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米10月雇用動態調査、求人数は減少も新規採用数が増加

by • December 9, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2485

Job Openings Decrease, But New Hires Hit 4-Month High.

米労働省が発表した米9月雇用動態調査(JOLTS)の件数ベースでは求人数が前月比2.7%減の538.3万人と、市場予想の550万人を大幅に下回った。前月の553.4万人以下となり、減少に反転。2000年の統計開始以来で最高を記録した7月の566.8万人が遠のいた。なお米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、改定値で29.8万人増と、年初来で最高に達していた。

求人数が減少した半面、新規採用人数は1.1%増の513.7万人と前月の微減から増加に転じた。4ヵ月ぶりの高水準となる。リセッションが開始した2007年12月時点の500万人という大台を8ヵ月連続で保った。なお6月は518.2万人と、人数自体で年初来で最高に至る。10月は離職者数が0.5%減の486.3万人となり、9月の横ばいから小幅減に転じた。ただ、少なくとも年初来で2番目に低い水準だった7月の479.6万人を上回る水準を保つ。定年や自己都合による退職者は1.9%増の277.9万人となり、5ヵ月ぶりの低水準だった前月の272.7万人から増加した。解雇者数は6.5%減の167.0万人と、2014年9月以来で最低だった7月に次ぐ低水準だった

JOLTの求人率をみると、前月の3.7%から3.6%へ低下した。民間が前月の4.0%から3.9%へ緩んでいる。民間のうち製造業、小売、ヘルスケアが前月を下回った。特に専門・サービスは前月の5.7%から5.1%へ急低下。同セクターは足元で8月に5.0%から5.7%へ急伸した反動とも考えられる。一方で建設が上昇していた。政府は下方修正された前月分もあり、3ヵ月連続で2.2%だった。

就業者に対する新規採用率は、4ヵ月連続で3.6%だった。2014年12月の高水準に並んだ6月の3.7%、およびリセッションに陥った2007年12月の3.8%以下を保つ。全体は横ばいだったものの民間は前月の3.9%から4.0%へ、政府も前月1.5%(1.6%から下方修正)から1.6%へ戻した。

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は4ヵ月連続で3.4%だった。民間は前月まで2ヵ月連続で3.8%だったものの、3.7%へ低下。もっとも政府が前月の1.4%から1.6%へ上昇、3ヵ月ぶりの高水準となり全体を押し上げた。自発的離職率は4月から6ヵ月連続で1.9%と、2008年4月以来の高水準だった3月の2.0%を下回る。2007年12月の2.1%到達が、またお預けになった。解雇率は前月の1.3%を下回り、1.2%だった。

10月までの過去1年間で、離職者数は5830万人だったところ採用人数は6100万人だった。採用者の純増幅は、270万人増となる。求人1件当たりの競争倍率は1.5倍となり、9月と変わらず。もっとも、景気後退に突入した2007年12月の1.8倍を下回る水準を維持した。

JOLTS、米雇用統計と足並みをそろえ新規採用率の上昇が顕著。
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(出所:My Big Apple NY)

——以上、米10月雇用動態調査を受けたイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。前月に続き、9項目中4項目が合格点に達していました。()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字を示します。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 3.6%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%

3)自発的離職率—×
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 1.9%

4)採用率—×
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.6%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 21.8万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 5.0%

7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 9.9%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 25.7%

9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.5%

——米10月雇用動態調査は求人件数が減少したとはいえ、新規採用件数が増加しました。離職者数が減少しながら解雇者数の減少が背景にあり、労働市場の健全ぶりが浮き彫りとなっています。米11月労働市場情勢指数(LMCI)も7ヵ月連続で上昇しており、米11月雇用統計も文句の付けどころがなく、米連邦公開市場委員会(FOMC)による16日の利上げはまさにdone dealといったムード。懸念材料としては、大企業の合併・買収(M&A)加速に伴う再編と、原油安です。

前者は製薬大手ファイザーとアラガンが買収で合意し、ファイザーは法人税率引き下げを目指し本社機能をアイルランドへ移転させる方針ですよね。NY時間8日引け後に飛び込んできたダウ・ケミカルとデュポンの合併ニュースでは、本社機能こそ米国で維持する見通しながら人員削減をはじめ再編の波を加速させかねない。米11月チャレンジャー人員削減予定数でも、リストラの理由トップは原油安を超えて「再編」であり、こうしたM&Aの動向には注意が必要でしょう。

原油安はシェール関連企業の貸倒、倒産が懸念されるため資本財だけでなく金融関連の影響が気になります。金融セクターといえばモルガン・スタンレーは8日、債券部門を中心に1200人の人員削減を発表。英銀バークレイズも投資銀行部門の人員削減を予定すると伝えられ、為替取引など複数の不正問題に揺れるドイツ銀行もトレーディング部門の人員削減に踏み切るとの報道がありました。

8日のNY市場は、WTI原油先物とブレント原油の引け値が2009年2月以来の水準まで落ち込みました。セクター別動向をみると、エネルギー関連に次いで金融関連の下落が目覚ましい。

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(出所:ブルームバーグを基にMy Big Apple NY)

原油安を発火点とした景気減速というのは、2016年のリスクシナリオとして急送に台頭してきた感があります。

(カバー写真:Michael Tapp/Flickr)

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