Fed Stays On Course For Lift-Off Despite Global Turmoil And Low Inflation.
1月27−28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、お役目ご免となった「相当な期間(considerable time)」を削除し、利上げに「忍耐強くなれる」との文言が存在感を放ちました。景況判断は順調な回復を背景に上方修正した一方、インフレ鈍化と世界経済の減速に配慮を示します。ただインフレについては「エネルギー価格」を戦犯扱いしており、前回12月のFOMC議事録のスタンスを維持していました。
声明文の主な変更点とポイント
【景況判断】
前回:「経済活動は緩やかなペースで拡大」
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今回:「経済活動は堅調なペースで拡大」
※米7−9月期国内総生産(GDP)が5.0%増、米10−12月期GDPも3%付近が予想されており、景況判断を小幅に上方修正。
前回:「堅調な雇用の伸びや失業率の低下に表れるように、労働市場は一段と改善」
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今回:「強い雇用の伸びや失業率の低下に表れるように、労働市場は一段と改善」
※米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が35.3万人増、米1月雇用統計・NFPも25.2万人増だったため、雇用の伸びをめぐる文言を上方修正。2014年の就業者数が1999年以来の高水準だったことも評価したとみられる。
前回:「家計支出は緩やかに伸びている」
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今回:「家計支出は足元のエネルギー価格が購買力を押し上げるなか、緩やかに伸びている」
※ガソリン価格の下落が家計応援団になると予想。予想外に減少した米12月小売売上高には、特に配慮せず。
前回:「インフレは委員会の長期目標値を下回って推移しており、エネルギー価格の下落を一部反映」
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今回:「インフレは委員会の長期目標から一段と低下し、概してエネルギー価格を反映」
※米12月消費者物価指数が6年ぶり低水準を示したようにインフレは減速基調も、エネルギー価格の影響との判断を強調。
前回:「マーケット・ベースのインフレ期待はいく分、低下が進み、調査ベースの長期インフレ見通しは安定したままだ」
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今回:「マーケット・ベースのインフレ期待はここ数ヵ月で大いに低下し、調査ベースの長期インフレ見通しは安定したままだ」
※マーケット・ベースはモルガン・スタンレーが指摘したように、前回12月のFOMCから一段と低下していた。
【統治目標の遵守について】
前回:「委員会は適切な緩和政策によって経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働指標は二大目標に沿う判断する水準へ向かうと予想する。」
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今回:「委員会は適切な緩和政策によって経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働指標は二大目標に沿う判断する水準へ向かい続けると予想する。」
前回:「委員会は、経済活動と労働市場の見通しに対するリスクはほぼ均衡と見込む」
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今回:「委員会は、経済活動と労働市場の見通しに対するリスクはほぼ均衡と見込み続ける」
前回:「労働市場がさらに改善するに従い、エネルギー価格の一時的な影響や、その他要因が減退してインフレは徐々に目標値へ向かって上向くと予想する」
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今回:「インフレは短期的に一段と低下するだろうが、労働市場がさらに改善するに従い、エネルギー価格の一時的な影響や、その他要因が減退して徐々に物価は上向き、中期的に目標値2%へ向かっていくと予想する」
※インフレ減速は一時的との見方を強調、2004年当時のように、利上げ開始時期にインフレが目標値以下でも利上げを推進する意志を示唆?
【政策金利について】
前回:「最大限の雇用と物価安定の進展を支援するにあたって委員会は本日、0−0.25%のFF金利誘導目標レンジの維持を適切と判断した。どの程度維持するか決定する上で、委員会は最大限の雇用と2%のインフレ目標値ヘ向かう進展を実際の数値および期待値と合わせて評価していく。評価に際しては労働市場の状態、インフレ圧力とインフレ期待、金融市場の動向を考慮していく。」
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今回:「最大限の雇用と物価安定の進展を支援するにあたって委員会は本日、0−0.25%のFF金利誘導目標レンジの維持を適切と判断した。どの程度維持するか決定する上で、委員会は最大限の雇用と2%のインフレ目標値ヘ向かう進展を実際の数値および期待値と合わせて評価していく。評価に際しては労働市場の状態、インフレ圧力とインフレ期待、金融市場と海外の動向を考慮していく。」
※文言に、”海外”を新たに追加。欧州中央銀行(ECB)の大規模な量的緩和、スイスによるユーロペッグ廃止並びにマイナス金利の一段引き下げをはじめ、カナダやインドなど各国でも利下げが相次ぐなか、世界景気の減速への配慮を示す。
前回:「委員会はこのガイダンスが、資産買い入れを10月で終了させた後も、特にインフレが長期目標の2%を執拗に下回り長期的インフレ見通しが抑制的であれば、FF金利誘導目標を0−0.25%で相当な期間維持するとの前回の声明に沿うと見込む。」
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今回:削除
※”相当な期間”にかかるフォワード・ガイダンスを排除。12月FOMCで”(利上げに)忍耐強くなれる”との文言を挿入しており、フォワード・ガイダンスのバトンタッチを完了。
【量的緩和策について】
前回:「委員会は、政府機関債と政府機関が発行する住宅ローン担保証券(MBS)の償還元本を政府機関が発行するMBSへ再投資するという既存のプログラムを継続し、満期を迎えた米国債のロールオーバーを入札にて行っていく。委員会が非常に大きな長期債保有高を維持する政策を通じ、緩和的な金融環境が支援されるだろう。」
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今回:QE終了を受け、前回と変わらず。
【票決結果】
反対票ゼロ。2014年は7月以降、9月、10月、12月と4回連続で反対票が投じられていた。2015年の地区連銀FOMC投票メンバーはアトランタ連銀のロックハート総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁、リッチモンド連銀のラッカー総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁となる。
BNPパリバは、今回の声明文を受けて「タカ派寄り」と判断した。背景として 1)景況判断を”緩やか”から”堅調”へ上方修正した、2)雇用の伸びを”堅調”から”強い”へ上方修正した、3)インフレ減速が一時的と強調し、かつ家庭の購買力拡大へ結びつけた——点を挙げ、Fedは着実に利上げ路線を歩んでいるとの考えを示す。その上で、利上げ開始を「6月」で維持した。
バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、結果を受け「経済成長と労働市場見通しへのリスクは『ほぼ均衡』で、インフレについても目標値の2%へ戻るとの文言を概ね変更してこなかった」ため、「今年半ばに利上げを実施するサインを点灯させた」と指摘。利上げ開始時期を「6月」で維持しつつ、引き続き後ろ倒しとなるリスクへの警戒も忘れなかった。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙はFOMC後、Fed番のヒルゼンラス記者による「Fedは利上げへの忍耐強さを堅持(Fed Sticks to ‘Patient’ Tack on Rate Increases)」との記事を配信。インフレへの懸念を示しながら「6月か、それ以降」に利上げするシナリオで変わらずと伝えた。
声明文を受けたFF金利の織り込み度は、ほぼ変わらず。利上げ開始を10月とする確率は66%で、発表前の65%から若干上昇していた。
——今回のFOMC声明文では現状の景況判断の表現を”堅調(solid)”へ表現を引き上げつつ、見通しについては”緩やか(moderate)”で維持していました。裏を返せば、成長鈍化のリスクを意識しているとも言えます。一方で、ガソリン価格が約5年ぶりの低水準にあって米12月小売売上高が予想外に弱かった点を完全に無視。ガソリン価格の下落が「購買力を押し上げる」と、楽観的でした。成長鈍化を見据えていようが、ディスインフレだろうが、世界経済が減速しようが、Fedの視線の先にあるのは出口への扉で変わりないようです。
(カバー写真 : FRB)
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