Challenger’s Hiring Number Surges, But Private Sector Employment Slows.
米7月ADP全国雇用者数、米7月チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。
米7月ADP全国雇用者数は前月比17.8万人増となり、市場予想の19.0万人増を下回った。前月の19.1万人増(15.8万人増から上方修正)にも届かず。年初来では2番目の低水準で、3回目の20万人割れとなる。ただし、ADP全国雇用者数は2010年2月以来の増加トレンドを保つ。
ADP全国雇用者数、年初来で2番目の低水準。
セクター別では、サービスが17.4万人増と前月の17.5万人増とほぼ変わらず。雇用統計の就業者数の伸びランキングで上位常連での専門サービスが6.5万人増と前月の6.8万人増に続き力強さを示す。教育・健康も4.3万人増と支えたほか、貿易・輸送・公益も2.4万人増と堅調。娯楽・宿泊も1.5万人増と、他セクターと合わせ前月以下ながら増加し続けた。
一方で、財(製造業、建設、鉱業)は鈍化が際立ち前月の1.6万人増から0.4万人増に伸びを縮めた。建設が0.6万人増と、3ヵ月連続で増加したなかで最小に伸びに。原油価格が50ドル割れで安定的に推移する環境下、鉱業は0.3万人増と6ヵ月連続したなかでレンジ下限にとどまる。製造業に至っては0.4万人減と、直近で初めて減少した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「雇用の伸びは活発で、企業の規模に関わらず広範囲で拡大し製造業のみ減少した」と評価した。就労者数の増加ペースを堅調とみなし、「失業率は急速に低下する」と楽観的な予想に終始している。
――ADP全国雇用者数で雇用増加が目立つ専門サービスはITエンジニアや弁護士など高賃金職が多いため、賃金上昇と併せて期待が膨らみます。しかし、蓋を開けてみれば専門サービスのうち雇用が伸びているのは事務職系で4.2万人増と同セクターの伸び65%を占めていました。足元の平均時給で表れるように、雇用が伸びたからといって賃金上昇圧力が高まるかは疑問が残ります。その上、製造業の雇用も減少していました。雇用の伸びを見るより、質を確認していく必要があります。
▽米7月チャレンジャー人員削減予定数は7ヵ月ぶりの低水準、採用件数は年初来で3番目の高さ
米7月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比37.6%減の28,307人となった。2016年11月以来で最低、7月単月では1995年以来で最小を示す。前月比では8.9%減で、労働市場の逼迫を裏打ちする結果となった。年初来の人員削減予定数は、前年同期比で28.9%減の255,307人だった。
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、結果を受け「過去10年間で3万人を割り込んだのは僅か3回で、足元3年間で確認した」と振り返る。ただ「石油関連やIT関連で大幅な雇用削減を確認していないが、10〜12月にかけ発生する懸念が残る」と慎重な見解を寄せた。理由は明らかにしていなかったものの、税制改革や規制緩和の遅れを念頭に入れていた可能性がある。
人員削減予定数、2016年11月以来で最低。
年初来で人員削減が多かったセクターのランキングは以下の通り。1〜5月と変わらず1位は小売で63,989人となり、金融危機直後にあたる2009年以来で最高を示す。2〜4位も前月と変わらず、5位のみ変動した。なお6月は1位が小売、2位がヘルスケア、3位がサービス、4位が自動車、5位が通信だった。
1位 小売 63,989人(全体の25.1%)
2位 ヘルスケア 21,554人(全体の7.9%)
3位 サービス 18,022人(全体の8.4%)
4位 自動車 13,521人(全体の5.3%)
5位 食品 13,063人(全体の5.3%)
年初来での州別動向は、6月と全く順位は変わらず。1位がIT企業のメッカであるカリフォルニア州、2位がテキサス州、3位がラストベルトと呼ばれる製造業が盛んだったオハイオ州、4位は日本車メーカーが多く進出しラストベルトの一角を成すインディアナ州、5位がニューヨーク州だった。
1位 カリフォルニア州 36,883人(全体の14.4%)
2位 テキサス州 23,705人(全体の9.3%)
3位 オハイオ州 22,617人(全体の8.9%)
4位 インディアナ州 17,408人(全体の6.8%)
5位 ニューヨーク州 17,198人(全体の6.7%)
7月の人員削減数ワースト5は、以下の通り。
1位 小売 3,862人(全体の13.6%)
2位 ヘルスケア 3,634人(全体の12.8%)
3位 サービス 2,607人(全体の9.2%)
4位 航空/防衛 2,295人(全体の8.1%)
5位 消費財 1,918人(全体の6.8%)
リストラ実施の理由、7月のランキングは以下の通り。今回はM&Aが消え、原油価格がランクインした。前月は1位がコスト削減、2位が閉鎖、3位がM&A、4位が契約切れ、5位は再編だった。
1位 コスト削減 15,402人(全体の54.4%)
2位 閉鎖 8,819人(全体の31.1%)
3位 再編 1,545人(全体の5.5%)
4位 原油価格 1,000人(全体の3.5%)
5位 契約切れ 680人(全体の2.4%)
採用予定数は、前年同月比で4.5倍増の88,142人だった。前月比では2倍増となる。1〜6月期では556,493人と、前年同期比で6倍近い。今回は、小売が51,300人と大幅増で前月を含め1位を保つ。なお6月は1位が小売、2位娯楽/宿泊、3位が輸送、4位が航空、5位がサービスだった。
1位 小売 31,329人
2位 コンピューター 15,738人
3位 娯楽/宿泊 14,740人
4位 サービス 1,020人
5位 通信 845人
――米7月チャレンジャー人員削減予定数が改善を続けただけでなく、採用件数は前月比ベースで4.5倍増という快挙を成し遂げています。米7月雇用統計・非農業部門就労者数が上振れする予感に胸が膨らみますね。一方でADP全国雇用者数と雇用統計・NFPの民間就労者数との乖離幅は2014年以降で約1万人で、ADP全国雇用者数が上振れする傾向が高い。ADPに照らし合わせればNFPが鈍化する可能性をはらみますが、運命の女神はどちらに微笑むのでしょうか。
(カバー写真:Hamza Butt/Flickr)
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