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米10月雇用動態調査、採用者数が過去最高でも低い賃上げ圧力

by • December 12, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1699

Job Openings Decrease, Hires Hit Highest As Hurricane Effect Fades.

米労働省が発表した米10 月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は599.6 万人と、市場予想の613.5万人を下回った。ハリケーン“ハービー”、“イルマ”等の直撃を経て、過去3番目の高水準だった前月の617.7万人(修正値)から2.9%減少しただけでなく、5ヵ月ぶりに600万人割れを示す。

新規採用人数はハリケーンで減少した反動で前月比4.4%増の555.2万人と、3ヵ月ぶりに増加した。2006年11月以来の水準を抜け、過去最高を更新している、リセッションが開始した2007年12月時点の500万人という大台は25ヵ月連続で超えた。米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)と、整合的だった。

離職者数は前月比1.3%減の517.8万人と3ヵ月連続で減少した。6ヵ月ぶりの低水準となる。定年や自己都合による退職者は±0%の318.0万人、解雇者数は6.6%減の163.1万人と4ヵ月連続で減少した。

求人数が減少し新規採用者数は横ばいだったものの、両者の乖離は続く。

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(作成:My Big Apple NY)

求人率は4ヵ月連続で4.0%と統計開始以来の最高を経て、今回は3.9%へ低下した。民間が統計開始以来の最高である4.3%から4.2%へ低下したためで、政府は前月の2.3%で変わらなかった。

就業者に対する新規採用率は3.8%と、前月の3.6%を超え2016年2月以来の高水準だった。ハリケーンの影響で減少した前月から回復したとみられる。民間が4.2%と前月の4.0%から上昇、政府は3ヵ月連続で1.5%だった。

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月に続き3.6%だった。民間が前月の4.0%から3.9%へ低下しつつ、政府は1.5%で前月と横ばいだった。自発的離職率は前月に続き2.2%。解雇率は4ヵ月連続で1.2%を経て1.1%へ低下し、2000年12月に統計が開始してからの最低に並んだ。

解雇者数が寄与し解雇者数が減少、自発的離職者数は横ばいながら労働市場のタイト化を表す。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中、7~9月の5項目から6項目へ増えました。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字です。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 3.9%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.1%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.2%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 17.0万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 4.1%

7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 8.0%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 24.8%

9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.7%

――雇用指標では労働市場は健全そのものといった印象です。労働市場における失業(unemployment)と求人(vacancy)の関係を表したUV曲線では、失業率の低下と求人率の上昇を確認しています。

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(作成:My Big Apple NY)

UV曲線では健全に見える労働市場、JOLTSでは求人数と採用数の乖離が続きスキルギャップの状況を維持していました。こちらで指摘したように、11月ベージュブックで明記されたような賃上げ圧力がにじみ出ていません。むしろ、過去と比較して有効求人倍率と平均時給(ここでは、生産労働者・非管理職)のゆるやかな比例関係が綻びをみせています。

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(作成:My Big Apple NY)

雇用を牽引するセクターで賃金が伸び悩むなど、足元の労働市場は代表的な雇用指標が表すほど過熱感を示していません。賃上げを含めたインフレは、いつ芽吹くのでしょうか。米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値の1年先インフレ見通しの上振れがその兆しのなのか、見極めたいところです。

(カバー写真:John St John/Flickr)

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