Fed’s Fischer Stays Neutral On September Rate Hike.
雄大な自然を背景に、フィッシャー米連邦準備制度理事会(FRB)副議長がジャクソン・ホールにてCNBCの独占インタビューに応じました。
ダドリーNY連銀総裁が「9月利上げへの説得力は低下した」と述べた一方、ジャクソン・ホール会合に出席するクリーブランド連銀のメスター総裁は「米経済は堅調、基本的な見通しに変更はない」と言及。セントルイス連銀のブラード総裁は、メスター総裁と歩調を合わせ足元の相場乱高下で「米経済見通しを変更する可能性は低い」と語るなど、FOMC参加者の間ではまちまちな状況です。
そこへ入って来た、フィッシャーFRB副議長の独占インタビュー。注目しないではいられません。
フィッシャーFRB副議長は、9月16−17日開催のFOMCをめぐる質問に対し開口一番「(決断するには)時期尚早だと思う」と発言。人民元の切り下げなどに始まり「環境の変化は比較的に最近発生したばかりで、どのような進展をたどるか見守っており、直ちに(9月FOMCでの利上げが)説得力があるかないか判断を控える」と慎重に言葉を選びました。金融市場がボラタイルな局面で活用されるキーワードを散りばめ、中立な立場を強調した格好です。
インフレが目標値2%を回復すると「自信をもつ」と述べ、ハト派寄りへ傾いた前回から修正するのも忘れない。足元で発表された米4−6月期国内総生産(GDP)改定値などの米経済指標は「素晴らしい」と評価し、米経済が回復途上にあると説明しています。
金融市場のボラティリティが「政策決定のタイミングに影響を与える」とも明言。一方で、ゼロ近辺金利政策を継続する場合のリスクにも注意を払い「長きにわたり様子見を決め込めば長引く恐れがある」とコメント。いずれのケースでも「不透明性がある」と語りました。
最近まで、9月利上げの「可能性は極めて高かった(there was a pretty strong case)」とも明かしています。FOMCまで約2週間を数え「経済指標を確認し、経済に何が起こっているか見極める時間がある」と語りました。9月4日公表の米8月雇用統計が脳裏に浮かびますね。
フィッシャーFRB副議長のインタビュー中、ダウは一時プラス圏を回復。
(出所:CNBC)
BNPパリバの米経済調査チームは、フィッシャーFRB副議長のインタビューを受け「様子見姿勢を貫いた」と振り返ります。その上で、フィッシャー発言を通じ「Fedは金融市場の乱高下が成長・インフレ見通しにどのようなインパクトを与えるか見極めようとしている」と予想。ダドリーNY連銀総裁と足並みをそろえ、FOMCを率いるフィッシャーFRB副議長は「9月利上げに消極的と判断できる」と結びました。また、6月FOMCの経済・金利見通しでのFF金利予想(ドッド・チャート)に着目。当時の段階で、フィッシャーFRB副議長かダドリーNY連銀総裁のいずれかが9月利上げ派と仮定していたところ、直近での見解を振り返り前者と判断し「ダドリーNY連銀総裁こそ、イエレンFRB議長と同じく12月利上げ派だったのではないか」とにらんでいます。
仏大手銀の米経済調査チームは、米8月雇用統計が力強い結果を示せば市場が「9月利上げを織り込んでくる」とも予想します。特に「中国が抗日70周年記念の式典に合わせ景気刺激策を打ち出す可能性」と合わせ、9月利上げ余地が広がるとも付け加えました。なおBNPパリバのメインシナリオは、12月利上げ開始です。
当サイトとしては、9月利上げに一縷の望みがあると考えます。根拠は、以下の通り。
1)Fedは利上げ開始のタイミングより、その緩やかなペースこそ重要と強調
→Fedの信用が問われ、米大統領選挙を控え議会からの圧力がさらに増す可能性も。
2)2013年にテーパリングを9月から12月に遅らせた当時は、債務上限引き上げ交渉および暫定予算案交渉の難航で国内要因だった
→FOMC声明文では確かに海外動向を注視するとの文言を盛り込み、かつ1998年のアジア危機では9月から11月に利下げで対応してきた。ただし当時のFF金利は5.5%と発射台が高く、海外動向のうち中国をめぐる米経済へのインパクトは不透明で直ちに数字に現れていない。
3)相場環境に合わせ利上げを遅らせば、「イエレン・プット」復活のリスク浮上
→2014年7月の議会証言、今年5月に開催したIMFの会合の機会を捉え、イエレン議長はこれまでバブル形成に配慮してきた。過剰流動性の誘導は避けたいのではないか。
4)米経済は雇用を中心に、堅調
→米新規失業保険申請件数、米6月雇用動態調査、米8月消費者信頼感指数、米4−6月期GDP改定値など、雇用は軒並み明るい内容だった。
興味深いことに、ここにきてウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙もあえてFed番で知られるジョン・ヒルゼンラス記者ではなくジャスティン・ラハート記者の署名記事で9月利上げの可能性を報じてきました。フィッシャーFRB副議長の発言通り、9月利上げ議論に「勝負あった」と判断するのは、時期尚早でしょう。
(カバー写真:Reuter via CNBC)
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