Fed May Rethink Later In This Year Rate-Hike After The March Jobs Report.
米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比12.6万人増と、市場予想の24.7万人増を大幅に下回った。前月の26.4万人増(29.5万人増から下方修正)から伸びを縮小。原油安、悪天候、西海岸の港湾労働者ストライキ、成長鈍化などの影響に耐えきれず、2013年12月以来の低水準を示す。過去2ヵ月分の下方修正もあって1−3月期平均は19.7万人増にとどまり、2014年10−12月期平均の31.7万人増から大きく後退した。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が12.9万人増となり市場予想の24.0万人増を大きく下回った。2月の26.4万人増(28.8万人増から下方修正)以下となる。民間サービス業が14.2万人増と、2014年2月以来の低水準を示現。財生産業は、2013年12月以来の減少に転じた。悪天候のため就業できなかった人数は4.1万人増、3月の平均値を大きく上回り建設セクターなどの足かせとなっている。
(サービスの主な内訳)
・貿易/輸送/公益 4.1万人増<5.2万人増、増加トレンドを維持
そのうち小売は2.6万人増<前月は3.2万人増、3ヵ月連続で増加
・ビジネス・サービス 4.0万人増<前月は4.2万人増、増加トレンドを維持
そのうち派遣は11.4万人増>前月は7.5万人減、3ヵ月ぶりに増加
・教育/健康 3.8万人増>前月は5.7万人増、増加トレンドを維持
・娯楽/宿泊 1.3万人>前月は7.0万人増、増加トレンドを維持
そのうち食品サービスは0.9万人増、前月の6.6万人増から大幅鈍化し1−3月期平均および2014年平均の3.3万人増に届かず
・金融 0.8万人増>前月は0.7万人増、12ヵ月連続で増加
・情報 0.2万人増<前月は0.7万人増、5ヵ月連続で増加
・政府 0.3万人減<前月0.2万人増、石油生産減少の影響か地方政府が弱く増加トレンドに終幕
財政産業は1.3万人減となり、前月の2.0万人増から減少に転じ2013年12月以来の落ち込みを示す。
(財政産業の内訳)
・建設 0.1万人減<前月は2.9万人増、15ヵ月ぶりに減少
・製造業 0.1万人減<前月は0.2万人増、増加トレンドに終止符
・鋼業 1.1万人減=1.1万人減、原油安の影響で1−3月期は3.0万人減、2014年の4.1万人増から減少に反転
3月NFPは失速、ドル高による企業収益の悪化も反映?
(出所:BLS)
時間当たり平均労働賃金は、市場予想の0.2%増を超え前月比0.3%増の24.86ドル(約3000円)。前月の0.1%増を超えつつ、最低賃金引き上げの影響で2008年11月以来で最高を記録した前月の0.5%には届かず。前年比は2.1%の上昇となり、2月の2.0%を上回ったものの、5ヵ月ぶり高水準だった1月の2.2%以下にとどまった。生産労働者・非管理職の場合は、前月比±0%の20.80ドル(約2500円)で、前年比は1.56%と2月の1.96%から鈍化。全従業員の週当たり賃金は、前月比で微減の857.67ドル(約10万2900円)と前月の0.1%増から減速している。前年比でも2.1%増と、2月の2.6%増(速報値ベース)を下回った。生産労働者・非管理職の週当たり賃金の場合は前月比0.1%減の702.98ドル(約8万4400円)。2月の横ばいから、減少に転じている。前年比では1.8%増と、2月に2.5%(速報値)からへ伸びをせばめた。
週当たりの平均労働時間は前月まで5ヵ月連続で2008年5月以来の高水準となる34.6時間だったものの、今回は34.5時間へ短縮した。製造業の平均労働時間も前月の41.0時間から40.9時間へ短縮し、2014年6月に続き2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。
失業率は5.5%となり、市場予想および前月と一致した。2008年7月以来の6%割れを維持。リーマン・ショック以前にあたる2008年5月以来の低水準を続けた。3月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジを超える水準を保つ。マーケットが注目する労働参加率は62.7%。2月の62.8から低下し、2014年12月に続き1978年2月以来の低水準を示現した。
失業者数は前月比13.0万人減だった一方、雇用者数は0.3万人増と小幅ながら10ヵ月連続で増加している。就業率は3ヵ月連続で59.3%となり、約5年ぶりの水準を保った。
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は、10.9%。前月の11.0%から低下し、7ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は30.7週と、前月の31.7週から短縮。失業期間の中央値は12.2週と前月の13.1週から短縮し、少なくとも2009年以来の低水準を示現した。
フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億2102万人となり4ヵ月連続で増加。パートタイムは0.4%減の2730万人と、2ヵ月連続で減少した。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
3月は10.9%、2008年9月以来の低水準だった2014年12月の11.2%を下回り改善が進む。不完全失業者数は前月比1.1%増の670.5万人と、増加に反転。
2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は28.9%と、2月の31.1%を下回り直近で最低。平均失業期間は30.7週と、2月の31.7週から短縮。6ヵ月以上の失業者数も3月に270.9万人と、2月の270.9万人から5.4%減少。
3)賃金 採点-△
3月は前月比0.3%増となり、前月の0.1%増を超えつつ2008年11月以来の高水準となる1月の0.5%増には届かず。3月は前年同月比も2.1%増と2月の2.0%増を上回るも、5ヵ月ぶり高水準だった1月の2.2%以下に。2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジを維持している。なお生産労働者・非管理職の場合は前月比0.2%増の20.86ドル(約2500円)、前年比は1.76%増と2月の1.56%増を上回った。ただし、それぞれヘッドラインの0.3%増、2.1%増からかい離したままだ。
4)労働参加率 採点-×
3月は62.7%と、2月の62.8%から低下。1978年2月以来の低水準である2014年12月に並ぶ。非労働人口は9318万人と、2月の9290万人を超え過去最悪を更新。軍人を除く民間労働人口も前月比0.1%減の1億5691万人となり、2ヵ月連続で減少した。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、米雇用統計後に中央銀行覧にてジョシュ・ザンブラン記者による「Fedにとって、3月雇用統計の弱含みが継続するか単なる下振れに終わるのかが問題(For Fed, Question of Whether Jobs Weakness Will Continue or Prove an Aberration)」と題した記事を配信した。天候要因で減速したのか見極めが必要であり、鈍化が続く場合は6月利上げの可能性は低いと指摘している。
BNPパリバは、今回の結果を受け「悪天候や西海岸の港湾労働者ストライキの影響が考えられ、4月は反動で27.5万人増ヘの拡大が見込まれる」と予想。ただ「マーケットは年内利上げ観測を後退させるだろう」との見方も示し、「当方は年内利上げの可能性が80%から75%へ低下したと判断する」とまとめた。
JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、米3月雇用統計・NFPが「過去12ヵ月平均の26.9万人増を下回った」と指摘する。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の3月27日の講演をはじめ、足元で米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の発言がハト派寄りへ傾いており、同エコノミストは利上げ開始時期を「6月から9月」へ変更。米雇用統計の鈍化が続けば「9月利上げの可能性も疑問視されるだろう」と付け加えた。
——以上、米3月雇用統計・NFPは大寒波・積雪に見舞われた2月から一転、大幅減速しました。6月はおろか年内の利上げ観測が後退、ドル安に傾きドル円は119円割れ、ユーロドルも1.10ドル台に乗せています。ダウ平均先物も小幅高から165pもの大幅安を示現。グッドフライデー明けの6日、再びボラティリティがマーケットを直撃しそうです。
(カバー写真:Pennsylvania National Guard/Flickr)
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