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遅ればせながら、9月FOMC議事録を振り返る

by • October 29, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off3940

Looking Back September FOMC Minutes.

こんなタイミングになるまで、9月FOMC議事録を更新せず大変失礼致しました。

今さらながら、備忘録として掲載させて頂きます。振り返ってみると、10月声明文で「世界景気と金融市場の動向で短期的見通しにリスク」とする文言を削除させた理由が垣間見れます。

▽9月FOMC、インフレと金融市場への懸念で利上げ先送り

9月16~17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、利上げ開始先送りの背景として1)低インフレ、2)世界景気、3)金融市場――を」列挙した。9月FOMC声明文と歩調を合わせ、年内利上げを視野に入れつつハト派寄りへ傾いている。FOMC議事録のポイントは、以下の通り。

▽利上げをめぐる協議
・経済活動およびインフレの見通しリスクに基づき、FOMC参加者は見通しが悪化しないと確信できる追加的な情報を待つことが賢明と判断
・1人の参加者(FOMCで利上げ票を投じたリッチモンド連銀のラッカー総裁)は、利上げ票を投じる
・数人の参加者は、経済およびインフレの見通しに下方圧力が強まったと認識
・数人の参加者は、トレンドを上回る成長およびインフレ下振れ圧力の減退を確認しない間に利上げに踏み切る場合、インフレがさらに低下するリスクを意識
・時期尚早な利上げによる、Fedの信頼低下を懸念
・数人の参加者は利上げ先送りの効果を不安視、インフレ上昇圧力を高めるだけでなく経済および市場の不均衡をもたらすと指摘
・数人の参加者は利上げ先送り効果への問題に合わせ、迅速な利上げが米経済への安心感を高めるとも主張

▽経済動向
・経済は緩やかに拡大、輸出は軟調
・Fedの目標のひとつ「最大限の雇用」に接近し、失業率は予想以上に低下
・雇用をめぐり、働き盛り世代における労働参加率の落ち込みは深刻なままと指摘
・多くの参加者は、労働市場のたるみを取り除くには長期見通しの水準を下回る必要性を認識(9月FOMCでは6月の5.0%から4.9へ修正、9月失業率は5.1%)
・賃金は広範囲にわたる上昇を確認せず、弱い労働生産性と低インフレが緩やかな上昇をもたらす可能性も
・インフレは原油安とドル高により押し下げられる公算
・ほぼ全員の参加者は、インフレが短期的に2%を回復しないと予想
・数人の参加者は、中期的にインフレが目標値「2%」に到達する確信が減退したと言及
・数人の参加者は抑制された賃金動向がインフレ上方圧力の不在を表すと認識する一方、別の数人は弱い労働生産性の伸びと低インフレが緩やかな賃上げにつながる可能性に言及
・数人の参加者は、マーケットベースでのインフレ低下を材料視しつつ、原油安が一因との見方も

▽海外動向
・中国およびエマージング国の成長減速をめぐり、経済および市場への影響を協議
・中国の成長減速は他国へ波及、米国の輸出を抑制へ
・中国およびエマージング国の動向はドル高、原油安、インフレ低下につながる

▽金融市場
・金融市場の動向が経済活動を抑制も、ドル高と中国およびエマージング国の成長鈍化で
・米株市場が下落、ボラティリティの上昇とともに社債スプレッドが拡大
・海外動向と合わせた上記の問題が米経済に与える影響は比較的小幅と判断するも、米成長の下押し圧力となりうる
・ただし米株安は、バリュエーション調整との見方も

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番であるジョン・ヒルゼンラス記者による「9月FOMC議事録、低インフレ懸念で利上げ先送り示す(Fed’s Rate Delay Spurred by Worry Over Low Inflation, Minutes Show)」と題した記事を配信。記事では、一部のFOMC参加者の見解として今回の決定が「際どい判断(close call)」だったと伝え、イエレンFRB議長もFOMC後の記者会見で年内利上げを目指す姿勢を貫いたとしている。ただ個人消費支出(PCE)ベースでのインフレが過去40ヵ月、3年以上にわたって目標値「2%」を下回るなか1)4)金融市場、2)ドル高、3)ジャンク債利回りの上昇、中国経済およびエマージング国――の動向をにらみ、見送りを決断したと報じた。

——9月FOMC議事録を振り返ると、7月分と比較し以下のポイントからハト派的と判断できよう。

・利上げをめぐり、7月FOMC議事録にあった“大半の参加者は利上げ開始が「近づいている(approaching)」と認識”との前向きな表現は見当たらず
・中国をめぐり、7月FOMC議事録では“中国株安は成長見通しに限定的な影響を与える”から、9月FOMC議事録は中国とエマージング国動向への不安が高まった表現に変化
・労働市場で、9月議事録に働き「盛り世代における労働参加率の落ち込みは深刻なまま」との文言が加わる(失業率の低下は、ベビーブーマー世代の引退による構造要因が一因との認識を強調か)
・インフレに対し、7月FOMC議事録で“数人の参加者は、足元の経済指標はインフレが中期的に2%へ回帰する根拠を示さずと主張”していたところ、9月FOMC議事録では“数人の参加者は、中期的にインフレが目標値「2%」に到達する確信が減退したと言及”と下方修正

以上の観点から、当方の基本シナリオは12月利上げであるものの可能性はやや後退したと考える。ただ、FF先物動向は12月利上げ織り込み度がやや上昇。ハト派寄りのFOMC議事録に反応し米株高を迎えるなど、金融市場の安定を促し12月利上げの見方を小幅に強めたのだろう。失望的な米9月雇用統計後に12月利上げ織り込み度が低下した分の巻き戻しも一因と考える。

(カバー写真:Ken Mayer/Flickr)

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