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1月FOMC、トランプ政権発足後で初の声明文は様子見モード

by • February 2, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1857

Fed Stays Pat, Yellen’s Testimony Is Next.

1月31日〜2月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通りFF誘導金利目標を0.50~0.75%で据え置いた。トランプ政権発足後初となる今回の声明文では、景況感などにつき上方修正せず。米経済が「ゆるやかに拡大している」から「ゆるやかに拡大し続けている」との表現に差し替えた通り、微調整にとどまった。インフレに対しては、原油価格の下落やドル高による輸入物価圧力の減退に関わる文言を削除する程度。新たな年を迎え地区連銀総裁の投票メンバーが一新されたところ全会一致でスタートさせ、トランプ政権が経済政策に着手するまで様子見モードを決め込んだ。

声明文の主な変更点とポイントは、以下の通り。

【景況判断】
前回:「経済活動は年央からゆるやかに拡大している」

今回:「経済活動はゆるやかに拡大し続けている」
※米10〜12月期国内総生産(GDP)速報値が3期ぶりの低水準で、2016年としては3年ぶりの2%割れも、拡大トレンドは維持。また企業の設備投資の改善を背景に、1~3月期は2%成長の期待を残す。

前回:「雇用の増加は足元堅調で、失業率は低下した」

今回:「雇用の増加は堅調を維持し、失業率は足元の低水準で推移し続けている」
米12月失業率は4.7%と景気後退入り以前の水準まで低下した11月の4.6%から上昇し、表現を若干修正

前回:「家計支出はゆるやかに拡大したが、企業の固定投資は軟調なままだ」

今回:「家計支出はゆるやかに拡大し続けた一方、企業の固定投資は軟調なままだ」
※10~12月期GDP速報値では個人消費は鈍化も米12月個人消費支出は堅調、企業投資の固定投資のうち機器投資は5期ぶりに増加に反転した点については後述。

前回:なし

今回:「直近の消費者と企業のセンチメントは、改善した」
米1月消費者信頼感指数は約15年ぶりの高水準近くを維持し、米1月ISM製造業景況指数も2014年11月以来のレベルを回復、米12月NFIB中小企業楽観度指数も14年ぶりの高水準を達成。

前回:「インフレは年初から上昇したが、年初にみられたエネルギー価格や非エネルギー輸入品の下落を一部反映し、委員会が掲げるインフレ2%という長期的な目標を依然として下回る。」

今回:「インフレは足元数四半期で上昇したが、委員会が掲げるインフレ2%という長期的な目標を依然として下回る。」
米12月消費者物価指数(CPI)はヘッドラインとコアとも2014年5月以来初めての2%乗せを達成、しかし米12月コアPCEデフレーターは前年比で伸び悩み。

前回:「市場ベースのインフレ動向は大いに(considerably)上昇したが、依然として低い(still are low)。調査ベースの長期インフレ見通しは概して、ここ数ヵ月でほぼ変わらなかった。」

今回:「市場ベースのインフレ動向は低いままだ(remain low)。調査ベースの長期インフレ見通しは概して、ほぼ変わらなかった。」
※5年先5年物フォワード・レートは上昇傾向も、市場ベースのコアインフレ動向は前年比1.5%を維持し落ち着く状況。

声明文には、トランプ政権発足に絡み新たな文言を挿入せず。
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(出所:Gage Skidmore/Flickr)

【統治目標の遵守について】
前回:「インフレは、エネルギー価格や輸入品価格の下落などの一時的な影響が減退し、労働市場が勢いづくにつれ、中期的に2%の水準へ上昇する。」

今回:「インフレは、中期的に2%の水準へ上昇する。」
※原油価格が2015年7月以来の53ドル台を回復後も大台を維持し、ドル高に一服感が流れるなかで一時的要因を削除。

市場関係者が注目する「暗記的な経済見通しのリスクは、概して均衡」、「委員会はインフレ動向、並びに世界経済や金融動向を注視していく」との文言を維持。

【政策金利について】
FF金利誘導目標を0.50~0.75%で“維持する”との表現以外は変更なし。

【バランスシート政策】
変更なし。

【票決結果】
票決は全会一致だった。輪番制である地区連銀総裁の投票メンバーはシカゴ連銀のエバンス総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ダラス連銀のカプラン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁となる。2016年の全会一致での決定は1月をはじめ6月、12月と8会合のうち3回目のみだった。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、デビッド・ハリソン記者による「Fedは政策金利を据え置き、次回利上げを示唆せず(Fed Leaves Policy Rate Unchanged, Offers No Hint on When It Might Next Move)」と題した記事を配信。トランプ政権による通商政策や財政出動次第で、イエレンFRB議長は「適正な政策の道筋に影響を与える」と発言したものの、今回は様子見を決め込んだとまとめている。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、声明文を受けて「わずかな修正にとどまり、利上げに急いでいない」で据え置いた。新たに加わった文言“家計と企業のセンチメントは改善した”をめぐっても、特に重要視せず。年内の利上げについて「2回、次は6月」との予想を据え置いた

――トランプ政権の発足に伴い矢継ぎ早に出される米大統領令などを受け、ワシントンD.C.は蜂の巣を突いたような大騒ぎなのでしょうが、FRBは比較的静かに年初を迎えました。次回利上げの示唆を与えなかっただけでなく、FOMC高官から議論の必要性が取り上げられてきたバランスシート縮小の可能性にも一切触れていません。まだトランプ政権がスタートしてから間もないだけに、選択肢を確保した格好です。FF先物動向では3月利上げ織り込み度は32.0%、6月は71.4%で、決戦は6月が有力視されている状況に変わりありません。蘭、仏の選挙を控えて3月のFOMC会合では、さすがに利上げは難しいでしょう。

注目は、14~15日に予定するイエレンFRB議長の議会証言です。米1月雇用統計が労働市場の一段の改善を示せば、イエレンFRB議長が引き締めモードを強めるのか見どころです。22日公表のFOMC議事録ではバランスシートをめぐる議論が明るみになり、あらためて利上げ見通しに変化が現れる余地も残ります。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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