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米8月貿易収支、輸出が落ち込み赤字急増も心配無用?

by • October 7, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2732

Don’t Worry Too Much About Wider Than Expected Trade Deficit.

米8月貿易収支は483.30億ドルの赤字となり、市場予想の480億ドルを上回った。7月の418.07億ドル(418.63億ドルから修正)を15.6%上回り、5ヵ月ぶりの水準へ拡大。 中国発の世界経済減速の足音が聞こえるなか、ドル高効果もあって輸出減・輸入増を迎え赤字増加につながっている。

内訳をみると、輸出が前月比2.0%減の1850.94億ドルと7月から減少に転じただけでなく、2012年10月以来の水準へ縮小した。逆に輸入は1.2%増の2303.62億ドルと、反発している。 国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、634.29億ドルだった。7月の561.29億ドルから急増。足元で最大を記録している。なお2014年の貿易赤字は5050億ドルとなり、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加していた。

米8月貿易赤字の3ヵ月平均も、つれて大幅拡大。
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(出所:BEA)

バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受けて「消費財や資本財の輸入が力強く米7−9月期GDPに貢献する期待が大きい半面、エマージング国などの需要鈍化により純輸出の低下が足を引っ張るだろう」と予想した。もっとも、今回の貿易赤字は同社予想の500億ドルほど悪化せず。従って「7−9月期の純輸出におけるGDP寄与度はマイナス1.0%から0.8%にとどまる公算で、併せて同GDP見通しを従来の1.2%増から1.5%増に引き上げる」とまとめた。以下は、米8月貿易収支の輸出および輸入の内訳と各国ごとの貿易収支動向。

輸出の内訳をみると、モノは前月比3.2%減と8月の0.8%増を下回り4ヵ月連続ぶりに減少した。ドル高と世界景気の減速を背景に産業財の落ち込みが激しかったほか消費財、自動車、食品も減少に転じている。

(増加項目)
・サービス 0.6%増、前月の0.2%増と合わせ少なくとも5ヵ月連続で増加
・資本財 0.3%増、前月の0.5%増と合わせ2ヵ月連続で増加

(減少項目)
・産業財 5.9%減、前月の4.8%増から減少に反転
・自動車 3.8%減、前月の4.8%増から転じ6ヵ月ぶりに減少
・食品/飲料 2.5%減、前月の1.5%増から減少に反転

輸入の内訳をみると、モノが1.3%増となり前月の1.3%減を打ち消した。原油安だけでなく量ベースでも7.3%減と前月の5.9%増から減少に転じたため、原油を除いた場合は3.1%増となる。世界景気の減速と一線を画し、ドル高効果もあって堅調な米経済動向を裏打ちした格好だ。

(増加項目)
・食品/飲料 1.6%増、前月の5.0%減から増加に反転
・消費財 8.4%増、前月の5.1%減から増加に反転
・資本財 2.2%増、前月の0.4%増と合わせ2ヵ月連続で増加

(減少項目)
・産業財 5.3%減、前月の1.0%増に転じ3ヵ月ぶりに減少
・自動車 1.3%減、前月1.5%増から転じ4ヵ月ぶりに減少

国別での貿易赤字動向をみると、最大の赤字を抱える中国への赤字は前月比9.7%増の349.51億ドルと4ヵ月連続で拡大した。8月11日から3日間にわたり、中国人民銀行が人民元を切り下げた結果、輸出促進につながった可能性を示す。日本は反対に、9.0%減の51.51億ドル。7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で早期利上げ観測が後退しドル高・ユーロ安トレンドが巻き戻されユーロが対ドルで1月以来の高値をつけた影響か、欧州への赤字額は9.3%減の154.90億ドルと3ヵ月ぶりに減少した。主な原油輸出国への赤字は、原油先物の下落にも関わらず石油輸出国機構(OPEC)を除き増加。カナダは0.7%増の18.21億ドル、メキシコは54.8%増の56.28億ドルとなり増加トレンドを回復した。反対に、OPECは7月の1.46億ドルの赤字から、今回は8.64億ドルの黒字に反転。3カ月ぶりの黒字となる。

——米8月貿易赤字では、ドル高に煽られしっかりした需要を確認しました。一方で、やはりと言うべきか輸出は腰砕けの状況。8月でこれでは、思いやられます。6日に国際通貨基金(IMF)が公表した世界経済見通し最新版は中国を中心にエマージング国の数字が楽観寄りに感じられたのは、筆者だけではないような。

米国の成長はどうでしょうか?アトランタ連銀の試算値をチェックしてみますと・・。

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(出所:Federal Reserve Bank Of Atlanta)

6日時点で1.1%増と、1日の0.9%増から上方修正されています。米9月ISM製造業景況指数など製造業関連に不安を残すものの、世界銀行によると2013年ベースで米GDPに占める製造業の割合が12%、サービス業が78.1%(残りは政府関連)。今回の貿易収支を振り返れば、消費財が大幅に増加していたように7−9月期の成長に急ブレーキが掛かるリスクは低いでしょう。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

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