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7月FOMC、9月の資産圧縮へ一歩進む

by • July 29, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1971

Fed, One Step Closer To Balance Sheet Reduction.

7月25日〜26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通りFF誘導金利目標を1.00~0.75%で据え置いた。同時に、保有資産の圧縮を9月19~20日開催のFOMCで行う可能性を明記している。声明文の主な変更点とポイントは、以下の通り。

【景況判断】
前回:「雇用の増加はゆるやかになったが、年初来から概して堅調で、」

今回:「雇用の伸びは年初来から概して堅調で・・」
米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.2万人増と年初来で4回目の20万人超えの増加を達成。

前回:「家計の支出は足元数ヵ月で改善し、企業の固定投資は拡大し続けている」

今回:「家計の支出と企業の固定投資は拡大し続けている」
小売売上高は5~6月に減少したものの、4~6月期の国内総生産での個人消費が改善する見通しで家計の支出における表現を上方修正。

前回:「インフレは足元、食品とエネルギーを除いた場合で示されたように前年比ベースで低下し、幾分(目標値の)2%を下回る」

今回:「インフレは足元、全体と食品とエネルギーを除いた場合で示されたように前年比ベースで低下し、(目標値の)2%を下回る」
※個人消費支出(PCE)デフレーターは2月に2012年4月以来の2%乗せを達成したものの、4月は2ヵ月連続で2%を割り込み1.7%の上昇に。コアPCEデフレーターも1.5%の上昇、2015年12月以来の低水準。米5月消費者物価指数(CPI)も前年比で1.9%と6ヵ月ぶりに2%割れ、CPIコアも1.7%と2015年2月以来の水準へ減速。

【統治目標の遵守について】
文言の変更なし。景気判断を示す第一段落では目標値を下回るインフレ動向について“幾分”との表現を削除したが、見通しでは目標値2%を“幾分”下回るとの表現並びに中期的に同水準で安定するとの認識を変更せず。

【政策金利について】
FF金利誘導目標を1.00~1.25%で据え置くとの表現に変更。

【バランスシート政策】
前回:「委員会は政府機関債と政府機関が発行する住宅ローン担保証券(MBS)が償還した場合、元本をMBSに再投資し、かつ米国債の償還分は新発債に再投資するなど、一連の既存の政策を維持する」

今回:「当分の間、委員会は政府機関債と政府機関が発行する住宅ローン担保証券(MBS)が償還した場合、元本をMBSに再投資し、かつ米国債の償還分は新発債に再投資するなど、一連の既存の政策を維持する」
※文頭に“当分の間”を追加し、足元の再投資政策が時限措置であることを強調。

前回:「委員会は足元、経済全般が概して予想通りに進展すれば、バランスシートの正常化プログラムを年内開始すると予想する。このプログラムは委員会の“政策正常化原則”に明記してあるように、元本の再投資額を減少しながらFRBが保有する証券保有高を縮小するものだ

今回:「委員会は足元、経済全般が概して予想通りに進展すれば、バランスシートの正常化プログラムを比較的早期に開始すると予想する。このプログラムは、2017年6月に示した委員会の“政策正常化原則”に明記してある」
※“政策正常化原則”を別に公表、年内に実施すると声明文で明文化。

【票決結果】
票決は1月と5月に続き、全会一致だった。年内は3月と6月にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁1人が据え置きを求め反対票を投じた。輪番制である地区連銀総裁の投票メンバーはシカゴ連銀のエバンス総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ダラス連銀のカプラン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁となる。なお2016年の全会一致での決定は1月をはじめ6月、12月と8会合のうち3回目のみだった。

――7月26日にFOMC声明文が公表された直後は、米株高・米債高(利回り低下)・ドル安の反応でしたね。それもこれも、第1段落のインフレ表現に“幾分”が削除されてしまったから。そうはいっても家計支出の表現を上方修正し、インフレ見通しも変更せず。むしろ資産圧縮に向け一歩進んだ内容になっています。こちらで指摘したように、欧州中央銀行(ECB)と連携しながら資産圧縮を準備しているようなムードが漂うなか、金融市場が荒れなければ踏み切る公算。イエレンFRB議長にとっては、次期議長の政策運営に不透明性が残るなかでは、確実に置き土産としたいでしょう。ジャクソン・ホール会合でイエレンFRB議長が登場すれば、あらためて資産圧縮を示唆してくる見通しです。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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