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ECBの国債買い入れ開始は9日、インフレ動向次第で延長も

by • March 5, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2760

ECB To Start Bond Buying Program Monday Next Week.

欧州中央銀行(ECB)定例理事会では、政策金利を0.05%で据え置いた。上限金利の限界貸出金利も0.30%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.2%で維持。そろって市場予想通りの結果となった。

ドラギ総裁は記者会見で、3月9日から国債買い入れを実施すると発表した。買入期限を2016年9月末とするものの、「インフレ(回復)への道筋が持続的と判断するまで」続ける方針を表明。事実上、米連邦公開市場委員会(FOMC)が踏み切ったQE3のようなオープンエンド型であることを示した。2014年9月に発表したカバードボンド、および資産担保証券(ABS)の買い入れも継続すると言及。こうした一連の措置やQEが「ユーロ圏経済見通しを一段と改善させ、経済のたるみを減退させていく」との見方を強調している。合わせて、ECBスタッフ経済見通しで国内総生産(GDP)予想を上方修正。インフレ(HICP、EU基準消費者物価指数)見通しは2015年こそ下方修正したものの、2016年分は引き上げた。2017年には参照値2%付近にたどりつく公算となる。

▽ECBスタッフ経済見通し改訂版は、以下の通り。

2015年見通し(3月時点)
GDP 1.5%
HICP 0%
2015年見通し(2014年12月時点)
GDP 1.0%
HICP 0.7%

2016年見通し(3月時点)
GDP 1.9%
HICP 1.5%
2016年見通し(2014年12月時点)
GDP 1.5%
HICP 1.3%

2017年見通し(3月時点)
GDP 2.1%
HICP 1.8%

国債買い入れのうち、ECBの直接買い入れは8%、ユーロ圏に加盟する中銀の買い入れは92%となる。加盟国である中銀の買い入れ内訳は80%が国債、12%がユーロ機関債に。リスク分担はECBが8%、ユーロ機関が12%、各国中銀が80%を受け持つ。買い入れ対象の債券の条件として、中銀預金金利を下限とする方針も示した。

ギリシャをめぐり、ドラギ総裁は「広範にわたる理由によりギリシャ国債は取得できない」と表明した。ギリシャの融資延長が決定済みとはいえ各国議会での承認手続き中であるほか、同国債はECBの国債買い入れ条件である投資適格級を満たしていない。すでにECBが保有するギリシャ国債は発行残高の33%を超えており、国債買い入れ基準に抵触することも一因とみられる。

ドラギ総裁はまた、ギリシャへの融資が1000億ユーロに達した結果、国内総生産(GDP)比68%でユーロ圏内で最高に達したとも説明。「ECBはギリシャ中央銀行と呼ぶこともできる」と語る一幕もみせた。もっとも、諸条件を満たせばギリシャ向け資金供給の再開を検討するとも述べている。ECBは2月4日、ギリシャ国債を流動性供給措置の担保として受け入れる特例事項を解除していた。

BNPパリバのユーロ圏担当チーフエコノミスト、ケン・ワトレット氏は、ECBが公表した公的セクター買い入れプログラム(PSPP)の概要に基づき、”ユーロシステムは徐々に開始していく”との文言に注目。また、フォーマットは”発展(develop)していく必要がある”と記述している事情を汲み取り「買入準備は依然として進行中で、フル稼働する状況ではないのだろう」と予想した。

——以上、ドラギ総裁がオープンエンド型のQEをあらためて表明したためユーロドルは一段安。2003年9月以来の1.10ドルを割り込みました。欧州株は買いで反応し、独DAXは1.0%高、仏CACも0.94%高、英FTSEもつれて0.6%高で引け。米株は欧州株への資金シフトが起こりつつあるのか、NY時間の午後1時過ぎに伸び悩みを見せています。ノーベル経済学賞を受賞者であるイェール大学のロバート・シラー教授が米株から欧州株への鞍替えに言及していましたが、ECBの国債買い入れ開始で米株相場に変化が訪れつつあるようです。

(カバー写真 : ECB)

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