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米7−9月期GDP改定値は上方修正、予想外の強さは来期も続く?

by • November 25, 2014 • Finance, Latest NewsComments Off3596

Though US Q3 Growth Revised Higher, Economists Keep Their Outlook.

米7−9月期国内総生産(GDP)改定値は前期比年率の3.9%増と、市場予想の3.3%増を上回った。速報値の3.5%からも、予想外に大きく上方修正されている。世界景気の減速をはじめ地政学的リスク、エボラ出血熱問題を跳ねのけ経済拡大の基調を堅固とさせた。大寒波の打撃から3年ぶりのマイナス成長へ沈んだ1-3月期の2.1%減、4−6月期の4.6%増を経て、1-9月期の成長率は2.1%増となり、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)の2014年末予想の達成の可能性が強まっている。

WSJ紙によると、4−9月期の半年間の成長率は4.25%増で2003年以来最高。
WSJ
(出所:WSJ)

内訳をみると、GDPの7割を占める消費は2.2%増と、速報値の1.8%増から引き上げられた。全てのセクターで上方修正されており、4−6月期の2.5%増を下回ったとはいえ堅調なペースを維持している。

(個人消費の内訳)
・耐久財 8.7%増>速報値は7.2%増、自動車に押し上げられ前期の14.1%増に続き消費をけん引
・非耐久財 2.2%増>速報値は1.1%増、前期の2.2%増に並ぶ
・サービス 1.2%増>速報値は1.1%増、前期は足元最低の0.9%増

(民間投資の内訳)
・民間投資 5.1%増>速報値は1.0%増、前期の19.1%増から鈍化
・固定民間投資 6.2%増>速報値は4.7%増と、前期の9.5%増には届かず
・非住宅 7.1%増>速報値は5.5%増、前期の9.5%増から鈍化
・機器投資(企業の設備投資)10.7%増>速報値は7.2%増、前期は11.2%増から小幅鈍化

・構造物投資 1.1%増<速報値は3.8%増、前期の12.6%増から大幅減速

(その他)
・住宅投資 2.7%増>速報値は1.8%増、前期の8.8%増から減速
・純輸出寄与度 0.78%ポイント>速報値は1.32%ポイント、前期はマイナス0.54%ポイント
・在庫投資 791億ドル増>速報値は628億ドル、前期の848億ドルから鈍化
・知的財産 6.4%増>速報値は4.2%増、前期の5.5%増

(政府支出)
政府支出 4.2%増<速報値は4.6%増、前期の1.7%増を超え2009年序盤の高水準(10月FOMC声明文で「財政政策の引き締めが経済成長を抑制している」との文言を削除したことと整合的)
連邦政府 9.9%増<速報値は10.0%増、前期の0.9%減から大幅反発し防衛支出がけん引

GDPデフレーターは1.4%の上昇。市場予想および速報値の1.3%を上回りつつ、2012年7-9月期以来の2%乗せを果たした4−6月期の2.1%から減速した。10月FOMC声明文で原油価格の下押しを指摘しつつディスインフレに絡む文言を挿入していた。コアPCEデフレーターは市場予想および速報値と一致し、1.4%。ただ、2012年1-3月期以来初めてFOMCのインフレ目標値「2%」に並んだ前期の2.0%を大きく下回っている。

企業収益は、前年比3.8%増と、前期の4.6%増から減速した。

BNPパリバのローラ・ロスナ—米エコノミストは、結果を受け「最終消費(GDP—在庫投資+貿易収支)は3.2%増と速報値の2.7%増を上回り、実質国内所得(GDI)も4.5%増だった」と評価。ガソリン価格の下落や米株高を背景に、ホリデー商戦に向け支出が一段と伸びる期待が膨らむため「消費は7−9月期の2.2%増から10−12月に2.4%増へ加速する」と楽観的な予想を示した。

——以上、米7−9月期GDP改定値はあらゆる逆境を見事に乗り越えており文句なしに好結果でした。ただし、JPモルガンとバークレイズが2.5%増で据え置くなど、エコノミストの間では10−12月期GDPはそれぞれの予想を維持。理由として、速報値で指摘させて頂いたように 1)在庫投資が強含みとなった反動で減速、2)ドル高に伴う貿易赤字の拡大を通じた純輸出の寄与度低下、3)住宅投資の鈍化——が挙げられます。

またGDP改定値に寄与した民間投資のうち、企業の設備投資が好調なペースを維持するかは不透明。ビジネス投資は景気に遅行する傾向があることも、念頭に入れておきたい。

サンクスギビング・デーにかけ大荒れの天気予報が出るように、頼みの消費も仮に去年のごとく冬将軍が猛威を振るえば鈍化するリスクも見過ごせません。またバークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストによると、「7−9月期の実質可処分所得は前年同期比2.7%増から2.3%増、名目ベースの賃金・所得も4.2%増から3.6%増へ下方修正されていた」といいます。米7−9月期GDP改定値は、バラ色の将来を約束していないんですね。

(カバー写真:The Telegraph)

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