Private Payrolls Increase Less Than Expected In December.
米12月ADP全国雇用者数、米12月チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。
米12月ADP全国雇用者数は前月比15.3万人増となり、市場予想の17.5人万増を下回った。3月並びに6月に続き20万件に乗せた前月の21.5万人増(21.6万人増から下方修正)に届いていない。2015年の平均値20.9万人増から距離を開けたが、2010年2月以来の増加トレンドは維持した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
ADP全国雇用者数、ホリデー商戦の臨時雇用を反映し11月は上振れ。
内訳は、以下の通り。
▽企業規模別
・中小企業(従業員1~499人) 8.9万人増<前月は13.1万人増
・大企業(500人以上) 6.3万人増>前月は8.4万人増と4ヵ月ぶりの高水準
▽業種別
サービス業 16.9万人増<前月は21.1万人増
(米12月ISM非製造業景況指数の雇用は53.8と、2015年10月以来の高水準だった前月の58.2から低下)
・専門/ビジネス・サービス(派遣を含む) 6.8万人増、4ヵ月ぶり高水準>前月は6.2万人増
・貿易/輸送/公益 8.2万人増、直近で最高>前月は4.9万人増
・教育/ヘルスケア 2.9万人増、直近で最少<前月は4.2万人増
・金融 1.0万人増>前月は0.9万人増、直近で最少
・娯楽/宿泊 1.8万人増、直近で最少<前月は4.0万人増、直近で最大
財生産業 1.6万人減、過去5ヵ月で3回目の減少<前月は0.5万人増
(米12月ISM製造業景況指数の雇用は53.1、前月の52.3から改善)
・建設 0.2万人減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は1.4万人増
・製造業 0.9万人減、2月連続で減少し過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は0.8万人減
・天然資源 0.5万人減、減少トレンドを維持<前月は0.1万人減
ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「雇用の増加は力強さを残すが鈍化した」と振り返る。サービスの雇用増と財部門(製造業、建設、鉱業)の雇用減といった乖離が残るとしたほか、「大手企業は採用に積極的だが中小企業は困難を強いられている」と結んだ。
――米12月ADP全国雇用者数は堅調な水準を保ちつつ、財部門の雇用が芳しくない点は気がかりです。米12月ISM製造業景況指数をはじめ各連銀が発表する製造業センチメントも雇用を含め上向いていたにも関わらず、採用増加の兆しは見えず。トランプ次期大統領が空調大手キャリアやフォードにメキシコ移転を断念させたほか、GMやトヨタにメキシコで操業する工場に批判をぶつけたものの、自動化や効率化の流れは止められず必ずしも雇用創出につながらないようです。
▽米12月チャレンジャー人員削減予定数、前年比では8ヵ月連続で減少
米12月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比42.4%減の3万3,627人と8ヵ月連続で前年比を下回った。1999年以来の最低を示した11月からは、25%増となる。2016年通期の削減予定数は、前年同期比12%減の52万6,915人だった。
人員削減予定数、12月は前月比で増加も低水準を維持。
(作成:My Big Apple NY)
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、結果を受け「2016年の人員削減は前半に集中した」と振り返る。その上で「原油価格が再び上昇に転じており、新政権の発足で規制緩和などを通じ同セクターが恩恵を受ける可能性が高い」と予想。石油関連企業は2017年に再び拡大する方針と見込み、「不足しているのは特殊技能職だけだろう」と楽観的に結んだ。IT産業をめぐっては、2016年こそハードウェアからソフトウェアへの「転換の年」だったとの見解を寄せた。ただトランプ新政権が雇用などアウトソーシングに批判的であるため、今年どうなるかは「時がたてば分かる」と濁すにとどまった。
2016年の州別では、原油安を背景に石油生産地を抱えるテキサス州が1〜11月に続きトップに立った。2位も5~11月と変わらず、カリフォルニア州が入っている。1〜2月や4~11月と同じく、シェール関連産業が並ぶアーカンソー州も3位を維持。4位は11月に続きニューヨーク州でし、5位は7~8月に5位で9~10月に4位だったイリノイ州が11月に続き5位に入った。
1位 テキサス州 10万4,261人
2位 カリフォルニア州 8万4,224人
3位 アーカンソー州 2万6,244人
4位 ノースカロライナ州 2万5,227人
5位 イリノイ州 2万3,028人
年間で人員削減が多かったセクターのランキングは以下の通り。順位は足元のトレンドと変わらなかったが、エネルギーの削減数は前半に7万7,211人と偏っていた。
1位 エネルギー 10万3,147人(全体の20%)
2位 コンピューター 6万6,188人(全体の13%)
3位 小売 5万9,324人(全体の11%)
4位 産業財 3万3,435人(全体の6%)
5位 金融 2万2,015人(全体の4%)
12月の人員削減数ワースト5は、こちら。1位は自動車で11月の2位から浮上している。2位は政府、3位は輸送、4位は食品、5位はエネルギーでそれぞれ圏外からランクインした。11月は1位が小売、2位が自動車、3位がメディア、4位が産業材、5位が金融となる。
1位 自動車 4,705人(全体の14%)
2位 政府 3,498人(全体の10%)
3位 輸送 3,439人(全体の10%)
4位 食品 2,929人 (全体の8%)
5位 エネルギー 2,673 人(全体の8%)
リストラ実施の理由、今回の単月ランキングは以下の通り。1~4位は11月と変わらず、4位と5位に需要低下、5位は競争が圏外へ消え破産と自主退職が入った。
1位 再編 1万8,818人(全体の56%、前月も1位)
2位 閉鎖 5,501人(全体の16%、前月も2位)
3位 コスト削減 3,498人(全体の10%、前月も3位)
4位 需要低下 1,783人(全体の5%、前月も4位)
5位 破産、自主退職 900人(全体の3%、前月は圏外)
採用予定数は3万5,198人と、11月の10万8,994人から7割近く減少した。セクター別ではコンピューターがトップで圏外から浮上、2位はメディア、3位はヘルスケアなどホリデー商戦以外が牽引した。11月は1位が娯楽、2位が航空、3位が金融、4位がサービス、5位がヘルスケアとなる。
1位 コンピューター 2万6,115人 前月は圏外
2位 自動車 1,268人 前月は圏外
3位 産業材 582人 前月は圏外
4位 食品 223人 前月は圏外
5位 その他 100人 前月は圏外
――米12月チャレンジャー人員削減予定数は低水準を維持したものの、採用数がさえず米12月雇用統計を前に楽観ムードが削がれています。米12月ADP全国雇用者数も予想以下でしたし、米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)はブルームバーグ予想の17.5万人増を下回る可能性が高まってきました。
(カバー写真:Michael Fleshman/Flickr)
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