労働参加率が変わらなくとも失業率は約50年ぶりの低水準を保った。就業率は2019年9~11月に続き61.0%と、2008年12月の水準を維持した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.1%増の1億3,176万人と、7ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.1%増の2,699万人と、3ヵ月ぶりに増加した。増減数ではフルタイムが19.4万人増、パートタイムは3.4万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から鈍化したものの増加基調を維持し、平均労働時間が横ばいだったため前月比で0.1%と小幅ながら上昇した。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.2%上昇、23ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は6.7%と、前月の6.9%を下回り統計が開始した1994年1月以降で最低を記録した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比3.3%減の415万人と、2ヵ月連続で減少した。ただ、2006年4月以来の低水準だった2018年7月の398.4万人を上回った水準を保つ。

2)長期失業者 採点-〇
失業期間の中央値は9.0週と前月の9.4週から短期化し、2017年12月以来の低水準となる8.9週に接近した。27週以上にわたる失業者の割合は20.5%と前月の20.8%を下回り、2008年8月以来の低水準だった7月の19.2%ににじり寄った。ただし、平均失業期間は20.8週と前月の20.2週を上回り、2008年7月以来で最短を記録した2019年7月の19.6週から後退した。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.1%上昇、前年比は2.9%と共に前月以下に終わった。前年比は3%乗せ記録を16ヵ月で止めた格好だ。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比横ばいの23.79ドルと、2017年11月から続く増加トレンドにブレーキを掛けた。前年比で3.0%と17ヵ月連続で大台を維持しながら前月の3.5%から急減速した。なお2019年10月は3.6%上昇、2009年2月以来の力強い伸びを果たしていた。

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は前月通り63.2%、2013年8月以来の高水準を達成した9~10月の63.3%近くを保つ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比で微増の1億6,404万人となり、6ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.1%増の9,562万人と小幅ながら増加に転じた。

――12月の雇用統計は、トランプ大統領が「Blowout」と評価した前月と打って変わって、心もとない結果に終わりました。①過去2ヵ月分のNFPが下方修正、②平均時給が17ヵ月ぶり、2019年7月以来、17ヵ月ぶりの前年比3%割れ、③平均労働時間が2011年以降の景気拡大期で最低に並ぶ――など、景気拡大が11年目を迎える循環的に景気が鈍化し始めたようにみえます。とはいえ、①失業率は約50年ぶりの低水準を維持、②労働参加率は低下を回避、③就業率は2008年12月以来の高水準を堅持、④不完全失業率は統計開始以来で最低――など、好材料も残します。米中貿易協議・第1段階の合意成立を経て、製造業などを中心に雇用が回復するのか、1月に期待が掛かりますね。

その他、こんなニュースも。NFPの男女別に比較すると男性が7,613.7万人に対し、女性が7,624.6万人と2010年4月以来で初めて女性が男性を上回ったのです。NFPにおける女性比率は50.04%。なお、女性が過去最大の比率を記録したのは金融危機の激震が走ってまもない2009年10月で50.1%でした。金融危機の非常時と打って変わり、高学歴の女性が増加するにつれNFP比率も改善したのでしょう。トランプ大統領が再選を狙うなか、リベラル派が望むような女性の躍進を感じさせる結果となっています。

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(作成:My Big Apple NY)

全体の労働参加率が2013年8月以来の水準近くを維持するなか、働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は底堅いながらも軟化していました。労働参加率は家計調査(戸別訪問)を元にする一方、NFPは事業所ベースという調査手法の違いがあるにも関わらず、女性のNFP比率上昇と整合的な結果となっています。以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字となります。

・25~54歳 89.2%<前月は89.3%と2018年4月以来の高水準、6ヵ月平均は89.1%
・25~54歳(白人) 90.2%<前月は90.3%、6ヵ月平均は90.2%
・25~34歳 89.4%<前月は89.8%と8ヵ月ぶりの高水準、6ヵ月平均は89.2%
・25~34歳(白人)90.7%<前月は90.9%と7ヵ月ぶりの高水準、6ヵ月平均は90.5%

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(作成:My Big Apple NY)

米12月雇用統計を受け、トランプ大統領の期待に添いダウは一時史上初の29,000ドル突破を果たしたものの、すぐに大台割れの展開を迎えました。このタイミングでペロシ米下院議長が弾劾条項を来週米上院に送付する方針と報じられ、かつイランへの新たな経済制裁が発表されましたが想定内のはず。これらより、米株相場に直接影響を与える決算シーズンの幕開けを控えるだけに、雇用動向を見極める上でも今週はポジションを傾けづらいことでしょう。

(カバー写真:Donnie Nunley/Flickr)

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