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米5月貿易赤字は拡大、今年の対中輸出目標達成は絶望的

by • July 7, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2843

May Trade Deficit Widens, Export To China Doesn’t Increase Enough.

米5月貿易収支は546.01億ドルの赤字となり、市場予想の532億ドルを上回った。前月の497.56億ドル(494.08億ドルから修正)から9.7%増加。2018年12月以来の水準へ拡大した。原油関連を除く貿易赤字も548.59億ドルと、前月の529.55億ドル(526.89億ドルから修正)を上回り、少なくとも2000年以降で最大に膨らんだ。

内訳をみると、輸出が前月比4.4%減の1,445.14億ドル。5ヵ月間で4回減少した結果、2009年11月以来の低水準となる。輸入も同0.9%減の1,991.15億ドルと5ヵ月連続で減少し2010年7月以来の水準へ減少したが、輸出程ではなく赤字拡大につながった。経済活動の再開が各国で異なるなか、引き続き貿易活動は停滞、輸出と輸入を合わせた貿易額は3,436億ドルと、2010年4月以来の低水準だった。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は864.86億ドルと、前月の804.45億ドル(799.80億ドルから修正)から拡大した。2019年8月以降で最大となる。

チャート:輸出の落ち込みが痛手となり、実質ベースのモノの赤字は2019年8月以降で最大

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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比5.8%減と前月の25.2%減を含め3ヵ月連続でマイナスとなった。サービスを含めた6大項目別では、消費財のみ増加し、前月の食品・飲料のみ横ばいから改善した。減少項目は前月こそ自動車が押し下げたが、今回は石油等を含む産業財が弱かった。輸出項目別動向は、前月比で以下の通り。品目の順は金額ベースで増加、減少が激しかったものとなる。

(増加項目)
・消費財 5.4%増、4ヵ月ぶりに増加>前月は29.6%減
ダイヤモンド宝飾品が前月の2桁減から49.8%増と増加に転じたほか、洗面用品・化粧品も13.9%増、芸術・古美術・切手も前月の減少を打ち消し108.1%増となった。一方で、スマートフォンは6.5%増と前月の2桁減から小幅に回復した。

(減少項目)
・産業財 11.6%減、3ヵ月連続で減少>前月は21.2%減
石油製品が49.6%減、原油が21.8%減、燃料が36.9%減など、前月に続きエネルギー関連が2桁減となり押し下げた。

・自動車 11.1%減、過去6ヵ月間で4回目の減少>前月は65.8%減
乗用車が36.4%減と2ヵ月連続で2桁減だったほか、トラック・バスも7.9%減、自動車用タイヤ・チューブが8.0%減と2ヵ月連続で減少した。

・食品/飲料 2.9%減、減少に反転<前月は横ばい
→米中貿易協議・第1段階の合意が維持される一方で、新型コロナウイルス感染拡大により食肉工場での生産活動に影響が及ぶなか肉類が前月に続き13.9%減と2ヵ月連続で2桁減となったほか、大豆が前月の2桁増から転じ2.4%減、その他も2.8%減だった。

・資本財 2.7%減、過去6ヵ月間で5回目の減少>前月は23.8%減
半導体が8.5%減だったほか、コンピュータ付属品が17.4%減、医療機器が8.5%減となった。

・サービス 2.0%減、過去5ヵ月間で4回目の減少>前月は10.7%減
→世界中で渡航が制限されるなか旅行が前月の2桁減から1.1%減と下げ幅を縮小したほか、金融サービスも2.2%減とマイナスだった。

輸入の内訳をみると、モノは0.8%減と5ヵ月連続で減少した。油価が戻りを試したほか、米国で経済活動が再開した事情もあって量ベースでのエネルギー関連輸入は7.0%増と前月の15.8%減から反転。ただし、金額ベースでは4ヵ月連続で下落した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で0.6%減と、前月の11.3%減を含め5ヵ月連続で減少した。5大項目別では、産業財を始め消費財、食品。飲料が増加、前月は産業財のみだった。項目別動向は、前月比で以下の通り。

(増加項目)
・産業財 5.5%増、3ヵ月連続で増加>前月は0.7%増
非貨幣用金が16.4%増と前月の2倍増に続き増加したほか、完成金属品が同じく前月の2倍増に続き20.0%増と牽引、その他貴金属が54.1%増と大幅増を遂げた。

・消費財 4.4%増、5ヵ月ぶりに増加>前月は6.6%減
服飾・繊維が34.7%増、スマートフォンが18.9%増、TV・ビデオ機器が40.3%増だった。

・食品/飲料 0.3%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は6.0%減
→野菜が17.8%増と前月の減少を打ち消したほか、肉類が17.0%増、その他が7.7%増となった。逆に、アルコール飲料(ワイン除く)が26.8%減、魚・貝類が11.2%減、ワイン・ビール・関連品が11.0%減だった。

(減少項目)
・自動車 32.8%減、過去6ヵ月間で5回目の減少>前月は52.2%減
乗用車が45.0%減、その他関連部品が15.4%減、トラック・バスが41.2%減とそろって前月に続き2桁減だった。

・資本財 1.3%減、過去5ヵ月間で4回減少>前月は10.7%減
コンピュータが5.5%減、発電機が7.9%減、農業機器が14.3%減となった。

主要国・地域別でのモノの貿易収支動向の前月比は、通関ベースで以下の通り。

・中国 7.4%増の278.87億ドルの赤字、2019年8月以来で最大
・香港 4,700%増の9,600万ドルの黒字、前月は1998年8月以降で最小の黒字
・日本 16.6%減の32.03億ドルの赤字、少なくとも2009年5月以来の低水準(日米貿易交渉は2019年8月末のG7首脳会談で合意)
・欧州連合 11.1%減の127.13億ドルの赤字と2017年10月以来の低水準(2019年10月にWTOがエアバスの補助金に対する報復関税を承認、20年6月に米国は仏以外のデジタル課税導入国に通商法301条調査を行うと発表)
・英国 2.46億ドルの黒字、前月の3.77億ドルの赤字から反転(EUと同じく今年、通商協議入り)

主な産油国・地域との貿易収支は前月比、通関ベースで以下の通り。石油輸入が増加したように、対カナダ、メキシコでは赤字が拡大した。なお、5月ベージュブックではサプライチェーン途絶の懸念する先が中国から遅れて感染が拡大するメキシコに移っていた。対石油輸出国機構(OPEC)では、黒字が大幅に縮小した。

・カナダ 188.9%増の11.93億ドルの赤字、前月の赤字は2019年3月以降で最小
・メキシコ 25.8%増の42.01億ドルの赤字、前月の赤字は2009年6月以降で最小
・OPEC 73.8%減の3.57億ドルの黒字ながら、少なくとも10ヵ月連続で黒字

年初来の貿易収支、貿易額、輸出入額をみると、コロナ禍でランキングが微妙に変化した。要点は以下の通り。

〇貿易赤字額
スイスが4月の7位から3位へ浮上、代わりに4月に3位に浮上したアイルランドを始め、ドイツや日本などそれぞれ1つずつランクダウンし4位と5位に
→ベトナムが前月の6位で変わらず、代わりに4月に5位だった日本は7位へ転落
台湾が前月のトップ10圏外から10位に浮上、代わりに4月の10位のタイが圏外へ転落

〇貿易額
カナダが1位へ浮上、代わりに4月に1位だったメキシコが2位へ転落
スイスが4月の10位から8位へ浮上、代わりに台湾が9位へ転落
ベトナムがトップ10圏外から10位へ浮上、代わりにインドが前月の9位から圏外へ転落

〇輸出
→変化なし

〇輸入
→スイスが4月の9位から6位へ浮上、代わりに韓国、アイルランド、ベトナムが1つずつランクダウン
→台湾が4月の圏外から10位へ浮上、代わりには英国が4月の10位から圏外へ転落

チャート:年初来の貿易収支など、()内の数字は前年同月のランキング

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(作成:My Big Apple NY)

――5月の輸出入は減少し、双方を合わせた貿易額は3,436億ドルと、2010年4月以来の低水準でした。とはいえ、輸入は4月と同じく“非貨幣用金(日銀より:通貨当局が準備資産として保有する金(貨幣用金)、および金投資口座等にかかる金(投資用金)以外の全ての金(工業用あるいは価値保蔵用の金)“を始め貴金属類が牽引し産業が拡大しました。また、消費財は服飾・繊維やスマートフォンなど、経済活動の再開に合わせ増加に反転。食品・飲料も増加に転じた半面、巣ごもり需要の一環から増加していたアルコール類、ワインなどは減少に転じ、正常化の兆しが見えます。

気になる対中貿易動向は、通関ベースで輸出が前月比7.9%増の99.86億ドル、輸入も7.6%増の378.73億ドルとそれぞれ拡大していました。一方で、貿易額は年初来では17.4%減米中貿易第1段階合意では、2020年に対中輸出を767億ドル、2021年には1,233億ドル、合わせて2,000億ドル(財:1,621億ドル)拡大する方針でまとまったものの、達成は絶望的な情勢となっています。

チャート:今年の目標額達成は、絶望的

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(作成:My Big Apple NY)

米中第1段階の合意を維持するなか、まもなく公表される為替報告書で再び中国が為替操作国と認定されるのか、そうなった局面では象徴的にとどまるのか、トランプ政権の次の一手が待たれます。

(カバー写真:Will Nanlohy/Flickr)

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