Beige Book Shows Side Effect Of Strong Dollar.
米連邦準備制度理事会(FRB)が15日に公表したベージュブック(2月半ばから3月末までカバー)は、3月前半まで寒波が続くなかでも、成長軌道をたどっていることを確認しました。クリーブランド連銀がまとめた今回のベージュブックでは、景気動向に対し「経済は、拡大を続けた(continued to expand)」と総括。2014年12月、1月、3月に公表した分の表現を据え置いています。ドル高、原油安、悪天候に言及していたものの、下方修正を免れました。ただし製造業や観光の分野で、ドル高への懸念は前回より引き上げられています。
リッチモンド連銀、シカゴ連銀、ミネアポリス連銀、ダラス連銀、サンフランシスコ連銀の5地区連銀は、「緩やかなペース(moderate pace)」での拡大を報告。前回の6地区連銀から、減少していました。一方でニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、セントルイス連銀の3地区連銀は「控え目(modest)」だったといいます。ボストン地区連銀は「拡大した(expand)」と評価しつつ、クリーブランド連銀は「わずかなペース(a slight pace)」と表現。アトランタ連銀とカンザスシティ連銀は「安定的(steady)」でした。
製造業活動はドル高、原油安、大寒波という三重苦の煽りで「まちまち(mixed)」となり、前回の「拡大(expand)」から下方修正されました。特に全体を通じ「ドル高(strong dollar)」との表現は10回に及び、前回の5回から増加しています。米3月ISM製造業景況指数や米3月鉱工業生産で製造業の不振続きを確認したように、全くさえません。
ドル高をめぐるネガティブ要因として、地区連銀から以下のような報告が上がっていました。
・ボストン地区連銀「海外での収益を大幅に圧迫」
・NY連銀「カナダ人観光客の支出減少」
・シカゴ連銀は「輸入品との競争」
・ダラス連銀「化学業者の輸出減少」
春なのに、製造業への逆風でセンチメントは冷え込み中。
(出所:AccuWeather)
消費者動向をめぐりボストン連銀、フィラデルフィア連銀、セントルイス連銀、ミネアポリス連銀。サンフランシスコ連銀の5地区連銀が前回より「拡大(higher)」を報告しています。一方でNY連銀、リッチモンド連銀、アトランタ連銀、シカゴ連銀、カンザスシティ連銀、ダラス連銀の6連銀は「まちまちからわずかな減少(mixed to slightly down)」、クリーブランド連銀は「前年比で横ばい(flat year-over-year)」でした。見通しに対しても、ボストン連銀をはじめとする6地区連銀と全体の半分が「楽観(optimistic)」しているといいます。
雇用は、地区連銀全体で「安定的あるいは小幅に改善(remained stable or improve modestly)」しており、前回の「安定的あるいは拡大(remained stable or expanded)」からトーンがやや後退しました。賃上げ圧力も「控え目(modest)」で、「緩やかなままで(remained moderate) 」から下方修正。引き続き、特殊技能職での人材探しが困難と明記されています。物価については、大半の地区連銀でドル高の影響もあって「安定的あるいは緩やかな上昇(stable or modestly increasing)」を確認した程度でした。
原油安を背景に、前回と同じく石油・天然ガス採掘作業は「低下(declined)」を報告していました。特に石油生産、シェールオイル・ガスの生産地が集まるカンザスシティ連銀とダラス連銀のほか、今回はアトランタ連銀やセントルイス連銀が加わっています。クリーブランド連銀で、アトランタ連銀、カンザスシティ連銀では「人員削減(layoff)」も報告していました。
西海岸を中心に深刻な干ばつに見舞われるなか、農業も「わずかながら悪化した(worsened slightly)」と明記。前回より改善したとはいえ、サンフランシスコ連銀、ダラス連銀、アトランタ連銀で引き続き被害が出ていたといいます。
今回、サマリー部分で使用されたキーワードの登場回数(同じ単語の変化形を含む)は以下の通り。
「増加した(increase)」 →15回、前回は33回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→13回、前回は10回
「緩やか(moderate)」 →4回、前回は6回
「穏やか(modest)」→6回、前回は6回
「弱い(weak)」→8回、前回は5回
「底堅い(solid)」→ゼロ回、前回はゼロ回
「安定的(stable)」→9回、前回は7回
BNPパリバのデレク・リンゼー米エコノミストは、今回の内容を受け「各連銀の報告を含めたベージュブック全体で『弱い (weak)』とする文言の登場回数は44回と、3月公表分の22回、1月および2014年12月の17回から増加した」とコメント。ドル高を中心とする悪条件にも関わらず経済拡大を報告したとはいえ、過去平均の31を上回ったのは「2012年以来で初めて」とまとめていました。
ベージュブックとは別に、15日に国際通貨基金(IMF)が公表した世界金融安定報告では、ドル高に警鐘を鳴らしていました。報告書では「(前回の報告書を提出した)2014年10月から、金融安定リスクは高まった」と指摘。原油安はインフレを押し下げるものの「金融市場参加者に加え原油、コモディティの輸出業者など、大量のドルで資金調達を行った者は甚大なリスクに直面し、急速なドル高は企業のほか外貨建て債務を抱える各国に一段のリスクを与える」と分析していました。Fedに対しても「出口策への歩みを正しく判断し続ける必要がある」と釘を刺し、利上げに慎重たるべきとの認識をにじませています。今回のベージュブックを読むと6月利上げはさらに遠のいた感がありますが、4月28−29日開催のFOMCでハト派寄りへシフトするのか注目されます。
(カバー写真:hiroo yamagata/Flickr)
Comments
BOA1−3月期決算、純金利収入とトレーディング部門が不振 Next Post:
ネットフリックス株が急伸、会員数の大幅増加に反応