14568578289_acff46a4c9_z

米6月個人消費、所得の低迷をよそに増加し貯蓄率は低下

by • August 3, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off2038

Consumer Spending Continue To Rise But Income Growth Weak.

米6月個人消費支出は前月比0.1%増と、市場予想に並んだ。前月の0.2%増(0.1%増から上方修正)を下回りつつ、15ヵ月連続で増加している。インフレを除く実質ベースでの個人消費は±0%と、市場予想の0.1%増並びに前月の0.2%増に届かず。ただし、4ヵ月連続でプラスとなった。1~2月に金融危機後の2009年2~4月以来となる2ヵ月連続で減少したが、改善を示す。実質ベースでの個人消費は前年比で2.4%増となり、前月の2.7%増を下回り2016年3月以来の水準へ鈍化した。

個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。新車販売台数が6月も1,700万台を割り込んだため耐久財が弱かった上、非耐久財はガソリン価格の下落が重石となっている。サービスも堅調な流れを保った。

・モノは0.384%減、前月の0.259%減に続き過去5ヵ月間で3回目の減少
>耐久財 0.371%減、前月の0.007%増から転じ過去5ヵ月間で初の減少
>非耐久財 0.395%減、前月の0.397%減を含め過去5ヵ月間で3回目の減少
・サービス 0.270%増、前月の0.344%増に続き少なくとも9ヵ月連続で増加

米6月個人所得は前月比±0%増と、市場予想並びに前月の0.4%増を上回った。増加トレンドを6ヵ月で止めている。前年比は実質ベースで前年同月比1.2%増と、前月の1.4%増を下回りつつ6ヵ月連続で増加した。可処分所得は前月比±0%増、増加トレンドを5ヵ月連続でストップさせている。実質の可処分所得は0.1%減と、前月の0.5%増を下回り6ヵ月ぶりに減少した。前年同月比では1.2%増と、前月の1.4%増に届かなかったものの6ヵ月連続で増加した。貯蓄率は3.8%と、前月の3.9%から上昇。貯蓄率は米大統領選が実施された2016年11月以降、データ改定を経て金融危機発生の直前以来の3%台へ落ち込み2016年12月には3.2%と2007年12月以来の水準まで低下していた。

個人所得、前年比の実質ベースで伸び鈍化は明白。

pce1
(作成:My Big Apple NY)

所得の内訳は、以下の通り。

・賃金/所得 0.4%増、前月の0.2%増を上回る(民間が0.4%増と前月の0.1%増から伸びを広げ、サービス部門が0.4%増と前月の0.2%増を超えたほか、財部門(製造業、鉱業、建設)も0.3%増と前月の±0%から改善)
・不動産収入 0.1%減、前月の0.1%増から悪化(農場が19.1%減と6ヵ月ぶりに減少、非農場は0.4%増と前月の0.6%増と合わせ2ヵ月連続で増加)
・家賃収入 0.6%増、前月を含め14ヵ月連続で増加
・資産収入 1.8%減と前月の1.3%増から大幅減少(配当が3.0%減と5ヵ月ぶりに減少。金利収入は金利低下を背景に0.9%減と3ヵ月連続で減少)
・社会補助 0.3%増、前月の0.2%増を含め2ヵ月連続で増加
・社会福祉 0.2%増、前月の0.1%増を含め2ヵ月連続で増加(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.1%増と前月の0.2%増を含め増加トレンドを維持、メディケア=高所得者向け医療保険は0.2%増と増加基調を維持、失業保険は1.1%増と6ヵ月ぶりに増加)

個人消費支出(PCE)デフレーターは原油価格が50ドル割れで推移するなか、5月と変わらず前月比±0%で市場予想と一致した。前年比は1.4%上昇し市場予想の1.3%を上回ったが、前月の1.5%(1.4%から上方修正)を超えた。2012年4月以来の2%乗せを達成した2月の2.1%から減速を続け、2016年9月以来の低水準に並んだ。コアPCEデフレーターは前月比0.1%上昇し、市場予想及び前月と一致し3ヵ月連続で上昇。コアPCEデフレーターの前年比は1.5%上昇し市場予想の1.4%を上回りつつ、前月と同じく2015年12月以来の低水準だった。PCEとコアは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を2012年5月以来下回り続けている。

PCE、コアPCEそろって減速続きに。

pce

(作成:My Big Apple NY)

――個人消費が堅調に伸びる一方で平均時給の伸び率がさえない通り所得が芳しくなく、貯蓄率は低迷しています。消費の伸び余地は着実に狭まる上、こちらで指摘した通り可処分所得に占める個人の債務返済額の割合も上昇中。賃金が伸び悩めばインフレ上昇圧力が加わるはずもなく、米国の成長率は加速しようがありません。イエレンFRB議長は議会証言で低インフレや低水準にある自然利子率を背景に一段の利上げに慎重な見解を寄せ、かつフィッシャーFRB副議長も7月31日に政治的混乱に伴う景気鈍化に注意を払っていました。セントルイス連銀のブラード総裁も2日、短期的にとの条件をつけながら追加利上げに反対の立場を表明。こちらでご説明したように政策自由度を確保するためにFedは資産圧縮を開始したい一方で、成長頭打ちを念頭に入れているに違いありません。

(カバー写真:Steven Guzzardi/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.