Wall Street Bull

1月Fedサーベイ、米経済の脅威に「保護主義」が浮上

by • February 1, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1479

Wall Street Starts To Worry About Protectionism In The U.S.

トランプ米大統領が就任して、初めての米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文が現地時間の1日に公表されます。経済金融局CNBCが恒例のFedサーベイを行ったところ、ウォールストリートの間で据え置きの回答は98%でした。次回利上げの予想平均値は前回通り5月でしたが、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見などを予定する6月14~15日開催のFOMCが43%と優勢。次に多かった回答は、3月13~14日予定のFOMCで35%となり、少なくともFedは上半期に1度利上げすると見込まれています。

2017年以降のFF金利予想中央値は前回から上方修正されました、合わせて年内の利上げをめぐっては利上げ回数を引き上げ、FOMCと同じく3回程度を予想。利上げサイクルの終了時期は前回通りで2019年4~6月期で、着地点もほぼ変わりません。注目のバランスシート見通しは、年内実施を見込む回答を確認しました。

トランプ政権発足にあたり、米経済の脅威に変化が現れています。1位は「保護主義」で変わらなかったものの、トランプ政権によるイスラム圏7ヵ国の入国禁止を受け前回の28%から51%へ急伸しました。以下は41名のエコノミストをはじめストラテジスト、マネー・マネージャーなどを対象に1月26~28日に実施した結果で、前回は2016年12月分の調査を表します。

1)1月FOMCでの政策決定はどうなるか
・利上げ 2%
・利下げ 0%
・据え置き 98%

2)次回の利上げ時期
・6月 43%
・3月 35%
・5月 10%

3)2017年の利上げ回数、予想平均
・2017年 2.78回>前回は2.5回

4)2016~2018年、それぞれの年末FF金利予想平均値
・2017年末 1.32%>前回は1.26%
・2018年末 2.15%、統計開始以来で2番目の高水準>前回は2.10%
・2019年 2.70%、統計開始以来で最高>前回は2.67%

FF金利予想は、前回見通しから上方修正。

ff

(出所:CNBC)

5)Fedの利上げ終了着地点、予想平均値
・2.91%<前回は2.92%と約1年半ぶりの高水準

6)今回の利上げサイクル終了時期、予想平均値
・2019年4~6月期=前回は2019年4~6月期

7)バランスシートを縮小する時期
1位 2018年1月 15%
2位 縮小しない 13%
3位 2017年6月、2017年12月 10%

8)トランプ米大統領の政策への影響

経済
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 13%
・影響なし 5%
・いく分加速/上昇/拡大 67%
・大幅な加速/上昇/拡大 15%

雇用
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 13%
・影響なし 23%
・いく分加速/上昇/拡大 63%
・大幅な加速/上昇/拡大 3%

財政赤字
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 3%
・影響なし 0%
・いく分加速/上昇/拡大 55%
・大幅な加速/上昇/拡大 43%

インフレ
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 0%
・影響なし 8%
・いく分加速/上昇/拡大 80%
・大幅な加速/上昇/拡大 13%

米株
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 13%
・影響なし 8%
・いく分加速/上昇/拡大 64%
・大幅な加速/上昇/拡大 15%

米国債利回り
・大幅な減速/低下/下落/縮小 0%
・いく分減速/低下/下落/縮小 0&
・影響なし 0%
・いく分加速/上昇/拡大 75%
・大幅な加速/上昇/拡大 25%

9)トランプ米大統領の経済政策に対する評価
所得税減税
・非常に悪い 0%
・いく分悪い 8%
・中立 18%
・いく分良い 54%
・良い 21%

法人税
・非常に悪い 0%
・いく分悪い 0%
・中立 8%
・いく分良い 45%
・良い 48%

通商
・非常に悪い 55%
・いく分悪い 28%
・中立 5%
・いく分良い 10%
・良い 3%

規制緩和
・非常に悪い 3%
・いく分悪い 3%
・中立 0%
・いく分良い 36%
・良い 59%

10)トランプ米大統領の対中政策による米中経済の影響
・中国を犠牲に米成長の拡大 15%
・米国を犠牲に中国成長の拡大 3%
・米中ともに成長悪代 8%
・米中ともに成長鈍化 53%

11)トランプ米大統領の対メキシコ政策による米墨関係の影響
・メキシコを犠牲に米成長の拡大 30%
・米国を犠牲にメキシコ成長の拡大 0%
・米墨ともに成長悪代 3%
・米墨ともに成長鈍化 58%
・米僕ともに変化なし 5%

12)トランプ次期大統領が国外移転企業に35%輸入関税を課した場合の成長への影響
・大幅に減速 28%>前回は21%
・幾分減速 43%<前回は64%
・影響なし 0%<前回は7%
・幾分拡大 28%>前回は9%
・大幅に拡大 0%<9%

13)米国が国外移転した企業を含め輸入関税を賦課した場合、報復措置を取る可能性
中国
・可能性あり 93%
・可能性なし 3%
・分からない 5%

メキシコ
・可能性あり 73%
・可能性なし 18%
・分からない 10%

カナダ
・可能性あり 65%
・可能性なし 25%
・分からない 10%

日本
・可能性あり 70%
・可能性なし 20%
・分からない 10%

14)共和党下院が提唱する国境税への評価
・前向き 18%
・中立 30%
・後ろ向き 45%
・分からない 8%

15)インフラ投資拡大、税制改革、規制緩和など財政刺激への評価
・前向き 70%
・中立 10%
・後ろ向き 18%
・分からない 3%

16)トランプ米大統領によるツイッターを通じた企業批判、雇用への影響
・大幅増加 5%
・いく分増加 50%
・変化なし 18%
・いく分増加 28%
・大幅増加 0%

17)トランプ次期大統領が指名するFRB理事が支援する政策は
・迅速な利上げ 43%<前回は46%
・一段とゆるやかな利上げ 20%>前回は5%
・分からない 38%<前回は50%

18)トランプ次期大統領がイエレンFRB議長(任期は2018年1月末まで)を再指名するか
・イエス 5%<前回は11%
・ノー 74%<前回は82%
・分からない 21%>前回は7%

19)トランプ米大統領が指名する次期FRB議長
1位 ジョン・テイラー元財務次官 33%<前回は38%
2位 分からない 19%<22%
3位 ケビン・ウォルシュ元FRB理事 17%>前回は14%
4位 グレン・ハバード元CEA委員長 8%>前回は3%
5位 ジェローム・パウエルFRB理事 4%>前回は3%

20)足元の米株高の背景は
・堅調なファンダメンタルズと業績見通し 26%>前回は18%
・新政権の政策期待 72%<前回は82%

21)トランプ新政権がもたらす政策の変化に対する市場の見通しは
・過度に楽観的 56%=前回は56%
・現実的 39%<前回は42%
・過度に悲観的 3%>前回は2%
・分からない 3%>前回は0%

22)GDP見通し
・2017年 2.51%<前回は2.57%と統計開始以来で最高
・2018年 2.75%<前回は2.76%
※トランプ勝利後、GDP見通しの上方修正幅平均は2017年で0.24%ポイント、2018年で0.39%ポイント

成長見通しは、米大統領令を頻発するなか若干の下方修正。
gdp
(出所:CNBC)

23)CPI見通し
・2017年 2.38%、統計開始以来で最高>前回は2.36%
・2018年 2.57%<前回は2.64%

24)S&P500見通し
・2017年12月末 2,354<前回は2,357、統計開始以来で最高
・2018年12月末 2,453<前回は2,480

25)米10年債利回り
・2017年12月末 2.96%>前回は2.90%
・2018年12月末 3.43%<前回は3.44%

26)米国にとって最大の脅威は?
1位 保護主義 51%、統計開始以来で最高>前回は28%
2位 世界経済の減速 15%、統計開始以来で最低<前回は19%
3位 トランプ米大統領の気性 5%(←New!)

27)米国、1年以内の景気後退入りリスク
・18.5%>前回は18.1%と約1年半ぶりの低水準

28)最大の関心事は?
・経済 49%<前回は52%
・その他 21%>前回は15%
・株式 15%<前回は23%
・債券 15%
・為替 0%=前回0%

――いかがでしたか?米大統領令の影響で対外関係の悪化、並びに米国内ではIT企業をはじめ建設業、サービス業など幅広い分野で適正人材の雇用確保が危ぶまれ、“米経済への脅威”として“保護主義”が台頭しました。景気後退リスクの質問で、今回初めて「トランプ米大統領の気性」が2位へ急浮上しています。

逆に全体的に米経済や雇用、インフレは回復トレンドを維持する見通し。入国禁止措置にワシントン州やNY州、マサチューセッツ州などが米政権と米国土安全保障省を相手取り連邦地裁に米大統領差し止めを提訴するなど、司法が介入すると考えられているのか。はたまた保護主義的な政策がトランプノミクスで相殺されると見越しているのか、いずれにしてもウォール街は慎重なる楽観姿勢で見守っているようです。

(カバー写真:Jean-Baptiste Bellet/Flickr)

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