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米2月ISM製造業から米1月建設支出まで、改善の兆し

by • March 2, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2097

ISM Manufacturing Sentiment Recovers From 7-Year Low.

ISMやマークイットが発表した1月の製造業景況指数、米建設支出をおさらいしていきます。

米2月ISM製造業景況指数は49.5となり、市場予想の48.5を上回った。2009年6月以来の低水準近くにあたる前月の48.2から、小幅改善。6ヵ月ぶりの分岐点乗せが視野に入った。内訳は以下の通りで、生産をはじめ在庫、雇用、仕入れ価格など主要項目が全般的に上向いている。詳細は、以下の通り。

・新規受注 51.5、2 ヵ月連続の分岐点乗せで2015年5月以来の高水準を維持=前月は51.5、約6ヵ月平均は50.2
・生産 52.8>前月は50.2、6ヵ月平均は51.1
・雇用 48.5、3ヵ月連続で分岐点割れ>前月は45.9と2009年6月以来の低水準6ヵ月平均は48.5

・在庫 45.0、8ヵ月連続で分岐点割れ>前月は43.5、6ヵ月平均は45.0
・新規輸出受注 46.5、2ヵ月連続で分岐点割れで5ヵ月ぶり低水準<前月は47.0、6ヵ月平均は47.7
・仕入れ価格 38.5、分岐点割れを継続>前月は33.5、2009年4月以来の最低、6ヵ月平均は36.3

・入荷時間 49.7、分岐点割れ<前月は50.0、6ヵ月平均は49.8
・受注残 48.5、9ヵ月連続で分岐点割れ>前月は43.0、6ヵ月平均は43.3

ISM製造業景況指数と各連銀景況指数、2月の結果はご覧の通り。

ism

(作成:My Big Apple NY)

ISMのブラッドリー・ホルコム会長は、結果に対し「底打ちを確認したように見える」と振り返った。在庫も改善したとはいえ、これまで全体を押し下げてきており「在庫がなければ分岐点を回復した」と指摘。米経済は「どこよりも健全だ」と自信を覗かせた。

▽米2月マークイット製造業PMI・確報値、小幅に上方修正

米2月マークイット製造業PMI・確報値は51.3となり、市場予想の51.2を上回った。2012年10月以来の水準へ落ち込んだ速報値の51.0から、小幅ながら上方修正されている。前月の52.4には、届かなかった。内訳をみると、雇用が5ヵ月ぶり低水準から回復を示したものの、生産は2013年10月以来の低水準にとどまる。

マークイット製造業PMI、ISMに続き底入れを示唆?

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(出所:Markit)

マークイットのクリス・ウィリアムソン主席エコノミストは、結果を受け慎重な姿勢を崩さず「製造業活動にまた一つ停滞の予兆を加えた」と振り返る。特に「輸出(の減少)が引っ張られ生産と受注が悪化し、仕入れ価格も2012年半ば以来で最低」と指摘。背景として「2014年半ばからのドル高」を挙げたほか、原油安によるエネルギー産業の打撃、金融市場のボラティリティ、世界経済の減速、米大統領選挙の不透明感もあり「製造業が金融危機以来で最も困難な局面を迎えている」と悲観的に結んだ。

▽米1月建設支出、非住宅が支え2015年5月以来の高水準

米1月建設支出は前月比1.5%増の1兆1408億ドルとなり、市場予想の0.3%増を回った。前月の0.6%増(0.1%増から上方修正)を超え、2015年5月以来の高水準を遂げている。内訳をみると住宅が±0%と増加を2ヵ月で止めたものの、非住宅が2.5%増と2ヵ月連続で増加し、直近で最大の伸びを成し遂げた。建設支出の前年比は10.4%増と、前月の8.2%増(速報値ベース)から伸びを拡大した。

民間は0.5%増と、前月の0.3%減を打ち消した。ヘッドラインと同じく住宅が±0%と2ヵ月連続の増加にブレーキを掛けた住宅が2.1%減と前月の0.7%減と合わせ2ヵ月連続で減少した。非住宅が1.0%増と3ヵ月ぶりに増加に転じた。内訳をみると16項目中、11項目が増加。前月の4項目から大幅に増加した。特に高速・道路が14.6%増と最も伸びが著しく、保存・開発が10.0%増と2桁で続いた。そのほか宿泊が6.3%増、ISM製造業景況指数で改善がみられた製造業も4.2%増と強い。一方でヘルスケアが4.3%減となり、通信も4.2%減と弱含んだ。

公共は4.5%増と、前月の3.3%増と合わせ2ヵ月連続で増加した。住宅が1.9%減と2ヵ月連続で減少したが、非住宅が4.6%増と前月の3.6%増と合わせ、2ヵ月連続で大幅増を遂げている。特に高速・道路が14.7%増と牽引し、保存・開発も10.3%増と好調。そのほか通信が6.0%増、電力も5.0%増としっかりしている。

JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受け「過去分の上方修正を受け、米10-12月期国内総生産(GDP)確報値の予想を従来の1.0%増から1.1%増へ引き上げる」した。ただし、今回明らかになった非住宅建設の回復は織り込み済みだったため「米1-3月期GDP予想は「2.0%増」で維持した。

——米2月ISM製造業景況指数と米2月マークイット製造業PMI・確報値は改善を示しつつ、双方のエコノミストの見解は両極端でした。ISM側は「各連銀の製造業景況指数と全国の景況指数とは違う」とも指摘しており、好転の可能性を強調するほど。ISMが強気な理由は、シェール関連企業の破綻懸念が後退していることも一因なのかもしれません。天然ガス生産大手チェサピーク・エナジーは2月24日、資産売却が想定以上に順調で5億ドルの社債償還を全額行うと発表。3月1日には石油・天然ガス生産大手マラソン・オイルが増資の方針を固めたほか、同アナダルコ・ペトロリアムも年内30億ドル相当の資産売却の計画を発表し設備投資も50%削減すると明らかにしました。スイスの資源会社グレンコアもバランスシート改善を推し進めるなかで、3月1日に2017年に復配の可能性が報じられています。資産売却が良好に進めば、シェール関連あるいは資源会社発の金融危機は回避されるでしょう。

(カバー写真:Miles Banbery/Flickr)

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