Job Openings, Hires, Separations All Decline In November.
米労働省が発表した米11月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は587.9 万人と、市場予想の602.5万人に届かなかった。前月の592.5万人(599.6万人から下方修正)を0.8%下回る。なおハリケーン“ハービー”、“イルマ”等の直撃を経て、10月は617.7万人(修正値)と過去3番目の高水準を示した。
新規採用人数は前月比1.9%減の548.8万人と、過去4ヵ月間で3回目の減少に。米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)ほど、力強さは示せず。前月は559.2万人と、2001年3月以来で最大を示していた。リセッションが開始した2007年12月時点の500万人という大台は26ヵ月連続で超えた。
離職者数は前月比0.9%減の520.2万人と、こちらも過去4ヵ月間で3回目の減少となった。7ヵ月ぶりの低水準となる。定年や自己都合による退職者は0.4%減の317.4万人、解雇者数も0.4%減の168.6万人と5ヵ月連続で減少した。
求人数と新規採用者数が共に減少、両者の乖離は続く。
求人率は3.8%と、前月の3.9%から低下した。民間が前月の4.2%から4.1%へ低下したためで、政府は10月に続き2.3%だった。
就業者に対する新規採用率は3.7%と、2016年2月以来の高水準だった前月の3.8%を下回った。民間が4.1%と前月の4.2%から低下している。逆に政府は前月まで3ヵ月連続で1.5%を経て、1.7%へ上昇した。
自発的および引退、解雇などを含めた離職率は10月まで2ヵ月連続で3.6%を経て、3.5%へ低下した。民間が前月に続き3.9%だったが、政府は前月の1.5%から1.6%へ上昇した。自発的離職率は9~10月に続き2.2%。解雇率は前月の1.2%から1.1%へ低下し、2000年12月に統計が開始してからの最低に並んだ。
解雇者数が寄与し解雇者数が減少、自発的離職者数は横ばいながら労働市場のタイト化を表す。
――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中、前月に続き6項目でした。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字です。
1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 3.8%
2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.1%
3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.2%
4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%
5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 20.4万人増
6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 4.1%
7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 8.1%
8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 22.9%
9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.7%
JOLTSでは求人数と採用数の乖離が続きスキルギャップの状況を維持していました。引き続き、11月ベージュブックで明記されたような賃上げ圧力がにじみ出ていません。むしろ、過去と比較して有効求人倍率と平均時給(ここでは、生産労働者・非管理職)のゆるやかな比例関係の綻びをあらためて確認しています。
米12月雇用統計で明らかになった通り、雇用を牽引するセクターの一つが娯楽・宿泊で、特に食品サービスといった低賃金の職なだけに、せっかく製造業が伸びたところで数字に表面化しづらい状況も否めません。今後は、原油をはじめ商品先物が値上がりを加速し利鞘縮小が懸念される過程で賃上げに波及するか、注目です。また、米12月雇用統計・NFPが鈍化したように税制改革実現を経て雇用増が2017年のペースを維持できるのかも、市場の視線を集めることでしょう。
(カバー写真:cta web/Flickr)
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